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第241話【決戦前の舌戦 母と娘】

 僕らが今向かうゲートの前を塞ぐように、雪華さんのお母さんを中心に十数人の規模で並ばれている。


 そして、僕らの顔を見るなり、


 「もう、やめなさい」


 と拡声器を持って叫んでいた。


 今日は平日だから、北海道一のオフィス街でもあるここには通勤してる一般な人もいる訳で、目立つ目立つ。


 葉山はそんな大柴の人達から隠れるように僕の背に入ってしまう。やっぱり怖いのかな、彼女を閉じ込めていた、そしてこれかも閉じ込めようとしている人達だから、僕の袖を握り締める葉山の手が強張っているのがわかる。


 「聞いてちょうだい、あなたを思えばそこなのよ、親として…!」


 って雪華さんのお母さんが、言いかけた時には、


 「いい加減にしてください!」


 とこれもまた拡張きで叫ぶ声。ああ、こっちの声も聞き覚えある。


 「雪華!」


 と雪華さんのお母さん。7丁目ゲートから、ダンジョン側から出て来た雪華さんを見て、喜んで、


 「そうね、雪華も一緒に彼らを説得して」


 と言うことを言う。


 でも雪華さん、


 「あ、おはようございます、秋先輩、葉山先輩」


 と拡張器越しで挨拶される。ぺこりとお辞儀する葉山は流石に委員長だよな、って思って僕もそれに習う。


 そして、雪華さんは言う。


 「これは既にギルド案件です、北海道ダンジョンに関係のない方はお引き取りください」 


 と言い切ってしまう。


 「え、でも、雪華」


 「この件については、既に全権私達ギルドに委任されています、今私は、ダンジョン運営に関して、この件の責任者です、本来なら一商社の介入は条約と法を犯す行為になりますよ、お母さん」 


 「何を言ってるの、お母さんは母親として…」


 すると雪華さんは乾いた様に笑って、


 「母親?」


 「そうよ、私は、あなたのお母さんだから、だから…」


 「私、育ててもらった覚えないけど」


 すごい、雪華さんのお母さんぐうの音も出ない。


 僕にとって、雪華さんって、とても賢くて優しい女の子で、しっかりしていて、割とそっち側から接触してくれる高嶺の花って感じな印象だったけど、最近、なんか違うなあとは思っていた。なんだろう、その華奢な容姿は見た目にメタルな強靭性を持っているみたいな。絶対的な存在感。今も僕の前では2人の河岸さんが言い争っているんだけど、結果も出ない状態なんだけど、まるで娘の方の雪華さんが負けてしまう姿が想像できない。


 「お母さんに向かって、そう言う言い方は酷わよ」


 「事実です、それにそんな事を盾に自分の仕事上の理を押し通そうなんて、研究者としても焼きが回ったのかしら?」


 すごいなあ、完全にお母さんを打ち負かしている感じ。と言うか、もうお母さん滅多斬りになってる。お母さんも色々言ってるけどあれは絶対に雪華さんのメンタルに届いていない。


 本当に、雪華さんの成長というか、最初の印象って面影くらいしか残ってない。


 よく家で、次のギルドの長とかの話を薫子さんがするんだけど、「最近の雪華なら全くメンタルで敵う気がしないぞ」って自虐的に笑ってたから、あながち次の長は雪華さんで決まりってのも噂ばかりじゃなさそう。


 真希さんもそう育ててるみたいな感じだって言ってるって話しだし。


 よく、『男子三日会わざるなら、刮目して見よ』とか言うけど、女子もだよね。いや、寧ろ女子の方がと言わざるを得ない。


 そんな感じの最近のギルド事情なんだけど、薫子さんの人気みたいな物も現在急上昇中だと言う話だ。


 なんでも人間が丸くなったとか、優しくなったとか言われているらしい。


 一部の人間に言わせると、『母性を得た薫子さん』に『母を廃棄した雪華さん』なんて言われているとかいないとか。


 まあ、この様子を見ていると、確かにと言わざるを得ない。


 「行きます、秋先輩」


 と言って、オロオロするだけになっている雪華のお母さんの横を取りすぎる。その時、雪華のお母さん、


 「昔はあんなに可愛かったのに…」


 みたいな事を言うから、


 「え? 雪華さんは今も可愛いよね」


 って思わず言ってしまうと、


 「えー、やだ、困る、秋先輩、ちょっとダメ、こんな所で! えー、ホントですか?!」


 とキャイキャイ言いはじめる。さっきまでの威厳みたいな物は綺麗に引っ込んでしまっている。


 ほら、可愛い。ね。


 って顔してると、


 「それ、天然だよね?、こう言うところもお母さん似だね、本当に真壁は」


 となんか葉山は不機嫌そうに言う。


 僕、特に雪華さんを喜ばせるような事と同時に、葉山を怒らせる事をしただろうか?


 「まったく、これじゃあ東雲さんも大変だよ」


 って言う側から、


 「おはよう、秋くん」


 と、突然、と言うかまったくの死角からの春夏さん登場。後方から音もなくって感じ。


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