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第255話【僕の中の僕の最後の願い】

 もう真希さん、これ以上ないくらい大笑いして、今まで聞いたこともないみたいな声出して笑って「凄い、アッキー凄いけど、馬鹿だ、あいつ凄いバカだ」って膝を突いて笑い過ぎでおかしな声出し始めてしまって。雪華さんに背中を摩られて「笑いすぎですよ」って言われていた。


 その雪華さんも笑ってるよね、なんか此花さんんも同じ格好してるし。確かに1人で言い合って、1人で殴って、そりゃあ笑えるよね、いいよ、笑えよ、笑えばいいさ。


 あ、でも此花さんのお姉さん、こっちガン見してる。凄い顔してる。


 まあ、ギャラリーの方はいいや、例の乖離した僕ってのも…、


 《痛えなあ!》


 まだ居たよ。


 「お前がひどい事しようとするからだろ、いいよ、もう、ここからはお兄ちゃんに任せろよ」


 あの強力なスキルがあるし、なんとかなる。


 《なあ》 


 「なんだよ?」


 「後5秒くらいはあるから、ちょっとその時間をくれないか?」


 なんか殊勝な感じて言って来る、今は中の僕。


 「なんだよ、さっきの変な魔法ならもうダメだぞ」


 《違う、これは僕、お前じゃなくて僕の個人的な希望だ》


 「何がしたいんだよ?」


 《感覚があるうちに、触れたいんだ》


 なんか、とても必死だったからさ、今までの言い方と違って懇願するように言うから、もう一回僕は僕自身を信じる事にしたんだ。


 「いいよ」


 《ありがとう》


 瞬時に僕は入れ替わって、そして彼女の前に立った。


 時間が無いってのは本当らしくて、多分、最大速度で僕の体を操る僕は一直線にその場所に向かった。


 突然彼女の正面に立つ僕、そんな僕に驚きもしないで見つめる彼女に、僕自身では無い僕の胸が熱くなって行くのがわかる。


 彼女、春夏さんは慈しむように微笑んでいた。


 今は表の僕。こいつ、春夏さんが大好きなんだな、いや僕も好きだけどさ、なんかこう種類が違うって言うか、彼女に向けられる並々ならない熱量を感じるんだ。


  僕は、僕の体を操る今は外の僕は、彼女に抱きつきこう言った。


 「春夏姉ちゃん、もうちょっとだからね」


 それはまるで春香さんに対して、でももっと違う奥深くにいる誰かに話しかけている様に僕は言うんだ、だから僕は春夏さんの顔なんて見ていない、ただ、彼女の体を、その中にある物を求める様に言うんだ。


 春夏さんはそんな僕をそっと抱きしめて、


 「秋、私の所為で沢山我慢させてごめんね。後でちゃんと返すからね」


 あ、僕、消えた。


 残されたのは、ただ春夏さんを抱きしめる僕。


 せめて、ちゃんと離れてから消えて欲しかった。


 すっごい気まずい。


 でも春夏さんは言った。


 「頑張ったね、秋くん、また強くなってる」


 その向けて来る笑顔を変えないで僕に告げる。


 咳払いを一つ。


 「うん、まあ、頑張るよ」


 会場というか、この戦場自体が変な空気になってるけど、もう行く。強引に行く。


 春夏さんを離れて、前を向こうとする僕に、


 今気がついたんだけど、春夏さんの隣に真希さんがいて。


 なんか両手広げて、


 「ん、ほれ、こっちも、おいでアッキー」


 って言ってる。


 いや、行かなし、ハグしないし、意味わかんないし。


 さて、再び始めようかな、葉山も待っていてくれたみたいだし、と思って、僕はこの部屋の中心にいる葉山を見た。


 その瞬間、剣の敷き詰めたその床にドシャリと倒れる葉山が目に映った。


 言葉も無く、思考も介さず、僕は葉山に向かって全力で駆け寄っていた。

 

 


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