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第260話【優しさの守り手、母さんの手】

 血だらけの手。


 真っ赤な手。


 次の瞬間、空気を引き裂く様に斬撃が葉山を襲った。


 僕は、その時、普通に剣で弾かなかった。響いてしまうから、歌を伝えてしまうから。


 だから、剣を持っていない方の手でその斬撃の前に無防備に差し出して、僕はつぶやく、


 「これは、僕んだ」


 この、僕の生み出す攻撃は、包括的な範囲攻撃で空間攻撃。ほぼ無差別で攻撃の起点である僕以外を全て惨殺、圧殺する。


 あ、そうか。


 だから僕は、自分の腕を一本分を始まりに空間が開かれる。


 剣でそれを行う事は出来ないから。


 剣は攻撃、でも救い挙げるのは人の手なんだ。だから、ここに歌は響かない。歌はいらない。


 この攻撃は、剣で止めてはいけない。


 それだけはわかる。


 だからまるで、自分が生み出すこのデタラメな空間そのものを殲滅する攻撃に、まるで許しを請う様に、空いている腕を差し出すかのよう。


 一瞬にして刻まれる僕の手。


 鮮血が舞う。


 僕の腕は浅く刻まれて、そして激痛が走る。


 そして剣は謳わない僕の手を斬幾多の、幾千の幾万の幾億の撃で包むように認識する。


 これもまた自分なのだと。


 葉山を傷つけたくない僕の意識。


 そう、思うのと同時に、僕はここでようやく気がついた。


 勘違いというか、その誤解がとけた。


 母さんのあの手だよ。


 あれは、僕が、何かをやらかして、母さんを傷つけた訳じゃなかったんだ。


 多分、今みたいな状況に陥った母さんが、僕を守ったんだ。


 その為の傷だったんだ。


 だからあんなに自慢げに『勲章』とか言っていたんだなあ。


 凄いなあ。母さん。


 こうなる事を全部わかってたんだ。


 流石だなあって思うと同時になんか面白くないなあ、とも思った。


 葉山との戦いもグダグダになってしまったけど終わる。なんとか決着がついた。いや、決着だ。


 そうだ、早く葉山を助けなきゃ。


 そう思いながら、面白いくらい体から力が抜けてというか、消えて行くのがわかる。


 意識はあるんだよ。でもなんだろう、力が入らない。


 あ、ヤバイ、これ僕も倒れる流れだ。


 多分、僕、身体中の力を全部使い切ってるってのは分かるから、もう普通に立っている力すら残されていない気がする。


 でも、良かった、葉山は傷ついてない。一応は無事みたい。


 そう思った時に、戦いが終了したと意識した時、多分、砕かれた剣達の思い、みたいな物が僕に流れ込んで来た。


 まあ、僕は剣じゃないからさ、剣視点の思考ってよくわからないけど、でもこれは分かる。 


 なんだろう、多分これは『喜び』なんだな。


 そして、誰かの笑い声。


 それは、微笑むじゃあなくて、本当に大笑い。


 これだけ笑って、互いに放つのは絶対に殺すって言う気持ちは本物で、まるで必殺の一撃を出し合いながらじゃれて遊んでいるみたいな、あ、でも攻撃の規模を考えると迷惑な2人かもって思う、変な戦いの記憶。


 1人は、もうこれ絶対に真希さんだよ、この笑い方。そしてもう1人が、母さんなんだけど、母さんってのは分かるんだけど、母さんってこんな笑い方しないよって思うほど笑ってる声が僕の耳を通り過ぎて、すぐに止んだ。


 そんなのを見せてもらいながら、その母さんたちのかつての動きを見て、僕なてんまだまだだよなあ、って変な実感を持ってしまったよ。


 ほんとうに、こうして葉山だけはなんとか守ったけど、やっぱり母さんにかなわないって、安心したけど、別に戦っても無い母さんなんだけど、僕が戦ってたのは葉山なはずなんだけど、完全降参した気分の僕だったよ。


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