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第232話【スキル部位キメラという禁忌】

 よかった、食欲もあるみたい、元気になっている証拠だ。


 「今日はみんなで鍋でも囲みましょう、今、準備するからね」


 と母さんは再びキッチンへ帰って行った。


 「では秋様、僕もこの辺で」


 と言って、また僕の影に沈んで行く桃井くんだ。


 ねえ、住んでるの? 君は僕の影の中に住んでいるのかな? 


 最近、僕は自分の影に自信が持てないでいる。


 自分の影になんの自信だよって、言われるけど、こうひょいひょいと影から現れられると、自分の影不信になってしまうのも仕方ないよ。


 今もなんの断りも無く僕の影に入って行くし、何よりそれでずっと助けられているから、こっちとしても立場上あまり強くは言えないけど、そのううちしっかりと話し合いの場を設けないと、とは思っている。


 ひとまず、母さんに言われて空いている部屋に葉山さんを案内して、僕は薫子さんと一緒に夕食の手伝いをしていた。


 かあさんは何も聞かないで、ニコニコと特に僕に何を聞く様子もなく、普通にご飯支度を進めている。薫子さんも包丁とか上手くなったなあ、この辺も順調に修業しているらしい。


 そして、特に誰も何も言わない時間が過ぎて、夕食の準備が整うと、ダイニングテーブルにみんな付いて、今気がついたけど、この人数だとお父さん帰ってきたら座る場所ないなあとか余計な心配してしまった。


 今日は『石狩鍋』だった。


 スーパーでかなり良いトキシラズが置いてあって、なら、って事で石狩鍋になった。


 うちの石狩鍋、ジャガイモと人参多めなんだよね。美味しいけど。


 それなりにワイワイと食事は進んでいるんだけど、なんか葉山さんが、。「美味しい」を連発していて、その度に、かあさんが、「普通だよ」って言って、何故か薫子さんがドヤ顔していて、妹は人参を僕の取り皿にイジェクトしまくって、かあさんに怒られていた。


 ほんと便利だなイジェクト。その後に鮭の骨とかイジェクトして抜いていて、「箸を使え」って今度は薫子さんに怒られていた。散々だな、妹。涙目でこっち見るなよ。彼女達の監視対象としては、僕も妹も対して変わらないんだ。ほら、こっちはちゃんとしているかなって、見られてる。


 妹が出来てからと言うもの、なんか僕の生活もそれなりに絞られているんだよ、二言目には「お兄ちゃんなんだからね」って言われる。


 そんな厳かに食事も終わって、蒼さんと薫子さんがお茶を入れて来てくれて、そこから葉山の話は始まった。


 その内容はまるで映画の筋書きを語るように、まるで他人事みたいな話し方だった。


 と言うか、この内容が事実だとしたら、多分、もう笑うしかないよなあ、確かに酷い話だった。


 「私ね、生まれてすぐにに死んじゃう筈だったんだ」


 難しいことは省くけど、先天性な臓器不全、つまり体に欠損があって、生きてはいけない体だったそうなんだ。


 そこに、当時、大柴商事の企業の一つ、大柴製薬の研究員であり、医師だった葉山のお父さんは、生まれてすぐの葉山に移植を繰り返した。


 ここまでは普通のでもないけど、あると言えばある話なんだけど、その移植の内容とは葉山のお父さんが行っていた研究の内容が内容で、まさに娘を実験台にするみたいな行為だったらしい。


 それは、


 「人工的に、スキルを移植、そして切り離せるかの実験、もしくは薬でスキルが抑えられるかの研究と実験をしていたの」


 北海道ダンジョンが現れてから、人に宿るように発現したスキル。


 今更説明の必要もないけど、ダンジョンの中で活躍するための特殊能力。恩恵とも言えるし、求めてない人にとっては病気みたいな言い方をする人もいる。


 みんながみんなその能力に恵まれるわけでもなく、特に有効なスキルに関しては割と希少で、多分だけど、ダンジョンに入ろうって人なら誰もが求める能力。


 そのスキルって、体の部位に宿ると言うのが、葉山のお父さんの説で、それは概ね正解らしく、でも全てに当てはまるわけではないと言う話だった。


 例えば、僕の知り合いでわかり易いのは相馬奏さん。


 彼女の場合、そのスキルはその能力の顕現である『目』に宿っていると言う話なんだ。


 つまりさ、嫌な言い方をすると、彼女の目を誰かに移植すると、彼女の持っているあの強力なスキルを手にいれることができるらしい。


 もちろん、それを使いこなせるかどうかは、その人次第で、やっぱろスキルも運動や習慣のような一面を持っていて、使えば使う程、上手に使おうと試行錯誤をしながら付き合えば付き合うほど強力な物になるものはなるらしい。


 そして、恐ろしいのは、これらすべては、秘密裡に、人側の世界、つまり、僕らの社会で行われている事だってことなんだ。

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