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第194話【原因はやっぱり八瀬さん】

 まるで、周りに落ちているかのように、あたりを見回し、特に床とかを見渡して、此花さんは最後をこう綴った。


 「そうですね、オチ、オチですね、オチいりますよね? えーっと、そうですね、強いて言うなら『バカのくせに魔法使ってんじゃねーよ、ってとこでしょうかね…、えと、お後がよろしいようで』で、どうでしょうか?」


 いや、どうでしょうか、って言われてもなあ、あの九首さんって人、今だに苦しんでいるみたいな感じだし、あ、蒼さんが首をうなだれている。やっぱり自分の元を離れたとは言え、分家の人をやっつけるってのもそれなりに気持ち的に来るものがあるんだろうか?。ってよく見ると笑うのを我慢して、こちらに顔を向けないようにしているだけだった。


 人望ないな、九首さん。


 それにしたって、あの九首さん、なんの魔法で倒したんだろ?


 「あれは、『苦痛』の効果じゃな、この導言を使える人間がいるとは」


 そう言ったのは花嫁さんだった。


 「本来は、モンスター側の導言じゃよ、この道を教える者などいないと言うことは、この娘、自分で体得したのだろう、どのような方法かどのような手段かは予想も想像もつかんが、ここまで魔法をモノにした人側としては今までなかったぞ、これは嬉しい誤算じゃ」 


 花嫁さんは恍惚の表情でそう言った。本当に嬉しそう。モンスターの魔法って、そう言うの体得されるのって彼女達の立場に立ってみるとあまりいいこととは言えないんじゃないかなって、そんな気がしたんだけど、そうじゃないんだね。


 でもさ、ちょっと不思議なんだけどさ、モンスター側である『悪魔の花嫁』さんが、人の、ダンジョンウォーカーの能力を素直に褒めるって、モンスター側に立ってみれば強力な魔法も戦闘能力も歓迎すべき点じゃないのに花嫁さんは喜んでいるんだよ。


 今だって、まるで慈しむみたいに此花さんを見つめている。


 なんだろう、僕、こう言う視線を感じたことがあるなあ、って思ってちょっと思い出すと、そうだよ、春夏さんが僕を見ているときの視線な感じがする。たまに視線を感じて目を合わすとあんな目をして微笑んでいる時があるんだ。


 悪魔の花嫁さんも春夏さんも美人さんだからね、そう感じる雰囲気とかは同じみたいで、概ねは僕の気のせいかもしれないけどね。


 それにしても、凄いのは此花さんだよ。会ったばかりの時に土岐が言っていた『いないものと思ってくれ』とか言ってたけど、とんでもない、こんな凄い人を土岐は言ったい何を見てそんな事を言っていたんだろう。


 「ぜんぜんヤルじゃん、此花さん」


 と言うと、土岐は


 「正直、俺も彼女のスキルの事は驚いている、彼女は基本、あまり戦わないんだ、怪我した人がいると、程度にもよるけど、割と率先して治してくれるくらいの印象しかなくて、それ以外は、部屋の隅で笑っているって印象しかない」


 そうなんだ、いつもの此花さん知らないから僕としては今の彼女が普通だと思っているんだけど、クロスクロスではそうではないようだ。


 感心する僕なんだけど、ちょっと気が付いたんだ。


 あの、この広い部屋、『厭世の奈落』の隅っこにある、打ち捨てられた宝箱の残骸の山の中にある例の『召喚箱』つまりは、僕らの呼び名だと『金色宝箱』なんだけど、なんかね、ちょっと位置が変わった気がするんだ。


 気のせいかな。


 だよね、宝箱が自分で動く訳ないよね。


 と、思いつつ、ジーッとそのノッポな宝箱を見つめていた。


 「何してるんですか?」


 僕のそんな動きが怪しく見えたみたいで、相馬さんが声をかけてきた。


 「いや、ちょっと、今、あの宝箱が動いたような…」


 だって、自信なかったから、そんな言い方になってしまう。


 「え、どれですか?」


 僕と同じです視線になって、相馬さんはその宝箱を見つけてみたいで、


 「ミミックとかですかね? こんな浅い所にも出るんですね」


 ああ、そう言えば、あったあった、確かダンボールミミックに春夏さん酷い目に合わされていたから、あるね、ミミックって言う線。


 「なんだ、どうした? 真壁」


 土岐も来た。


 「なんか、あの宝箱が動いたような」


 土岐はこの時初めて、金色宝箱の存在に気がついたようで、


 「なんだ、八瀬の『召喚箱』じゃないか」


 ん、今、八瀬のって言った?


 「ああ、そうか、まだ言ってなかったっけ、でも、これはなあ、一応、黙っておけって言われているからなあ、でも、まあ、言った所で実害はないけどな」


 と、歯切れが悪い。


 「いいから、勿体つけてないで言えよ」


 思わず、ちょっとイラっとしちゃったよ。すると土岐はさして問題なさそうに、 


 「八瀬のスキルだよ、あいつ、あの箱をつまり『器』を何処にでも出す事が出来るんだ」


 ええ? あれってスキルだったの?


 「って言うか、鉾咲さん倒せば、強いモンスターを召喚するあの箱の問題、全面的に解決じゃん」


 思わず本音出ちゃった。


 「お前な、俺にとって一応の身内で姉同然の人を倒すとか言うなよ、まあ、そうなんだけどな」


 真希さんに目を付けられる訳だよ。


 じゃあなに? また今回の事件の原因はクロスクロスって事?


 いや、だって、ここに来て、あの金色宝箱だよ、無関係な筈もないじゃん。


 本当にいい加減にして欲しいよ。

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