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第229話【追跡されてた間抜けな僕】

 でも、多分、こんなのあんまりで、どう考えても納得できない。そんな思考が次から次へと湧き出て来て、同じくらい涙もボロボロと生産し続けている。どうなってんだ、僕の涙腺。


 あの時、ダンジョンから僕が出てくるのをズッと待っていた雪華さんのお母さんの言った事、提案した事が、1番良いって言ってたけど、そこに葉山の意思は無いんだ。それは多分、葉山以外にとって都合のいい事であって、葉山にとっては最悪な事だから、だから悔しいのかもしれない。


 「もう、泣かないでよ真壁、ああ、もう、この泣き顔見てると色々な物が惜しくなっちゃうよ」


 と、いつもの教室で、いつもの言い方で、まるで僕の失敗をからかうみたいに声を出し笑う葉山だ。


 本当に恥ずかしい、もう止まってくれよ涙。


 そうだ、深呼吸、深呼吸。ああ、ダメだ、泣いている時の深呼吸ってあのハワワ的な変な、独特の嗚咽になってしまう。余計にみっともないよ。


 葉山も止めて、背中をさすらないで、逆効果だから、余計に泣けるから。


 でもよかった、葉山元気になった。それも僕をホッとさせて泣かせてる原因なんだろうなあ、って、ちょっと泣いている事を肯定するみたいで嫌だけど、大きく涙を拭う。そして、そんなタイミングでその時、扉が開いた。


 「お疲れ、真壁くん、ありがとう、葉山静流さんの所在地を教えてくれて」


 と、室内に入って来たのは、雪華さんのお母さんだった。


 え? なんで?


 と、ただ驚く僕に、葉山は、一つの薬のパックを袋から出して、


 「これね、発信機だね」


 と言った。


 「ごめんなさいね、騙すような真似してしまって、でもね、これが誰にとってもベストだったのよ」


 と雪華さんのお母さんは悲しそうにそう言った。


 騙すような真似って、まんま騙してるよ、早くこの薬を渡さないと、葉山が死んじゃうくらいに言ってたじゃん。確かに死にそうだったけど。


 「ごめん、真壁、私、ちょっと逃げるね」


 って言いながら、未だ本調子では無いみたいで、フラフラと葉山は立ち上がる。


 「もう止めて、もういいでしょ? 私達と一緒にラボに行きましょう、あなたが生きて行くためにはもうそれしかないわ」


 切実に、哀願するように雪華さんのお母さんは言う。


 「私、いつ起きられるかわからない状態で眠らされるのは嫌、そんなの死ぬのと何が違うの?」


 「それでも生きていけるじゃない、死ぬよりいいわ、だから」


 「そしてまた被験体にされるの? 父みたいに私の体を切ったり貼ったりするの?」


 「違うわ、私だって、母親なのよ、同じ歳くらいの娘が死に向かうなんて、看過できる訳ないでしょ」


 その言葉に、僕も、葉山もちょっとびっくりした。


 そして、その瞬間に、扉の向こうから空き缶の様な物が転がり込んで来る。あ、これって、良く洋画とかで見るパターンだ。


 室内の中心まで転がると、派手に有色なガスを吹き出す。


 「ごめんね、真壁くん、こうでもしないと彼女を確保できなかった、許してね」


 と言う雪華さんのお母さんは、いつの間にかガスマスクだと思うけど、そんなものを顔に当てていた。


 しまった、って思う、思うんだけど、あれ? 何も起こらない。


 催涙ガスは名いっぱいっ吹き出してるって言うのに、まったく何も変わらない僕だよ。


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