第207話【攻略不可能???】
春夏さんて、僕にとって良くない事に敏感だから、こうなる事を予想していたんだね。
って言うか春夏さん凄いな。こんな状況を読んでいたんだ。
確かに今僕は困っている。
だって、葉山さんだよ。今の僕の敵。
操られてているってわけでもなさそうだし、でも、僕も僕の仲間がこんな状態な以上はここは避けては通れない。たとえ相手が誰であろうと、って言う決心もできていないのもまた事実だ。
「葉山さんて、茉薙って言う人なの?」
1人の人間に2人の意識が宿っている。
つまりはそう言う事なんだ。
「さあね、どうだろうね?」
意地の悪い子供に似た表情で、葉山さんの顔をして茉薙は言った。
僕がまず最初に思い浮かんだのが、『二重人格』って奴。彼女と茉薙は同じ体に宿っている。
それは間違いない。
僕が茉薙の剣技に対応できたのは、他ならない、あの時、そう、ツギさんを、宝箱を開ける為の外注してくれる人であるツギさんを探していた時に、春夏さんと葉山さんの戦いを止める為に、あの複雑怪奇な三つ巴の戦いに参加してしまったから、その時に茉薙の武器を見ていたから対応できたんだ。
それでも、あの時の葉山さんの攻撃というか春夏さんに対してのあまり殺伐としてもない意識のない反撃の方が、まるで、ねばりつくというか、見えない所を這ってくるみたいの攻撃の方が鋭いというか、技量は上の様に見えるのは気のせいなんだろうか?
普通に茉薙の方が剣技が雑に感じられる。いや、相当に強いんだけど、比べたらって話で、あくまで比較するとって事で。
だからこそ、僕は思ったんだ。多分、茉薙よりも、今はその中に沈んでしまっている葉山さんの方が上かもって、そう思えてならなかった。
その上で、僕は尋ねる。
「これって、一体どうなってるの?」
これは、茉薙ではない、たぶん、と言うか恐らくは同じ体の中で聞いているであろう葉山さんに尋ねたんだ。
「見ての通りだよ、今は俺の番だ、あいつは出てこない」
「お前に聞いてない、葉山さんに聞いてる、静流さんに聞いているんだ」
僕のキッパリとした即答に、茉薙がキレた。
「なんだよ、ふざけてるのか!?、今は俺が相手だろ?? 静流は関係ないだろ!! お前も出てこようとするなよ!!」
素直な奴だ、茉薙の中で、その同じ体の中で静流さんが話を聞いているって事を漏らしてくれた。これは有効だ。話し合いは、話すことの出来る人間同士で行うものだ。
茉薙と話せないというなら、話せる静流さんをこの場に引っ張り出せば良いいんだ。
一応の解決策というか、その切っ掛けみたいな物を得る様な気分になっている僕に、刃の雨が振る。
茉薙がヤケになって様に僕を襲った。
さっきとは明らかに違う、剣のみ重さで襲いかかる、無数の刃、丁度良いや、数を数えてしまえ。
1、2、3、4、5、6、7、8…全部で16本。ああそうか、さっき僕らが倒してあしまった九首さん一派の人たちの装備していた剣を利用しているみたいだ。
つまり今の所、茉薙は自分を含めると、一度に18回の攻撃が可能ってことになる。
正体は割れた。
つまり、今の所、茉薙は僕に対して同時に18回の攻撃が可能って事になる。
この時点で、僕は思うのだけども、相手の攻撃の正体が知れたからと言ってこちらが有利になるとは限らないなあ、って思った。
だった、18回だよ、18回。
無理だ。ってのはわかるから余計に虚しい。