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第228話【葉山が元気でホッとする僕】

 僕が差し出す薬の入った大きな袋を見た葉山の死んだような目が一瞬で生き返った。 


 普通に驚いてるって感じで、葉山の大きな目が、さらに大きく見開いた。


 そして、


 「いいの? 高かったでしょ」


 なんて馬鹿な遠慮とかしてきたから、


 「早く飲んで」


 と言うしかなかった。


 彼女は、台所に立って、一回に飲む薬と出し始める。その量がさ、少食な人なら一食分かよってくらいの量で、何回にも分けて水で流し込んでいた。


 そして、再び僕の前、さっきまで座っていた場所にに座り込んで、お腹に入れた薬の消化、効果が現れうのを待つようにジッとしている。 


 わずかな時間が過ぎて、葉山は顔を上げて、


 「助かったよ、真壁」


 と言った。よかった間に合った。


 その顔はいつもの葉山の顔で、そして、僕の知る彼女の顔だった。それでもまだちょっと生気は戻ったように見えないけど彼女の顔だった。


 そして葉山は言う、


 「これ、多分、あの人達にもらったんでしょ?」


 いつもの顔色に戻って、冷静に考えられるようになったんだろう、キチンと整合性のある質問だった。


 多分、あの人達って雪華さんのお母さんで大柴マテリアルの事を言っているんだと思ったので、


 「うん」


 とだけ答えた。


 「そっか、そうなんだ」


 そう言う葉山の顔は何処か寂しそうで、


 「でも、私、あの人達の所には行かないよ」


 僕の顔を見てはっきりと言う。


 強い意志を感じられた。


 だから、葉山はここにいたいんだって事が確認できた。


 そして、


 「私の事、聞いたの?」


 って少し複雑そうな顔をして聞いて来たから、


 「うん」


 と答えた。


 「そっか、聞かれちゃったか」


 って笑って言うんだ。その次には、


 「気持ち悪いでしょ私」


 と言った。


 「そんな事はないよ」


 と、これは本音で言った。


 「嘘、だって『キメラ』だよ、私、もう法的にもアウトだし、だから存在その物がNGなんて、笑っちゃうよね」


 普通に言われてしまうけど、僕はちょっと腹が立ってしまう。


 「それは葉山の所為じゃないじゃん」


 とか言ってしまう。だって、本当に酷い話だから、葉山自身には何の落ち度もなくて、どちらかと言うと被害者って立場だと思うから、こんな立場って、こんな自分って、そんな事を言うなよ、って、多分そんな風に怒ったんだ。


 そんな僕の、全く整理も整頓もできないむき出しの感情だけが出てしまって、どうしようもない程のやるせない気持ちを、葉山は驚いたみたいな顔して、そして微笑む。


 「ほんと、真壁は優しいなあ」


 って言ってから、


 「ちょっと、東雲さんが固執するのがわかるよ」


 と言って、僕の頬にそっと触れる。


 「泣くなよ」


 って言われて初めて気がついた。僕、泣いてるよ。


 「何が君を泣かせてるのかな、今の状況? それとも私の事? 私の父の事かな? 大柴マテリアルも酷いよね、その全部かな?。君は今とても理不尽を感じて、その犠牲になっている私に同情してくれてるのかな?」


 彼女の手は優しく僕の涙を拭う。


 恥ずかしい。ほんと、同級生の前で泣くなんて最悪だよ。


 それに僕なんて、僕の事なんて、この感情なんて意味がないだろ葉山。


 なんで、僕、葉山の前で泣いているんだろ?



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