第226話【矛盾する感情に僕の剣】
僕はとっとと着替えて、家を出ようとするも、蒼さんが僕に、例のマテリアルソードだっけ、曰くつきのsword worldを渡してくるんだよ。
いや、いらないでしょ、僕は彼女と戦いに行くんじゃ無いんだ。
そう思うけど、蒼さんは真摯に僕に言うんだ。
「ご自分を守る為にも是非、装備してください」
これ持って、彼女、葉山さんの所に行くって言うのも、正直抵抗がある。
あ、でも、おかしいよね、矛盾する。
僕はあの時、一応の覚悟を決めていた筈なんだよ。彼女と闘うって事。彼女の希望を叶える事、そう言ったことをそれなりに受け止めようと思った事。あの覚悟の前に僕はそう決めた筈だった。
それに僕がどう思ったって、葉山さんの気持ちが決まっている以上、戦いは避けられない。
そんな、この後に及んでと言うか、僕は彼女に気を使っているみたい。
この剣を持ってい言ったら、嫌な気分になるなあ、とか、もしかしたら傷つけるかもって、そんな気持ちがあったんだ。ううん、あったみた。蒼さんにそれを教えてもらえた気がした。
「うん、そうだね」
と言って、僕は装備した。
そして、
「じゃあ、行ってくるよ」
そう行って僕は家を出ようと、玄関を出るんだけど、その時、妹ともう1人、ああ、あれがマモンちゃんか、妹と一緒に家の中に入って行く。
「兄、出かけるのか?」
「うん、ちょっと行って来るよ」
「ちゃんとうがいと手洗い忘れるなよ」
と言われる。だから、今、行く所だって。それは帰った時だろ。そう突っ込もうとすると、僕の横を通り過ぎる妹とマモンちゃん。
初めて見た、マモンちゃんって妹と同じ歳くらいかな?
いつも妹がありがとうね、なんて言おうとするんだけど、
「1人で大丈夫ですか? 助けがいた方がいいですね?」
って言われる。
え? あれ?
「マモン、早くしろよ、先に私からやるぞ」
って先行する妹の後を追うマモンちゃん。
一瞬だったけど、僕はその声の中にそしてあの小さな体の中に確かにアモンさんを感じた。人違いじゃない、僕は彼女を間違いない、間違いない筈なんだけど、あれ? これは流石におかしいって思って、やっぱり勘違いかなって思って、なんか釈然としない。
いやいや、そんな筈はないよね。がグルグル回る。
そして、当のの本人たちは、自分の部屋に上がって行く、その時、「妹、電話貸してくれ」「いいぞ、二階にもある、家にかけるのか?」「うん、弟に連絡しておきたいんだ」「なんだ、マモン、お前、お姉ちゃんだったのか?」「まあな、私は姉なのだ」「いいなあ、あたしも弟欲しい」「弟なんて良くないぞ、生意気だし、人の話聞かないしな」なんていう会話をしながら、自室に入って行った。
そうなんだ、マモンちゃんには弟がいるんだ、なんて今の僕にとっては割とどうでも良い情報を聞きながら、僕は家を出た。
蒼さんが教えてくれた場所は笑ってしまうくらい僕の家から近い場所にあった。
札幌の中央区もこの辺って古い住宅が多くて、その今時な感じの木造住宅街の一角にある、古びたアパート。
アパートって言っても、玄関が共有でで下宿っぽい、今時かよ、って作りの古い建物の中にそれはあった。