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第236話【弱体化されてた僕】

 母さん、クスクス笑っていた。


 相川ずの葉山なんだけど、少し方の力が抜けたみたいになってて、それでも、ちょっと緊張も解れて和やか雰囲気になって、ともかく沈んだ空気はどこかへ飛んで行ってしまう。


 そして母さんは言った。


 「嫌だわ、みんな勘違いしてるのね」


 と言った。


 そして、


 「私が、この子に、私の技術を教える様な真似をしているのは、この子を強くする為なんかじゃないの」


 もう、本当に、とても軽い口調で、まさに『嫌だわ奥様』的な言い方で軽く言うんだ。


 一口、茶を啜って、母さんは言った。


 「弱くする為なのよ」


 と言って笑った。


 この言葉に瞬時に反応したのは薫子さんだった。


 「師匠、それは一体、どう言う意味ですか?」


 うん、出遅れたけど、本当にそう。


 「そのままよよ、ちょっとこの子、事情があってね、そのままダンジョンに放つ訳にはいかなかったの、みんなに迷惑かけちゃうからね」


 「聞いてないよ」


 って言ってしまう。すると母さんは、


 「聞かれなかったもの」


 いや、まあそうだけど。と言うか知らない事は聞けないじゃん。


 そして、母さんは言うんだ。


 「北藤さんの息子さんも無理だった、蒼ちゃんも失敗しちゃったわね、前住くんも仲良しで放置でしょ?、春夏ちゃんはあんなんだし、でも、あなたならどうかしらね? 静流ちゃん」


 そう言う母さんの言葉に、同じ声で、同じ温度で、同じ和音なんだけど、まるで僕らを包みこんで支配してくるような、僕、息子なんだけど、本気でゾッとしてしまう。


 そして、母さん、まるで誰かに僕のダンジョンでの活動を報告されているかの様に詳しくてビックリもした。


 今度は静流さんが訪ねた。


 「どう? とはどう言う意味なんですか?」


 すると、母さんは少し考え込んで、


 「そうね、春夏ちゃんの為にもって考えてしまうのよ」


 どうしてここで春夏さんが出てくるんだろ? 


 僕のそんな疑問を他所に、母さんはまるで、昔の記憶を辿るように考え始めていた。


 「うん、そうね、あなたは、この子の中に未だ隠れている『本当』を見つけ出せるかしら?」


 と言った。


 かあさんは何を言っているんだろう? なんだ? 『本当』って?


 「ねえ、母さん、」


 僕は堪らずかあさんに尋ねようとするのだけれども、その前に、あの葉山が、なんか凄い興奮している様に、椅子から立ち上がって母さんに食ってかかる様に、


 「できますよ、します、でないと意味がないので」


 って言うんだ。


 「本当に?」


 「はい、します」


 「大丈夫かしら?」


 「私達だって、まだ全部を真壁に見せた訳じゃないです、まだまだです」


 「そうなの?」


 もう売り言葉に買い言葉で、大特価セールみたいになってる。側から見てるとまるで母さんが葉山を挑発しているみたい。


 あのな、葉山、僕自身、僕の『本当』なんて知らないからね、母さんの挑発みたいな言葉に乗っかって、葉山自身、なんか未だ奥の手があるの喋ってしまってるし、すごいよな、母さん、これ会話とか性格とか駆け引きとかじゃなくて、普通に天然なんだ、かあさんはそう言う事をできる人では無い。だから葉山の言うことも全面で信じて、そして、その、母さんは至って真面目に普通に自分の中にある事実を言っているだけなんだ。


 ん? と言うことは、僕に、僕の中にまだ何かあるって事?


 母さんを知る僕ですら母さんの言葉に捉えられて、そんな事を考えていると、話の内容はどんどん進んで行ってしまう、ついていかないと。


 「じゃあ、静流ちゃんはもっと強いってことね」


 っと聞かれて、


 「はい、条件にもよりますが、もう加減とかしませんから、本気で行きますから」


 「だったら、そうねえ、浅階層じゃあダメねえ、なるべく深い所でやらないと」


 って考え込んでた。


 「まだ中階層よね」


 と僕に聞いて来るから、「うん」って答えると、母さんはしばらくは悩んで、「この子達だっておもいきりやりたいだろうし…」とか「でもそれじゃあ地表に影響出ちゃうわねえ」とかブツブツ言ってる。


 「なあ、真壁秋、師匠は一体何を言ってるんだ?」


 と1人悩んでいる母さんを横に置いて、薫子さんが聞いて来るから、


 「知らないよ」


 としか言いようがない。


 みんな母さんにおいてけぼりになっているんだけど、意外な事に妹はいつに無くて真剣な顔をして聞いている。いつもなら自分に興味の無い話ならとっとその場からいなくなっってしまうのに、おかしいくらい神妙な顔して聞いて、考え込んでる。どうした、妹?


 僕の心配というか気持ちが妹の方に向いていると、


 「ああ、そうだ、あの場所ならいいわ」


 とか、母さんがいい出す。どうやら、僕と葉山の戦う場所を検討してくれていた様だ。


 「あのね、中階層扱いなんだけど、ほぼ深階層なところがあるのよ」


 と言う母さん、その横で薫子さんがギョッとした顔して、


 「まさか、師匠、あそこはダメです!」


 とか言い出す。


 「あら? どうして? 薫子ちゃん」


 「だって、その場所はダメだ真壁秋、幾ら何でもそれは不利だ」


 と薫子さん、僕に向けた顔が必死だ。不利ってどう言う意味だろ?


 「いい場所よ、天井は3フロア分くらいあるし、独立してるし広いし、上には大きな岩盤があるから、外には影響はしないし」


 すると、今度は葉山が、


 「『戯れ踊る竜と囁き歌う剣が凶つ部屋』ですか?」


 「ああ、そうなの?、昔は『決闘部屋』って呼ばれていたわよ」


 ごめん、今度は僕がおいてけぼりだ。


 誰か詳しく説明してよ。



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