第209話【死んだふりからの一発逆転!!】
そうだ、彼女は、葉山さんは今、僕の敵なんだ。
無理やり納得しようとすると、ダンジョンだもんな、こう言う事だってあるよ、ってなるけど、ダメだよ、なんか気持ちがスースーして、力が抜けて行く感じがするんだよ。
そして、この現状を強く否定しようとすると、僕はさっき茉薙に、静流さんに、相馬さんを庇って負って怪我、ちょっとだけど、その傷ついた痛みが嫌ってくらい現実だと教えてくれる。
くそう。
なんなんだよ、これ。
受け入れてはいる。
だから、僕の言う所の話し合いになんて応じるはずも無く、同じ体の茉薙の味方って事を思い出せばこの反応は当たり前の事なんだよ、なんだけど。そんな女々しい僕ではなく、今度は花嫁さんを狙った、いや違う、あれは花嫁さんの後ろにいる此花さんに茉薙の意識が向いたような気がした。
「ふふ、気づかれてしまったのう」
花嫁さんが言った。その表情は、先ほどまでの『ようやく立っている』とは明らかに違う活力を持っていた。
凄いな、この人もってかモンスターであるリリスさんも死んだフリしていたんだな。
「この魔法使いの『導言』が終わりまで発言できれば、形勢は一気に逆転する、それほどの魔法じゃ、時間を稼ぐぞ」
と言って、
「それにしても、凄い娘じゃ、ここまで魔法を自分のものにするとは、与えたものは与えられたもので満足し、足りないものは足りないゆえに彷徨うものなのだな、やはり、人とは面白い」
と言って、愛おしいそうに此花さんを見つめるんだよ。
人の成長を慈しむみたいな目をしている花嫁さん事、リリスさんだけどさ、この場合、彼女の立場からすると、それっていい事なのかどうかちょっと疑問だ感じだよ。だって彼女に取って今は違うけど敵だよね、僕ら、って気にはなる。
でも今はいいや。
ともかく、此花さんに、彼女ぼ魔法に全てを描ける。
そのための準備はすでに出来ていた。
「今更『童話世界の魔法使い』に何ができるんだよ!」
「彼女を見誤ってはダメ!」
茉薙と静流さんの声は同時に響いて、その行動というか体は直接此花さんを狙って動いてくる。
させないよ!
此花さんの前にいるリリスさんのその前に僕がインターセプト。
「血の剣源!!!、動くヤツは全部来い!!!!!」
これが茉薙のスキルって事なんだな、自分の意志で剣を動かして攻撃する。今みたいに条件が揃うと結構厄介な攻撃だよ。剣しか動かせないみたいだけど、ただ飛んで来るんじゃないから余計に厄介で、操る剣には全て一撃の重さと必殺の攻撃力があるから単なる器用なスキルって訳でもないから十分に注意が必要だ。
しかも何本と束で来られると、同じ数のそこそこ剣の使える人間が振るうくらいの威力があるから侮れない。
つまり、僕は茉薙と対峙する時は、一対一では無くて常に複数の、その操る剣と同じ数の茉薙を相手にしているという訳だ。
だから、今、僕が今の茉薙の前に立つってことは、今、舞っている剣が15本くらいあるから、16人の茉薙と戦っている感じになる訳だ。
1人でも厄介なのに、それが16人って、凄いなこの絶望感。
でも、ちょっと思った。
これって、多分、さっきも考えたけど魔法スキルの人が自分と相手の請負頭を比べて、数の少ない方が抱く感情そのものだよ。魔法を使う人っていつもこんな風に自分と相手を比べたりしていたんだな、って実感した。
そしてその上で思うのは、此花さんの事。
此花さんはいつもこんな絶望的な感情を抱いて、その上できっと今みたいな戦闘のスタイルを作り上げて言ったんだな。
それを想うと、リリスさんが此花さんに抱いている感情もわかる気がするんだ。
この人、出来ない事を嘆くよりも、できる方向を伸ばしてきたんだ。
ほんと、尊敬する。
この人は、幾つも、何十、時には何百もの数の上の不利をひっくり返してきたんだろうなあ、って、そう思ったんだ。