第265話【見て見て、触ってよ真壁!】
これが夢じゃないなら、そして、今日、戦っていた現実の後なら、葉山、何してるんだろ?
あ、昨晩とは違うなあ、だってチラッと、なるべく見ないようにしてるんだけどなんか、葉山、白いんだよ、照明も点けてない闇の中でさ、葉山の体がジワっと白く光ってるんだよ。
この子、服着ている雰囲気がないんだ。だから、とっても見た目に全身が肌色なんだ。白いんだ。
この状況において、葉山は綺麗だなあ、とか思ってる僕もいる。そこではないけどね、今考えるべき事は。
しかも顔に近いところでは大きなと言うか豊かな丘と言うか山と言うか、ユッサユッサしてるんだ。
その体を見せつけるように葉山は言う。
「真壁、ちゃんと見てよ、ほら」
いや、ほらって言われましても。
「体のどこにも傷が、縫合した後がないの、ねえ、見て、本当に綺麗だから私の体」
ああ、そうか、それ見せる為に服脱いじゃったんだ。
そうだよね、女の子ならなおさらだよね、その喜びは。
「うん、わかった、本当だね、綺麗だね、もう良いよ、服を着ようよ」
気持ちはわかるんだけど、今までの葉山の生活というか、以前の体の事を考えるなら、その気持ちというか喜びの前に、僕が男であるとか、そんな常識な、割とデリケートでバリゲートな部分を簡単に飛び越えてしまっているのもわかるけど、そんな姿を見た僕が、その葉山の気持ちを理解した上で正気でいられる筈がない。
「真壁、見てないじゃん、ちゃんと見て!」
「見れる訳ないじゃん! 早く服着ろよ」
「なんでよ!」
「僕だって男だよ!」
しっかりと言わないと、僕たちは性を違えた友人なんだって意識させないとって、そう思ってこんなチープな一言が出た。本当に忘れてんじゃないかなって、思って。
「だから見てって言ってるんだけど」
この子、確信犯だった。
僕のこの心境というかこの状況をわかってこの行動に出ていた。
「一体、何がしたいんだよ!」
すると葉山は至極当たり前みたいに言う。
「お礼だよ」
とてもいい笑顔でおっしゃる。
考えてみる。
自分のこれまでの行いと、そして現状況を鑑みてみる。
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だめだ、一瞬、僕の思考が錯綜してどこにも行き届かなくて、寸断した。
「ごめん、わからない」
「だからお礼だよ」
多分だけど、葉山は僕が助けたって思ってるのかな?
「違うよ、僕じゃないよ、ギルドのみんなとか、雪華さんとかカズちゃんとかだよ、他にヒーラーな人もいっぱいいたけど」
すると、葉山の奴はなんかちょっと怒って、
「それはそうだけどさ、そうじゃないでしょ?」
「僕は何もしてないけど」
本当に、僕は葉山の処置されている場所で倒れて居ただけだ。
すると、葉山は首を横に振る。嬉しそうに否定する。
「違うよ」
そう言ってから、さらに顔を近づけていうんだよ。
「真壁が私を『助けたい』って思い続けたから、私はいるんだよ」
そして、その顔は僕の見た事のない、別の意味で見た事のない顔で、まるで何かに酔ってるみたいに、そんな表情で僕にまるで囁くように、
「すごかった、真壁の私を想う気持ち、どんどん流れ込んできて、もう私、このまま死ねるんだなあ、こんなに幸せに最後を迎えられるんだなあ、って思ったら、ここが天国かなんかじゃないかしらって思ったくらいだよ」
葉山、顔近い近い。
妙に熱い息もかかってるから。
なんか息も荒いみたいだし、でも、明らかに体調悪いって感じでもないんだよなあ、顔赤くて、目も潤んでるけど。
本当にうれしそうにあの時の事を語るんだよ。