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第237話【戯れ踊る竜と囁き歌う剣が凶つ部屋】

 母さんは視線を散らせながら、葉山に言う。


 「でも、静流ちゃん、この子と戦うなら、沢山の剣とかいるでしょ?」


 「はい、ですが…」


 「なら丁度いいじゃ無い、いいわよね?」


 と今度は僕に言って来る。


 いいも悪いも、


 「確か、今は鍵がかかっているのよね、ギルドでしょ? 管理してるのは?」


 と言う母さんの言葉に、


 「師匠、そう言う問題ではありません、あの場所は…」


 「数万、数億とも言われる剣が打ち捨てられている場所、かつて、北海道ダンジョン最凶と恐れられた『竜』と同じく、最凶と謳われたた剣士が戦った場所、別名『3泊4日(食事休憩、仮眠あり)戦争』とも言われる闘いを行った場所、結局、勝敗はつかなかったらしいけど」


 と説明してくれた。言いながら母さんをチラ見していたのは気になったけど、そうか、そう言う場所なんだ。


 「『剣の墓場』って言う人もいるな」


 と、薫子さん。


 「いいよ、そこは止めよう、真壁、他にも場所はあるから」


 みんながそれぞれ話してる内容を整理すると、多分、『剣が沢山ある場所』って事でいいと思う。多分、壊れているけど、葉山の、茉薙の『剣世界』の為の部屋って気もする。


 あのスキル、剣自体の切れ味とか全く度外視でいいみたいだから。


 ザックリ受け取ると、要は完全に僕にとっては不利な場所なんだね。それはわかった。


 僕の顔をとても心配そうに見ている薫子さん、面白いのは僕を倒すっていい続けている葉山さんまでそんな顔をしている。


 その僕に、母さんは言う。


 「いいわよね?」


 だから僕は言う。


 「うん」


 「真壁秋!」


 と、もう薫子さんは叫んでる。


 「本当にいいの?」


 「うん、葉山がそれでいいなら」


 「凄い不利だよ、ううん、不利なんて問題じゃない、戦力的にうなら、『蟻』が一匹で大きな『蜂』の巣に挑み掛かるみたいなものだよ」


 ああ、わかりやすいなあ、その比喩。なんか普通の葉山が戻ってきたみたいで安心する。 


 「葉山がそれでいいなら、そこでいいよ」


 と僕は言う。


 すると、今度は薫子さんが、


 「なあ、真壁秋、それは自信なのか? そんな環境でも勝てると言う」


 と本気で呆れるような顔を言い方をしてから、今度は首を横に振って、


 「いいや、すまん、そうだ、真壁秋はそんな人間だ、すまない、そうだった」


 と言った。


 薫子さんからは正しく理解されているみたいだけど、言方とそのヤレヤレといった表情がなんか腑に落ちない。


 「一方的になりますよ、処刑に近い形なるかも」


 と、葉山は言うんだ。でもかあさんは、


 「あはは、何? 静流ちゃんは、うちの子の心配してくれてるのかしら? 優しい子ね」


 本当に普通に言う。普通に彼女の言う事とやろうとしていることの矛盾を指摘した上に良い子扱いだ。


 「だって!」


 もう、噛み付くみたいに何かを言いかけて、そして黙る。そうだね、母さんの指摘通り矛盾してるもの。

これからやろうとしている事と、今の葉山の気持ちって。


 僕を倒す場所の算段をしているんだ。だから、ここで反対するのは違うよね。


 「でも、こんなのフェアじゃない」


 その言葉に、葉山の言葉に答える母さんは、体の芯まで届くほどの、でも小さな声で言うんだ。


 「最初から、勝負になんてならないわ」


 と言う。


 確かにそうだ。最初から勝負なんて形にはならない、ならないのだけれどもその母さんの言い方が、まるで、『あなた程度がこの子に勝てる訳ないでしょ』みたいな言い方だったんだ。気のせいだとは思うけど。


 そして、


 「だって、静流ちゃんはこの子を倒したいんでしょ?」


 頷く葉山。やっぱり気のせいだった。そうだ勝負って形にはならないんだ。


 そして、母さんは僕の方を見て言う。


 「そして、あなたはこの子を救いたいんだものね」


 ニッコリと笑って言うんだよ。


 僕も、


 「うん」


 としか言えない。もう何の解決の糸口を見つけられないまま、どんどん事態に流されていて悩んでいる状態なんだけど、やりたい事は母さんの言う通りなんだよ。


 僕は葉山をなんとかして助けたいんだ。


 それだけははっきりわかった気がした。


 心の形が定まらない僕は、結局、この母さんに心の中に手を突っ込まれてキチンと整形されて、形を定られてしまう。そしてそれは、葉山も同じだった。


 なんだろうね、最初に見た顔でも、いつもの葉山の顔でもないんだよ。


 長い間背負っていたとても重いものを下ろしたってそんなスッキリした顔をしていた。


 こんな顔した葉山を僕は初めて見たよ。


 そしてね、僕はこれが本当の、何も無い葉山の顔っだって思ったんだ。


 最後にかあさんは言った。


 「じゃあ、2人とも頑張りなさいな」


 なんだよ、結局僕は、母さんに背を押される格好になる。


 カッコ悪いけど、でも、なんだろう。


 あの嫌な気持ちが無くなっていて、スッキリとしたのは僕も葉山と同じだった。


 決行は明日。


 ひとまず、今日は早く寝よう。   


 

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