第214話【ギルド保健室での目覚め】
次に目を覚ましたのは、ギルドの保健室。
ワイワイとしたちょっとした喧騒、そう悪くない騒がしさ、安心できる雑踏に僕は包まれていた。
「あ、真希さん、気がつきました」
と言うのは雪華さんで、その声に呼ばれて、軽快なリズムで近づいて来るのは、
「おはようアッキー」
ニコニコした笑顔で覗き込んで来る真希さんだった。
そして、体を起こす僕の背中をバンバンと叩いて、
「良くやったな、ありがとうなアッキー」
とか言って、一応は僕に、と言うか僕らに気をかけながら忙しそうに保健室から出て行く。今一つ状況が把握できないけど、真希さんから見ると、どうやら僕らは上手い事やったらしい。あんまり自覚はないけど…。
そうか、良かった、そんな真希さんはいいんだけど、
「他の人は?」
とまず第一に気になったので、尋ねる。
「皆さん、無事ですよ、奏と鴨月君はもう帰りましたよ、1番の軽症だったので、守ってもらってありがとうございました、1番怪我の酷かったクロスクロスの騎士さんもさっき目を覚ましました、他の人はもう起きてます、ほら」
と最初の方の言葉は微笑みながら、最後の方はちょっと怪訝に言う雪華さんなんだけど、どうしたんだろう、ってほら、と視線を送られた方を見ると、
「狂王、よかった、目を覚まして、本当によかった」
と僕のベッドの横では、なんだろう、本当に人って光るんだなあ、って、キラッキラするくらいの美少女が僕を覗き込んで、喜んでいた。
「今回の導言は『流星雨』と『峻別守護』の同時詠唱だった、発想からの完成までは自信があったのだけれど、あれだけの範囲に破壊力だ、効果は試す機会がなかったから、みんなを守れているか正直、確証はなかったんだ」
と、伏せ目がちに、うわ、睫毛長!、顔も小さ、不安げに僕に語りかける超絶美少女のこの子、誰???
ハーピィーが豆鉄砲食らったって諺があるけど、まさにそんな感じの僕だ。
そんな僕を見て、その美少女はこれ以上ないくらいの微笑をして言った。
「ああ、すまない狂王、オチがなかったな、そうだな、そう、『ぶっつけ本番かよ!』ああ、これは寧ろ私の立場だな、『実験台かい!』でしょうか?」
え? この人、もしかしたら此花さん?
ええ?
なんだろう、こんな事だけど、かなり驚いている僕だ。
茉薙と静流さんが同一人物の時も驚いたけど、同じくらいな気がする。こんな事と比べて申し訳ないって気持ちにはなるけど。
「此花さん?」
ここで此花さん、ハッとして、とっても取り乱す。
「あ、ああ、そうだ、私は此花だが…」
なんか一生懸命に顔を隠そうと、その辺にある物を被ろうとするんだよ、ベッド横のキャビネットに積み上げているタオルとか、それで隠しきれないと、今度は僕に書けられている布団を引っ張ろうと必死になる。そして、
「狂王、これは違うんだ、これは『椿』がだな、髪型とかな、そういう風にしたんだ、私ではなくてな、その、変だよな、そうなんだ、みんなこの顔を見るとそうなるんだ、でも違うんだ」
と言い訳みたいなことを言い出すんだけど、これはなんの為の言い訳で、誰に対しての言い訳なのか、一応は聞いている僕だけど、基本流す姿勢でいる。