第198話【一つの体に魂の部位が4個体】
茉薙からのオープニングな攻撃は2連。
事も無く、弾き返して、警戒した茉薙はそのまま一旦後ろに下がる。
こいつ、結構足の運びも良い、追えなかった。器用なバックステップで下りながら、「おお?」とか言っていた。
それになんか軽いんだよなあ、誰だろう、以前戦った誰かに似ているのかもね、割と身近な人物にこんな奴いたような、いないような、それは兎も角、茉薙はその戦闘スタイルを公然と僕らの前に晒した。
両手にそれぞれ剣を持っている。所謂二刀流って形で、連撃も、同時も可能な器用なタイプの剣士みたいだ。その上物凄く早く。
動いたと同時に一撃というか4連入れて来た。その4連ってのがさ、事実上は2連なんだけど、刃の当たる位置とこっちの当たる箇所を調整して、一振りで2連の合計4連って形になる。それをいきなり入れて来た。
どれもが致命傷の一撃だよ。
それに、なんか茉薙の持っている剣、どっかで見たきが、どこだろう?
「すごいな、おまえ、致命傷とまではいかないけど、4連目は浅くでも入りそうな物だったんだけどな」
と茉薙は言う。
普通に褒められた。
そして僕も思う。
よくあんなの凌げたなあって。
攻撃もそうだけど、あの武器も相当にイヤラシイ形をしている。
見た目に同じ長さ同じ大きさなんだけど、微妙に違うんだ。多分、わざと錯覚する様な作りになって、間合いを曖昧にして相手の感覚を狂わす様な形をしている。
あれ? それって、その系統の武器、最近どっかで見たな。
とか、のんきに構えてる時じゃなかった、そんな隙を逃さず茉薙の攻撃が来る。
なんとか凌いだ。
攻撃してくる茉薙、そしてそれを凌ぐ僕、ちょっと焦ったけど何とかなった。
「ああ、そうか、一回見せちゃってるもんな」
と茉薙は納得したみたに言う。いやいや、ほぼほぼ初対面みたいなもんでしょ、この前はすれ違っただけだし。でも本当に残念そうにいうんだよ。ガッカリしたって感じで。
お門違いの物言いに、何言ってんだ、こいつって表情になってしまう、一回離れる茉薙を見ると、フードに隠されて見えない筈の顔が、僕には笑っている様に感じたんだ。
「なんだよ、驚いた顔して、俺は初めましてだけど、俺の中のアイツとは仲良しじゃんかよ」
? 本当に何を言ってるんだ、こいつ????
ダメだ、混乱して来た、僕とこの、茉薙の茉薙以外の奴が会ってるって? ああ違うや、茉薙以外の茉薙ではない誰かと僕が合ってるって?
あ、同じか、ダメだ、混乱して来た。本当にこいつ、何言ってもるんだろう?。
こう言う時って、少しでも有利に戦いたいから、そんな事を言われたら、僕の中にこの茉薙の情報があるって思い込んじゃうから、戦っていても思考はその事について捉えられて錯綜してしまう。
一旦仕切り直しだ。
僕は距離を取った。茉薙の方は追っては来ない。その場に立って、僕の様子を観察でもする様に、ただ佇んで、まるで積極的に攻撃の手を緩めてくる。
一体何を考えている?。
多分、僕の焦りは奴の思うツボだって思うけど、でも、確かに奴の言う通りで、僕はこの茉薙と言う奴、いやコイツじゃないな、でもそれに近いヤツと戦っているって、そう思うんだ。いや、確信している。どこでだっけ? 最近って気がするんだ。
「ほらほら、しっかり思い出せよ」
って顔を見なくても分かるニヤついた言い方をしてくる茉薙にちょっとイラッとした。
一体、何がどうなってる?
「のう、狂王よ、これは一体どう言う事じゃ?」
僕が下がった場所に、花嫁さん、あ、リリスさんだった。そのリリスさんがいて僕にそんな風に話しかけて来た。
茉薙は動かない。
「どうなってるって、なんの事?」
何かヒントになればって思って問い返してみると、
「ああいう人間は初めて見たが、あれは、モンスターではないじゃろ、人なのだろ?」
とリリスさん。
間合いを取って適当な距離で佇む茉薙を見てみると、どう見ても人だよ。と言うか流石にこの雰囲気は人間だよ、好意的って言っても流石にモンスターであるリリスさんとは全く違いっていて、静かに僕に向けて来る敵意以外は、人間その物ってか疑う余地もない。
「一つ、二つ、いや、三つ、四つ」
とリリスさん、何かを数え始めた。そして、
「目の良い子、お前にはどう見える?」
いつの間にか隣に来ていた相馬さんに尋ねると、相馬さんは既に『彩眼』だったっけ? いろんな物を色別に識別できる便利な眼、それを開いている状態で、相馬さんは言う。
「はい、4っつです」
と言ってから、
「でも2つは弱いです、もう全体と同じ色になりかけてる。はっきりとているのは2つ、今、秋先輩に向かい合っているのが1つ、あれ? この色、嫌がってるのかな?、いや怖がってる?? おかしな色をしたのが1つです」
一体、なんの話なんだ? 余計に混乱してしまうよ。