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第199話【人ならざる者】


 困惑する僕の顔を見てリリスさんは茉薙を指差して言う。


 「あの体にな、『命』が4っつ入っているのじゃ、我らモンスターとは違う、まるで編み込まれる様に『命』と、今は2つになってしまっている『意識』が同居しておる、これは人の仕業か?」


 そして、続けて彼女は言った。


 「もしこれが人の仕業というなら、妾の知る人の行いではないな、お前達人の言葉で申せば、『狂気』とでも言えばいいのか、それとも『正気の沙汰ではないな』と言ったところじゃ」


 そして、


 「そうか、人もあの様な異形を、この迷宮を介さずモンスターを造り出せるのじゃな」


 僕に言う訳でも無く、リリスさんは自分に語らう様に言った。


 リリスさんのこの雰囲気はわかった。よく知っている。


 僕らがこのダンジョンで味わっている感覚だ。


 遭遇感の次に来る、というか感じる物。


 リリスさんの言い方は、まるで、僕らがこのダンジョンの中にいるモンスター、と言っても敵対者としてのモンスターだけど、その異形の姿に対面した時に瞬時に恐れを抱く様に、時として想像すら超えてしまう『恐怖』を抱いてしまう様に、その言葉はモンスターであるリリスさんから、あの茉薙に向けられて発せれていた。


 あまり表情の変わらなかった花嫁さんがまるで信じられないと言った驚きと忌むべき者を見る様な目で見たいるんだ。


 そして、最後にこう付け加えた。


 「あれは、あの姿は我々が向かっている方向ではない」


 と静かにつぶやいていた。リリスさんのその顔は今までに見せる事が無かった嫌悪の表情に見えた。


 「人以外の何物にも見えませんが、特に魔法スキルで自分を強化している様にも見えませんよ」


 此花さんはそんな可能性を自身の魔法スキルで否定する。


 「私では感じられないと言うのなら、面白いですね」


 さっきまでの此花さんの求めて居た面白いとは違った意味でそう言っているんだよ思った。それを後押ししたのは、他ならないリリスさんの表情とその備えだった。


 この時、リリスさんは突然現れ、僕らの前に立つこの茉薙と言う少年を改めて敵と認識したみたいだ。指の爪がねジャキン!って伸びたのも。僕らにもそして、さっき襲ってきた九首さん連中にも見せなかった反応で驚いてしまった。 


 モンスターで、ハイエイシェントなリリスさんでも身構えてしまうんだ。彼女をここまで畏怖し、嫌悪せざるを得ない存在。


 一体、なんだろう、茉薙ってどう言う奴なんだ?


 命が4っつって、意識が2つって、どう言う事?


 意味もわからず、真意も知れず、ただ僕はそこに広がる様に発せられた言葉と雰囲気だけで得体の知れない恐怖を感じてしまう。


 僕は一体、誰と戦っているんだろう?


 もしかしたら、何と戦っていると言い直した方がいい状況なのだろうか?


 でも、あれって人間だよね、人だよ、間違いない、剣を合わせた時は間違いなく人の気配がしていた。絶対に間違いないよ。


 明らかに剣や棍棒なんかを装備したモンスターではないんだよ。


 その時、僕は瞬間的に、まるで発作みたいに雪華さんのお母さんの言葉を思い出したんだ。


 『葉山 茉薙とは戦うな』


 まるで、念を押す様に、あの時ラボで僕に告げた言葉だ。


 そして、あの時は何となく僕は雪華さんと一緒に聞いていたんだけど、だから、僕らに言った言葉って受け取っていたんだけど、ここに至って思うのは、あの時の雪華さんのお母さん、その言葉を僕にだけ言っていた気がしているんだ。


 それにはさ、きっと理由があってさ、その中身なんてわからないから、得体の知れないこの茉薙と言う存在に対して、どうしてか周りの空気が冷えて行く感覚がしていたんだ。


 戦慄する僕を見て、まるで雷みたいな声が響く。笑う声、大笑いする声。


 「おいおい、そんなに嫌うなるなよ、傷付くだろ、こいつが」


 茉薙は剣を持ったまま、自分の胸に手を置いてそう言った。


 そして、


 「それにさ、俺はお前たち親子の為に造られたんだぜ、お前もさ、全く無関係って事じゃないんだよ」


 間違いなく僕に向かって言った言葉だ。でもというかもちろん僕にはそんな覚えもない。だから彼の言葉になんの言葉も継げる事ができない。と言うか、正直、単純に腹が立って来た。


 それに比べたら、こいつ、本当に気持ちよさそうによくしゃべる。


 もちろん、勿体つけて、僕の知りたい情報なんて言いもしない。


 じゃあ、いいよ、力づくでいくから、って思う僕の意識にどうしてか制動がかかる。


 この不思議な感覚を理解できないまま、再び僕と茉薙は、斬り合うために接近するんだ。

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