第223話【神なる奇跡を極める妹】
「誰が第二夫人か!!!!!!!!!!」
今日は2秒で終わった。
「薫子は第二夫人ではないよな、兄、姉だよな」
といつも間にか僕の横に来て、同じく窓から顔を出して、薫子さんを見ていた『妹』が言う。
相変わらず名前が付かないんだ、妹。
その妹は窓から手を振って、
「姉! 強いなあ、姉!」
って喜んでいる。
「おお、妹か、おはよう、もう顔は洗ったか?」
妹は首を横に振って、
「ちゃんと顔を洗って、朝食後なら歯も磨くんだぞ」
と念を押される。流石、真壁家の長女と言われているだけのことはあると感心する僕だ。
そして、
「お前もだぞ、真壁秋」
って付け足して言って来る。
「うん、助かったよ、姉」
と一応、僕の代わりに道場破りを倒してくれた薫子さんにお礼は言う僕だ。
「お前が『姉』って言うな!!」
って怒って言うんだけど、でも、家族の序列って枠で考えると、あの薫子さんの上に行けるって気がしないから、姉でいいや、って気にはなる。同じ歳だけど、逆らえる気もしないし、いいやそれでって気になる。
それにしても強くなったよなあ、薫子さん。
速さとか、そうでもないんだけど、入りと出が上手くなったて言うか、以前は『雑』だなあ、って思ってた部分が『多岐』に変わってた。メキメキ腕を上げてるなあ。
教えている母さんと教えられている薫子さんて相当に相性がいいみたい。
まあいいや、妹のカラスの行水みたいな洗面が終わった見たいだから、僕も早速姉に言われた様に、顔を洗おうって思って、ちょっと喉が乾いていたから、水を飲んだ。
やっぱり、札幌の水って美味しいよね。
本当にただの水道水なんだけど、清涼で気のせいかもしれないけど、甘みが感じられるんだ。
ああ、生き返るなあ。
札幌の水道水。ちなみに普通にミネラルウォーターとして売られているから、札幌の水道水。この辺は、豊平川水系から来てるからミネラルとかも豊富みたいだ。
さて顔を洗おうか、って思っていると、いきなり『イジェクト!』って聞こえて来て、僕の横顔に、ビシャッと水が掛かる。
ああ、またやられた。
「見たか、兄、今、顔から水をイジェクトして兄の顔へ分離した水を掛けたのだ」
とかエッヘン、って顔して言う妹だ。
ああ、もう「はいはい」とは対応するけど、このイジェクト、スキルじゃないんだってさ、北海道ダンジョンでもかなり貴重な能力だそうで、なんで妹が身につけて、こんなしょうもない事に使っているかってのもわからないんだけど、実害の無いうちは放っておいてる。
普通に拭いた方が早いでしょ、って思うけど「うん、わかったよ、僕の負けだ」って言うと、本当に嬉しそうに笑顔になるから、まあいいやって思っている、どうせ顔洗うしね。
「兄もこの私の力が必要になったらいつでも頼れよ」
「他にどんなことが出来るの?」
「うーん、そうだなあ、食べすぎたときとか、お腹の中から食べた物をイジェクトできるぞ、見るか?」
やめろ、朝っぱらから、兄に何を見せる気だ。
丁重に断ると、「そうか、虫歯とかもイジェクトできるからな、痛くなったら言えよ」
とか言いながら行こうとするけど、妹、顔の水は除去されたけど、首やら腕から二の腕までビチャビチャだぞ、また廊下に水をしたたらせて、姉、もしくは母さんに怒られるぞ、でもって、ついでに妹をちゃんと見ろって僕も怒られるから、仕方なく、タオルで妹を拭いてから野に放つ僕だ。




