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第43話【唯一無二のモンスター】

 本来なら恐るべきドラゴン系だけど、ここまだ浅階層だからさ、そんなに大したものでも無くて、ドラゴンには分類されてるけど、ちっさいっていうか、㎝なドラゴンなんだよ。


 見た目はハエなんだよね。


 小さいハエ。


 ブ~ンって飛んでくるハエ。


 でもって、北海道って、あんまりハエっていないんだよね、よっぽと特殊な環境でもない限り、大きなものって僕も見たことなかったから、北海道以南で、ハエの鬱陶しさってこんな感じなのかなあ、って言う事を体験させてくれるモンスターという位置付けになっているんだよね。蚊とかもあんまりいないよ。


 そんな『虫』系には疎い北海道民な僕な訳だけど、良い加減に鬱陶しくなってきてはいるんだけど、この現状を打破できないでいる。


 というのも、普通に弱い的に位置付けされるこのドラゴンフライなんだけど、一番の問題は、「逃げられない」にある。


 普通に弱い敵からは、ノーリスクで逃げ馳せる(逃げ果せる?)ものなんだけど、このドラゴンフライは違う。弱いくせに、次から次へと仲間を呼ぶ習性があって、強さはないけど、その数に圧倒されてしまう。本当にこの数を相手にするなら、そこそこ上位の魔法を使える人でもいない限り、地道な対応の仕方で数を減らしてゆくしかない。


 それでも数が多いので、次々と仲間を呼ばれた場合は、対応できなくなるので、その場合は1度その階層から出るしかない。


 この札幌ダンジョンってさ、『進む』為の戦闘の回避ってできないけど、『引き返す』為なら、あっさりと逃げられるんだよね。


 退路になる場合は確実にモンスターとかも出ないしね。


 でも、それは浅階層に言える事で、中階層も真ん中くらいになると、進む道も引く道も複雑に入り組んでくるから逃げるって言っても簡単にはいかないらしい。


 よっぽど通い慣れた道ならともかく、パーティーにマッパー(位置を把握して地図を構成できる)スキル持ちの人でもいない限り、安全に、って訳にはいかなくなって来るみたいだけどね。


 で、最下層に向かう為に弱い敵を回避して、体力とか時間を温存することはよくあることなんだけど、このドラゴンフライはそれができない唯一無二のモンスターと言われているんだよね。


 今も所狭しと飛んでるよ。もう、視界が遮られるくらい。って思ってたら、僕の周りにハエの大軍が来てた。凄い羽音。


 広範囲攻撃魔法とか打てると一発で退治できるけど、打ちだせる魔法の数って決まっているから、こんな弱い敵には使ってられないから高レベルなダンジョンウォーカーでもその鬱陶しさの前に引き返せざるをえなくなる。


 ウザさだけなら多分ダンジョン1、2を争うモンスターだと思う。


 本当にどうしようかな、もう地下3階への階段は見えているっていうのに、叩いても叩いても、減るどころか数はどんどん増えてゆくよ。


 かつて、ヤケになって、ドラゴンフライに対して『落星』クラス(現在知られている攻撃魔法で最大の破壊力を持つといわれている呪文群)を使ったって魔法使いがいたなあ、なんて思い出して、


 「誰か『メテオストライク』(落星の中の1つの呪文)ても使ってくれないかなあ」

 って呟いたら、


 「唱えますか?」


 なんて、角田さんがノリも良く聞いて来るから、


 「いやいや、もったいないでしょ」


 って言うと、


 「ですよね」


 などと言う。思わず2人で笑ってしまう。本当に角田さんってノリがいいよね。冗談の気質もタイミングも僕のツボに入ったりするから、なかなか侮れない。


 メテオストライクなんて唱えられる術者なんて、深層階常連者でも、ほとんどいないよ。それこそ、『最後の扉に触れた者』クラスの実力者でもない限りね。今もこの広くて、深いダンジョンの中で、ギルドが確認している魔導士として、たった3名の術者しかいないっていうのがもっぱらの噂。


 しかもそのうち二人は深階層の奥底に居を構える姉妹らしいって言われてる。


 もちろん、僕らとしては別世界の話。


 それでも、サムライの技能とクラスを持つ春夏さんならいいところ行くとはおもうけどね。


 第一、ここには魔法系のスキル持っている人なんて1人もいないからね。


 まあ、今後はゆっくりと、『ハリク』あたりを使える人が仲間になれば、ラッキーかなくらいの考えでいるよ。


 そんな将来の、具体的には中階層後半あたりのパーティー構想なんかを思い描いていると、不意に角田さんが、


 「秋さんはまだ『本気』出さないんですか?」


 なんて聞いてくるから、


 「うん、まあね、相手もいなしし」


 違うこと考えてたから、つい言ってしまう。いや、僕、本気とかないから、いつも自然体だから。そう言おうとしたら、角田さんが、ちょっと真剣な顔して、


 「どんな結果になろうと、このダンジョンでは人は『死』にませんよ、秋さん」


 それは知ってる。


 このダンジョンに『死』は無いんだ。



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