表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
482/1335

第230話【世界で一番安全な場所へ】

 催涙ガスだっけ、特に涙も出ないし、催眠ガスなら眠くもならない。


 なんだ、失敗作品、不良品かな?


 って思っていると、


 「僕がいるところで、秋様に『状態異常』は起きません、99年早いです」


 いや、そこは100年だろ、って突っ込みかかっかったけど、本当にびっくりしていたから、どこから、じゃなくて、「いつから?」って聞いたちゃったよ。


 「僕はいつでも秋様の傍にいますよ」


 と言ってから、


 「秋様の友人を思う純粋で美しい涙が僕を呼び起こしたのです」


 どこの召喚条件不明な神獣だよ。僕は村の乙女かよ、僕の涙にそんな付帯効果とか付けないで、それとお願い、止めて、ついさっきの事だけど、同級生女子に泣き顔みられるなんて、もうすでにここ最近での最大の黒歴史だから。 


 そのまま、ズモモモって僕の影から出たな、ちびっ子ネクロマンサー。


 今日は漆黒の黒のローブでいつもの蛇の杖。


 そして、桃井くんは言う。


 「今回の、葉山静流、茉薙の件は、秋様の正当な乗り越えるべき『障害』として認定されました、おばさんは引っ込んでいてください」


 「でも、私たちは」


 と雪華さんのお母さんが何かを言いかけるんだけど、


 「あなたたちになんとかできるなら、北海道にダンジョンなんてできてませんよ」


 その一言は、ピシャリと雪華さんのお母さんを黙らせてしまう。


 「本当に人って、『欲』が絡むとめんどくさい動きをしますね」


 と桃井くんは言った。


 「ともかく、ここからは秋様とこの葉山静流様の、ダンジョンウォーカー同士の問題です、部外者は、どうかお引き取りを」


 でも、それでも、彼女は言う。


 「これは、もう、個人がどうこう出来る問題じゃあないのよ、もう国だって動いているわ、この辺りの地域は封鎖してます、逃げられないわ」


 その時だった、雪華さんのお母さんのスマホが鳴る。そしてそのままスピーカー通話で、 


 「何?」


 イラついた表情を隠しもしない問いに、スマホからは、大きな衝撃音と共に、


 「2個小隊壊滅しました、封鎖線維持できません」


 と悲痛とも言える声が入って来る。


 「何が起こっているの?」


 こちらから尋ねる雪華さんのお母さんの声に、


 「わかりません、突然、2名のダンジョンウォーカーが現れて、『鎖鎌』の様な『槍』を振り回して、もう1名は緑の『魔法使い』が強力な魔法であたりを蹴散らしています」


  その会話の中でどこかで聞いた声が、「アモン、まだ引っ掻き回すか?」「人間の、この種の介入は面白くありませんね、徹底的にやってください」その後、下品な笑い声が響いてきた。


 なんでクソ野郎さんが?


 茫然自失する雪華さんのお母さんを前に、


 「さあ、僕達は、世界で1番安全な場所に向かうとしましょう」


 と、桃井くんに言われて、そのまま葉山の手を引いて、僕はそのアパートを出ようとした。


 その時、雪華さんのお母さんの声が響いたんだ。


 「この子たちの目的って、真壁くん、あなたを『殺す』事なのよ!」


 それは、忠告なのか、それとも気が済まないって感情なのか、ヤケクソになって言っているのか、わからないけど、いいよ。


 そんなのとっくに知ってるから。


 僕はあの時知ったんだよ、何もわからないくて、葉山の過去なんて全く知らないけど、いや少しは聞いたけど、それが本当に事実かどうかなんて正直、見当もつかないけど、あの時、彼女のぶつけて来た、僕に向かい合う殺意は本物だったから、それは分かる、理解もしている。


 でも、それがどうしたっていうのさ? 僕はそれでも葉山を助けたいんだ。


 僕らは一途に桃井くんの言う所の『世界一安全な場所』へ向かうことにした。


 それにしても、その『世界で1番安全な場所』って普通に人が走っていける場所にあるんだな、意外だなあ、なんて、そんな事を考えていた。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ