第183話【騎士は眠っている】
カラフルで綺麗だよ。種類もすごい数あるし、惜しげも無くあれだけのカラフルな彩りって、春の大通り公園か、ホームセンターの除雪道具売り場かってくらい見ているだけで飽きない。それに、その選定す人の目は、まるで武器や防具を選ぶダンジョンウォーカーの目そのものなんだよ、ダンジョンでどんな敵にどんな形で挑むか、と同じ様に、どの様な雪にどんな風に挑むかって言う形は、相手こそ違えど根底に流れているものは一緒だと思うんだ。
それはともかく、
「つまりは、目的は合致するということですね」
と僕は花嫁さんい確認する。
「そういうことじゃ」
花嫁さんがシンメトリーさんにどの様な用事があって、もしも見つかった場合の跡の事とか考えなくていいのかな、とは思うけど、今はシンメトリーさんの発見を優勢したい。
見つけた後の事はまた後で考えればいい。
少なくとも、今はシンメトリーさんを失くしたという花嫁さんと僕らの目的が一致する以上、彼女の申し出を断る理由なんてない。
それでも、一応、
「いいかい? 相馬さん、鴨月くん、そして此花さん」
3人とも快諾。此花さんに至っては、親指を立てて、力強く賛同してくれた。
土岐は寝ているのでいいや、多数決的にも土岐の一票が現時点で決定を左右する事はないしね、起きたら事後報告をしておこう。
それに、シンメトリーさんを探すってこと自体は変わらないから。
じゃあ、定石としてどこをどう歩いたか聞いてみることにした。
つまり、花嫁さんがシンメトリーさんと一緒になって、いなくなってしまったところまでのルートを逆順で辿って見るのが1番確実だから。そんな事を相談して、出会った場所を相馬さんに検証してもらって完全に話が合致するので、僕らは探索を再開しようとする
「そうだな、ではついて参れ」
とその事については賛同してくれる花嫁さんだけど、
「ん? どうした?」
と僕の懐疑的というか、若干いたたまれない気持ちというか、そんな物を察した花嫁さんはそんな風に聞いて来る。
「いや、その、そのままなのかな? って思って」
「そのままとは、どのままなのじゃ?」
「土岐を抱いたまま行くんですか?」
僕のそんな言葉に、花嫁さんは薄く微笑んで、
「気持ち良さそうに寝ておる、起こすのは気の毒じゃ」
と言った。そして、
「さして重くもないしな、それに良い寝顔だとは思わぬか?」
ってお姫様抱っこした状態で、土岐の顔を見える様に僕の方に向けて来た。
うん、まあ、確かに。
相馬さんに至っては「いいな、なんか羨ましい」とまで言っていた。
「では参ろうぞ」
すっかり、後から現れてしまった『悪魔の花嫁』にペースを奪われてしまう形になったけど、僕はそのことについて心配はしていなかった。
それよりも寧ろ、このままあっさりシンメトリーさんが見つかって、じゃあこれで、となったときに、このまま土岐がお姫様抱っこされたまま連れていかれる様な気がしてならないんだ。
変な心配が増えてしまって、どこかのタイミングで土岐を取り戻して置かないと、単純にシンメトリーさんと土岐の入れ替えになってしまうなあ、って心配が僕の心を支配していた。
でも、本当に土岐の奴、赤ちゃんみたいな無垢な寝顔なんだよなあ。
そこだけ考えると、それはそれで幸せなのかもって、ある意味怖い事い考えを払拭するために、頭を振って物理的に追い出そうと試みる僕は軽い立ちくらみを感じていた。