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第231話【家族団欒、安全な場所】

 「お、帰ったか兄」


 桃井くん曰く、世界一安全な場所で、妹に普通に出迎えられる。


 「え? ここって…」


 戸惑う葉山。無理もないよな。


 「さあ、入って下さい、秋様、静流様」


 と玄関の扉を開けたままの桃井くんに上品にエスコートされる。


 まあ、入るよ。うん、入る。


 遠慮もしないし、戸惑うけど普通に入るよ。


 だって、ここ僕の家だもん。


 ここが桃井くんの言うところの世界で1番安全な場所だった。


 確かにね、世界で1番は言い過ぎな感はあるけど、確かにここならって思う。


 だって、外には多分、〈秋の木の葉〉の人たちが潜伏しているだろうし、中には薫子さんを始め蒼さんもいるし、僕もいるしね。


 「おお、葉山静流、来たか」


 階段を駆け下りて来るのは、薫子さんだ。


 「おお、おかえり、大丈夫だったか? 恐らくだが、それなりの抵抗勢力は予想できたのだが」


 「うん、なんかクソ野郎さんが包囲網に穴開けてくれて、そこからすんなり」


 と言いながら、今でもなぜあの場所にクソ野郎さんがいて、しかも1番いいタイミングでピンポントで助けてくれたのか、全く意味不明だ。


 でも薫子さんは、


 「そうか、前住姉弟か、この件にまでも介入してくれたのだな」


 と、何やら納得の表情だ。


 そうなの? それがどこからどこまでの件なのかは不明だけど、僕の知る限りクソ野郎さんんて、どうも何かしらの修羅場に駆けつけている印象が否めない。よくはわからないけど。そんなクソ野郎さんの習性なんかを考えている僕なんだけど、ちょっと葉山の態度が変わった。


 一応は歩けるくらいは回復していたんだけど、それでも僕にもたれかかっていた葉山が、急にスクって立

ち上がって、自身の体調そうなのはそのままなんだけど、


 「なんで、喜耒さんがここにいるの?」


 物凄い怪訝な顔して言われる。


 「ああ、ここに住んでいるんだ」


 と薫子さんが言うんだけど、


 「あなたには聞いていない、真壁、どうなってるの?」


 なぜ僕に説明を求めるの? そして、普通に怒ってるよね?


 「普通にここに下宿しているだけだよ、言ってなかったけ?」


 「聞いてない」


 目が怖いよ、葉山。


 「いつから?」


 「もう随分前だよね、そういえば、ほら、葉山と一緒に中階層に行った後くらいだったかな?」


 ってうる覚えだったから、一応の確認を薫子さんに取るみたいに、薫子さんを見ると。


 「あ、ああ、そうだ、言ってなかったって言うより、その間、私とお前は合ってなかっただろ」


 「なんで、いつの間にか仲良しになってるのよ」


 「仲良しではない、ともに偉大な師匠を仰ぐ、言わば兄弟弟子のような物だ、なあ」


 って急に話を振って来るから、思わず、本当の事でもどこか嘘っぽく、「う、うん」とか言っちゃう僕だったりする。


 あ、それに僕、薫子さんはどうか知らなけど、特に母さんを師匠だとは思ってない事に気がついて、やっぱり嘘言ってるような気分になる。


 「ホントかしら?」


 ほら、やっぱり言われてしまう。今ひとつ元気はないけど、なんとなくだけどいつもの葉山に戻った感じがする。少しホッとした。


 ほら、元気に僕を睨んでる。


 まあ、この件については僕に怒られる筋合いはないと思うんだけどなあ。母さんと薫子さんの問題だし。


 そんな風に玄関で言い合う僕らの所に、かあさんが来た。


 「あ、いらっしゃい」


 とエプロン姿のかあさんは和かに葉山に声をかける。普通に僕の友達を受け入れてくれる。


 そんな母をジッと見て、


 「こんにちわ、今日花さん、初めまして」


 と葉山は言った。その言い方は、単に僕の母と言うよりもかあさん本人を指して言うような、普通に僕を介在しないで葉山自身の知り合いとして声をかけている感じがした。


 「こんにちわ、静流さん、よく来てくれたわね」


 と言ってから、


 「もう1人の子は寝てるのかしら?」


 と続いて言った。


 まるで、見えていないけどここには居ない人間を気遣うように母さんは言った。


 母さんは茉薙の事を知っている。


 もちろん、この事を、葉山の中に茉薙がいると言う事を、ここにいる誰かが言っている訳でもなくて、今、葉山を見てそう尋ねているのはわかる。かあさんは気がついているんだ。


 「はい、私が長く出ると、茉薙は寝ます、頭の方も互いに共有していますが、茉薙の方が若干容量が少ないみたいで、あまり起きている事ができません」


 そうなんだ。


 僕は彼女たち事を少し知った。


 そんな顔をして葉山をみると、


 「全部話すね、気持ちのいい話じゃないけど、聞いて欲しいんだ、真壁には」


 と言ってから、


 「多分、これで迷惑をかけるのも終わると思うから」


 まるで自分に言い聞かすみたいに、葉山は言うんだ。


 「きっと、全部お終いにできる筈だだから」


 と小さな声だけど、ハッキリとそう言った。安堵するみたいに、微笑んでそう言った。


 嫌な言い方だった。でも僕は今の時点では、


 「体調の方はいいの?」


 ともかく僕は心配だったから、聞いたんだ。


 「もう大丈夫、まだフラつくのはお腹が空いているせいかも?」


 と若干恥ずかしそうに言った。


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