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第257話【ありがとうバイバイ】

 ただ、なんとなくだけど、そのそれぞれの、大量の中空に浮く剣の切っ先がバラバラでさ、まるで調整できてない、っていうか、ただ浮いてるだけ? まるで、コントロールを失ったみたいな葉山の造る剣世界なんだよ。


 その中を、その空間を見て僕は理解するんだ。


 ああ、そうか、もう加減とかできない。リミッターが外れたんだ。


 たぶん、これが葉山の最大の力。


 きっと僕への気持ちとか配慮とか、自分自身への被害なんて事も調整も失ってしまった、まるで安全装置が外れてしまった種類の故障を感じさせる、そんな攻撃だ。


 きっと僕を完全に倒そうとしてのことでは無い。


 葉山は壊れたんだ。


 多分、調整する様な事がもう出来ない。


 だからそれは最大限に作用して、葉山のすべてをさらけ出す用に発現してしまったのだ。


 そして何より、最後の攻撃。


 もう、何も残さないから、こんな形になるのだろうか?


 自身の命が吹き消される直前直下の尊い一瞬の輝き。


 この攻撃に彼女の意識が乗っていない。


 彼女の命が消えかける、それに反していくつもの命をつぎ込まれた結果がこの姿で、この攻撃なんだ。


 殺意の無い、必殺の一撃が最後の最後に用意された。


 左手で支える葉山は何度も倒れそうになる。それは意識を失うと言うより、自然に睡眠に導入されている人みたいに、こんな状況で、うつらうつらと、どこか幸せに見えてしまう。


 葉山は本当にこれで終わってしまう。


 多分、もう次は無い。


 僕は本当に葉山とお別れなのだと、この部屋の床を離れて、この夥しく無規則に宙を舞う剣を見てそう思った。 


 もちろん、この攻撃を受けてしまえば、ここにいいる僕も、きっと葉山すら無事じゃあ済まないと思う。


 斬るというより剣の、刃の圧殺だ。


 それに、この範囲だ。どこにも逃げ場もない。


 この最大級な災害の様な剣の狂飈を前に、僕の気持ちは落ち着いていた。


 僕がすべき事、やりたいことは変わらないから。 


 僕は今にも命の灯が消え行く葉山を助けたい。


 自分自身の命だってどうなるかわからないのに、おかしな話かもしれないけど、逃場なんてないけど、ここで絶対に逃げないって言う覚悟だけはある。


 もう、僕の中の僕はいない。


 だからさっきから頑張ってはいるんだけど、あの反則級なスキルも出ない。


 結局、奴は、『使える』ってのを試しに出てきただけで、『使う』方向には興味がなかったみたいで、いまの状態で、つまり僕1人になった状況での検証はされてなくて、つまり、僕の力ではあのスキル出ないんだ。


 なんだろう、初めて見た家電を説明書も無しで、操作の仕方もわからない状態で置いていかれた気分だ。あるにあるけど使えないって状態。だから無いのも一緒ってことだね。


 どうしよう。


 現時点で、ノーコン状態になってしまった葉山のスキルに対応できる物がないなあ。


 いや、あるよ。


 あるけど、そっちは考えない。


 多分、葉山は最初からそのつもりで、自分でもどうにもできない、すでに操作なんて不可能なのに、この攻撃を出している。もちろん、これは僕を追い込むためというか選択肢を奪う為の行為は未だ続けられているんだ。


 葉山本人んも自覚できてない攻撃自体がこの規模になるかどうかまでは考えていなかったとは思うけど、これを止める為には葉山を終わらすしかないんだ、って思わせる為のは最初から今も同じだ。


 だから、力もなく葉山は言う。


 「真壁、もういいよ」


 って不意に僕の胸に頭を預けて言うんだ。


 そして、


 「ありがとう真壁、バイバイ」


 何言ってんだよ?


 ここまでグッタリしてるのに、その口調はつい最近まで、それが本当だって思っていた委員長の葉山の口調だよ。でも最後のバイバイって言葉に力がない。


 だから、気が付くんだ、こんな言葉、葉山だって言いたくないんだよ。僕も聞きたくない、嫌だ!


 この距離、この状態で葉山を終わらすのは簡単だ。


 しかも、ビジュアル的に、葉山を刺し殺すとか斬り殺すとかでも無く、残酷な形にもならないんだ。


 葉山はきっと僕を待ってる。


 嫌だ!


 そんなの絶対に嫌だからな!


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