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第252話【僕の中の僕は僕の事を僕よりもっと僕を知る】

 いつの間にか僕の周りには、僕から発生しているであろう白いベール、それは幾重にも重なって、まるで僕が背に畳んでいた翼を開いて羽ばたいているみたいな感じだ。


 なんだこれ?


 「一応は防御スキルの一種かな、正確にはスキルじゃないけどな、神の奇跡だよ、超攻撃型自動カウンター、防御スキルのたどり着く終局の姿の一つだよ、物理も魔法も関係ないよ、攻撃者に対して絶望を与える奇跡さ」


 僕に向かって説明してくれる。


 僕にこんな戦闘的なスキルがあるってのにとても驚いていると、今度はいつの間にか腕とか、顔とか、切ってるしまっていた大したこともない傷がドンドン治って行くんだよ。


 傷の表面からではなくて、内側から、シュワシュワと音を立てて治って行く。


 「これは知ってるだろ? 『メディック』だよ、あのスキルの対象は本来本人限定なんだよ、人を直すために使うには効率が悪い」


 現実の認識に今までの僕の常識がついていけない。


 《このメディックとそのなんとかの翼が僕のスキルって事なのか?》


 あの王様スキルなんて訳のわからない今ひとつ使えないなあ、って思っていたスキル以外にこんなに見た目にも有用なスキルが僕の中にあったなんて。


 驚いている僕に、今は僕になっている僕が言う。


 「何言ってるんだよ、今のはお試しだよ、今、僕が発現できるスキルや奇跡はたった1000〜10000くらいの物だ、今の時点ではこれ以上やると流石に肉体が持たない」


 《僕ってそんなに凄いスキル持ちだったって事なのか?》


 すると、今は僕の表層にいる僕は、中にいる僕に向かって言う。

 「何言ってるんだよ、僕はあの時、『彼女』から『全部』の『半分』を分けてるだろ? そして今は全能の力を余すことなく僕に注ぎこまれてるぞ」


 その瞬間だった。何かが大量に流れて来る、ものすごい量の情報。なんだこれ?


 「おっと、危ない危ない、思い出すなよ、いいもう言わないから僕も聞くな」


 と言われて、その状態は収まった。


 「今はまだ記憶を融合するわけにはいかない、まだダメだ」


 いったい何が起こってるのか、わかるけどわからない。でもこれだけは知ってる。


 今は思い出してはダメだ。


 振り切る僕に葉山が尋ねる。


 「真壁、今の何?」


 葉山、すごい驚いてる。


 そりゃあ驚いて聞いて来るよね、葉山。信じてはもらえないかもだけど、僕も君と同じ気持ちだよ。


 「翼だよ、葉山さん」


 と、この僕も葉山には説明するんだな。


 「ちなみに上手にやれば本当に飛べる」


 と一回、自分を包んでいた羽を解いて、大きく羽ばたく。


 あ、ほんとだ、足が剣の床から離れて、体が浮いた。


 「な」


 《ほんとだ》


 いかん、のどかな会話をしてしまった。


 そんな僕を葉山は怪訝な顔をする。


 「あなた、真壁だよね?」


 聞いて来る葉山だ。


 その言葉が終わらない間に瞬時に距離を消して僕に迫る。


 下から物凄い鋭い突きが来る。


 「そうだよ、僕だ」


 その攻撃を見ながら外にいる僕は言った。


 「嘘よ」


 容赦の無い、普通に手加減を感じさせない一撃が伸びて来る。絶対に人を殺せる一撃だ。 


 マテリアルソードを持つ手が伸びきった時、僕はそこにはいなかった。


 僕の体はそのまま前に出ただけ。


 剣も葉山の体を無視して前に出てしまう。まるで霞のように、幻のように、剣にも葉山にも触れる事なく、まるで葉山がいないが如くに僕は葉山の背後に立った。


 次の瞬間、


 「きゃあ!」


 と言って葉山は尻餅をついてしまう。


 「僕と彼女の速度差を考えて、今のタイミングなら数百撃はいれれたけど、やめておいたよ、ちょっと肩を押しただけだよ、それの方がいいんだろ?」


 《今の何?》


 「最終的に回避系スキルの辿り着く先、なんて言ったかな、確か名前あった筈だけど忘れた」

 振り向いた頃には葉山は立ち上がっていた。


 「あなた、真壁だよね?」


 もう一度葉山は尋ねる。


 確かにそれは疑いようもない事実で、間違いもない、でも、何かが変わったって、葉山はそう捉えている見たい。


 だから、葉山は僕の方を、その様子をガッツリ見ている。


 「何か違うけど、でもそうみたい、ちょっと幼くなった?」


 凄いな葉山、僕の事をなんとなくだけど理解しているみたいだ。


 「そうかもね」


 表の僕が言う。そして、


 「ほら、葉山さんも、もう時間とかないでしょ、遠慮しないでかかっておいで」


 と僕が言うんだ。あのアルティメットな葉山に向かって言った。


 「助かるよ」


 と葉山。


 「さあ、幕を引いてあげるよ、それこそが彼女の望みだ」


 そうだった。


 でもさ、そんな現実を再認識してしまうと、なんかションボリしてしまうんだよなあ。


 いやいや、ダメだ、便利な僕も出てきたことだし、絶対に助けるから、葉山を救うから!


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