第48話【僕、普通に捕まる、言いがかりをつけられる】
本日、のっけからピンチな僕だった。
今僕の目の前には、とてもイケメンな人達がいる。
地下歩行空間の、オープンテラスなカフェもセイコーマートも併設されてる、そんなボックス席の中、まるでお見合いてるみたいに1対3で座っている。
特に中心にいて僕を睨みつけている人は、通りすがる妙齢のお嬢さん達が熱い視線を送っているのがわかるよ、背もでっかいし、スタイルもいいし、二枚目枠のタレントクラス並みに見てくれのいい人だよ。俳優です、とかモデルですとかって言われて、ああ、って納得してしまえる見てくれだ。中身はガッカリだけどね。
本来なら、数いる彼女と一緒にホワイトイルミネーションとか、定番の小樽水族館とか、晴れ渡る摩周湖でも眺めていればいいのに、こんなところでこんなことをしている彼にはどうしても譲れない使命があるようで、なかなかどうして僕を解き放ってリア充な道に突き進んでくれない。
そう、僕の目の前には、あの時、初ダンジョンでウキウキだった僕の弾む気持ちに冷や水をかけて邪魔してくれた後に、中学2年生女子に怒られて&角田さんにサイクルヒット並みに打たれて、すごすごと帰っていった、あのイケメン長身乱暴者の彼がいる。
しかも、お供を2人連れてきているんだよ。しかも両方とも結構なイケメン。
イケメンのお友達はイケメンですか? って感じでなんか腹立つ。
もううんざりだよ、って思ってはいるけど、声には出さないよ、態度に出ちゃうけど。
無言な左右の人に比べて、さっきからイケメンな長身の人は1人で喋り続けている。
本当に、耳にタコどころかクラーケンでも出来そうな勢いだよ。
あ、北海道で漁獲量が全国一の『ミズタコ』って実質クラーケンだよね、大きさとか。そうか、じゃあ耳にミズダコだよ、でもいいか。なんか思い出したら『たこまんま』また食べたくなっちゃったよ。
北海道の寒く、波荒れ狂う厳しい漁業に想いを馳せている僕に、
「いいか、これは彼女の為なんだ!」
僕につかみかかる勢いで彼は身を乗り出して言った。もちろんギロリと見つめるその眼光も忘れない。
そのまま勢いよく立ち上がろうとするイケメン長身乱暴者を左にいるイケメンさんが制する。
「先輩、人前ですよ」
と小声で言った。すると、奴は「わかってる!」と怒鳴りつけて座る。
相当険しい表情だ。
「お前みたいなダンジョンウォーカーだったか?、ふざけた奴らとかさ、ガキとかさ、ともかく迷宮に潜って日がな一日遊んでいる人たちのような人間じゃあないんだよ彼女は!」
今日は現地集合って話で、いつも現地で合流の角田さんはともかく、春夏さんも用が在るとかで、4丁目ゲートの前で待ち合わせた所を彼らに拉致されてしまった僕だったりする。
地下街に連れ込まれて、いかにもっていう感じのオシャレなカフェのテーブルのボックス席につかされて、ほぼ説教されている状態、本当に上からガンガン物言ってくる。
「な、わかるだろ」
と、時折人を説き伏せるよような言葉を混ぜつつ、何やら説得させられている僕だったりする。
みんな結構ワイワイ話しているので、そんなに目立たないけど、なんかちょっと恥ずかしかったりする。
こいつら、自分たちの飲み物は買っているのに、僕には何も無しだ。もっとも、奢ってもらったところで口なんてつけないけどさ、それでも何も無しっていうのもなんか腹立つ。
まあ、こんなんでも、春夏さんの関係者だし、一応は話くらいは聞いている僕だけどさ、こっちだって飲み物の1つは欲しいさ、しょうがないから、自分で飲み物でもと席を立とうとすると、「どこ行くんだよ」とか「まだ話は終わってないぞ」とか「本当にダンジョンウォーカーってのは常識ない人多いよな、変わったやつばっかだ」って言われる。
まあ、確かに変わった人は多いけど、僕は違うから、って言いたけど、言わない。っだって、こっちの話なんてちっとも聞かないだろうからさ。