第219話【嘘とホントの絡み合い】
僕のベッドの横の、小さな丸椅子に座ってる八瀬さん。座ったままの格好で、僕と距離を取るように器用にのけぞって、
「ねえ、ちょっとフェアないんじゃない、僕の事ばかりじゃなくてさ、少しは君の情報もおくれよ」
鉾咲さんて、多分高校生くらいなんだけど、いろんな所が長くて、高くて、スラッとしてて大人っぽい容姿で、顔も個性的だけど美人さんで、髪の毛とか男の子みたいに短くけど外国のモデルさんみたいに言えないこともなくはない人なんだけどさ、そんな感じの人が、拗ねてる。頬をプクって膨らませて、僕を見つめるんだよ。ちょっと可愛いって思っちゃった。
特に何も言わない僕に向かって八瀬さんは、
「そうか、わかった、君は意地悪な人なんだね」
そう僕を指差して言う鉾咲さんだ。
「いえ、違いますよ」
その言葉に、
「うん、それは本当っぽい」
って言って、
「蓮也から聞いたのかい?」
「ちょっとだけです、多分、鉾咲さんが知られたくない内容は土岐は喋ってませんよ」
「うん、それも本当っぽい」
って言ってから、アチャー、失敗したって顔して、大した事じゃないけど、新しい情報喋っちゃったよ自分て後悔しているのがわかる。その上で、
「君は意外と駆け引きとか上手い人かい?」
「まさか、駆け引きなんてしたこともないですよ」
「うん、それも本当っぽい」
鉾咲さんて、人の本音とかわかるのかなあ、僕の言葉を的確に判断して成否を判断して一々決めつけてくれる。腕を組んでしたり顔で言って来る。
その鉾咲さんが言うんだよ、
「いやあ、君とは上手くやって行きたいからさあ、仲良くやろうよ」
って手を差し伸べて来るんだ。握手って感じかな。
だから僕はその手を握って、軽くシェイクハンドして来る、ニコニコする鉾咲さんに僕は言った。
「それ、嘘ですよね?」
その言葉に、鉾咲さんは大笑い。僕も笑った。
2人して大笑いした。もう、周りの、他の人が『なになに?』ってこっちを見てしまうくらい笑った。
「いやぁ、狂王君は侮れないなあ」
「鉾咲さん、汗、すごいですよ、保健室暑いですかね」
そう言った瞬間、鉾咲さんは僕の握っていた手を離す。
「嫌だな、女の子に向かって、ちょっとデリカシーとかないよね、君」
と言って手を引っ込めてしまう。
この人の行動ってさ、特に対人に関して言うなら、多分、気持ちが高ぶってとか、感情が先に立ってって言うのはないんだよ、全部、『観察』それに基づく『判断』そして『計算』によってもたらされているんだと思う。
急に握手を求めてきたのだって、僕の体から来る、脈拍だとか、体温とか、今僕が言った汗とかの変調を、彼女の発言によってもたらされる変化を知る為の手段なんだろうな、だから僕の方からその『汗』っているワードを言ったら、自分が読まれているってそう判断したんだ。
まあ、気がつついちゃったけど、でもさ、僕、人を相手に駆け引きなんてできないからさ。率直に聞いてみたんだ。
「茉薙に仕事をさせているのは鉾咲さんですよね?」
もう、どストレート。だって、僕がさ、こんな人に言葉を隠しながら本音を聞くなんて無理だよ、絶対できない。だからもう率直に聞いてしまう。
「いろんな仕事を任せているよ、君も知ってるだろうけど、彼は優秀だろ?」
「いろんな仕事の方はいいです、今、僕が問題にしているのは、鉾咲さんがどうしてシメントリーさんを『殺そう』としたかって事です、他はいいです」
ごめん、僕、今、この瞬間に周りの人間も巻き込んんだ。