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第179話【あれ? 危険を感じない既視感】

 仕方ない、こっちでなんとかするしか…。


 そう思った瞬間に、彼女、『悪魔の花嫁』は僕の傍にそっと寄って来た。本当に、当たり前のようにススって、こっち来た。


 早くない、しかも隙を狙われたわけでもない、だけど懐に入り込まれる。


 「だから、待てと言っておるだろ」


 そのまま僕の正面に回り込んで、顔を付き合わせて言う。多分、体格も身長も春夏さんと同じくらい、目の高さが一緒だもの。


 「うお!」


 と焦って下がる僕。


 別に危険を感じたわけではない。


 ん? 危険を感じてないぞ僕。


 あれ? 例の遭遇感、全くないぞ。なんだこれ、ちょっとした既視感。


 一瞬だけど、僕はあの時のラミアさんの顔が思い浮かんだ。 


 しかし、ツノを隠した花嫁さんは、下がる僕に対して、追ってくる追ってくる。


 手を抜いているわけじゃないけど、僕の逃げ足についてくるなんて、ちょっとこのモンスター手ごわいぞ。


 それに、これだけ近いと、この人ってかモンスター、美人でグラマーで、距離が近い近い。


 「笑王、離れないと、魔法が打てないけど」


 と此花さんがのんびりと言った。ちょっと待って笑王って誰?


 「何を遠慮してるんだよ、刻んじまえ!」


 いや、まあ、そうなんだけどさ、この花嫁さん、僕の懐にに入り込んで、こともあろうかクスクス笑っているんだよ。


 本当に楽しげに笑っている。


 ああ、これって、ラミアさんと一緒だよ、最もこっちの方は敵意の無い悪意見たいな物を感じるけど。


 「仕方ねえな、俺が…」


 と言いかけた土岐が黙る。というか自身が吐いたセリフの後には息を飲んでしまう。


 「なんだ、今度はお前が踊りたいのか?」


 今、僕の懐でコロコロと笑っていた花嫁さんが、瞬時に土岐の目の前に飛んだ。


 と言うか、僕の目の前から消えて、土岐の前に現れたと言った方が正しい言い方かもしれない。僕が追えない、一瞬だけど同時に2人花嫁さんがいたみたいな、そんな特殊な移動な仕方だった。思わず、


 「土岐!!」


 って叫ぶんだけど、当の本人も、


 「え? あれ? はあ?」


 って状況を把握できない。それはそうだろう、僕のいたところから最短距離って動線を描いて、その速度がマッハだとしても、なんとか想定の範囲内、瞬間移動系のショートカットは想像だにしない。


 それにしても、いつまでも驚いてないで、剣くらいは抜けよ、とか思っちゃったよ。


 それでも土岐は、後ろにいる他のメンバーを守るために避けたり、引いたりはしないのは流石に『騎士』なんだな、とは思う。


 「ほら、来てやったぞ」


 花嫁さんにそう言われる土岐。


 「ふざけてるのか、この女!」


 と怒る土岐をまるで無視して、土岐の後ろにいる他の3人を見て花嫁さんは、


 「お、さっきのヒヨッコたちか、今のお前たちの実力では、怖くてたまらんだろうに、よく来たな、偉いぞ」


 と相馬さんと鴨月くんに向かって言う。その目はまるで良い事をした子供を讃える様なそんな形の笑みを浮かべている。


 花嫁さんが一瞬その視線を外しているスキを突いて、土岐は、剣を振るった。隙を逃さず、いい攻撃だけど、よそ見をした瞬間の隙をついての攻撃って、それは騎士としてはどうだろうって思う僕だったりする。


 結構いい形で剣を振り下ろすものの、


 「だから、待てと言っておる」


 と土岐の速度の乗った振り降ろされた剣を無造作に掴む。抜き身の刃を柔らかそうな手で無造作に受けて、そして握る、で、離さずそのまま固定。


 土岐の剣は引いても押してもビクともしない。改めて感じるけど、この綺麗な花嫁さんは、まごう事ないモンスターだね。見た目も大きさも限りなく人に近い、と言うか可憐で儚げで綺麗な女の人に見えるから余計にたちが悪い。


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