第171話【重い責任はみんなで分けるよ】
彼らの実力を今の僕の実力だとして、相手のハイエイシェントって言う相手の能力を考えた場合、無理しなくてよかった。
多分、地力差的にも、抵抗しても結果は変わらなかったと、今の時点での予測として思う。
僕だったら、「ごめん、失敗しちゃった」で済ましてしまうなあ、済むとか思わないけど、そう言って収めちゃうなあ。
だって無理じゃん。
こんな事を言い出したらいけないんだけど、僕ら学生だよ。
中学生。
そんな年端もいかない子供の僕らがさ、仕方がないとは言え他人の命を預かるような仕事をしているって、どう言う事なんだろうって、冷静になると思うんだよ。
そりゃあ、確かに北海道ダンジョンには年齢制限があるから、大人が入れないから、ここでモンスターが再び札幌の街に吹き出さない様に僕ら子供が頑張らなきゃってのはわかるんだけどさ、それでも僕は、自分の双肩に北海道の安全が掛かっているなんて、それが世界の平和にかかわってるなんて大仰に考えるのはわかるけど、それだけって考えるとちょっと身が保たないかな、特に自分の命を賭してまでって言うのはちょっと大袈裟かなって考えている。
助けにゆく人が自分の命を掛けてまでってのは違うと思うんだ。
ほら、愛媛県の有名な諺で、以前、真希さんが言っていた『ミカン取りがミカンになる』って奴にほからならない。
ほら、ミカンを取りに行った人間がミカンになちゃったらミカンが取れないじゃんって話らしい。
意味が今一つわからないけど、北海道ではミカンとか取れないからその辺の事情はよくわからないけど、まあ諺なんてそんなもんだよ。
自分の身の安全を第一に考えて、それからの捜索活動だよ。本来ならこの事件に関わってしまった再び彼らの参加はちょっとなあ、って考えた筈なんだ。
真希さんて、僕に対しては遠慮もなく無礼で酷い人だけど、基本的にみんなには優しいからね。だから彼らの気持ちもわかっていて、じゃあ、僕をつけてみようって事になっているんだと思う。
つまりは仕事で失った自信は同じ仕事で取り戻すみたいな、その為には僕がつけられているって事なんだな。
『アッキーだったら、こいつらがヤケになってもなんとか止めるだろうな』って思われている気もする。あの時の『浅階層のジョージ』の時みたいにお任せされている感があるんがよ。
ダンジョンの安全と円滑な運営ってのがギルドの理念で、その中にあって重すぎる責任の前に相馬さんとか鴨月くんの心の負荷なんて僕に想像できる訳もないけどね。
ほら、僕なんて好き勝手にやっている一般汎用型のダンジョンウォーカーだからさ、お気楽そのものだからさ、それに比べて、彼らはまだ中学生って言うのに自分に課せられた仕事に対して躊躇も不安も無く毅然とした姿勢を持っているって言うのは凄く立派な事だと思う。
だからこそ、力にもなりたいって気持ちにもなる僕なんだよ。
相馬さんと鴨月くんの持ってる、その責任の端くらいは持つから、もちろん、一緒にいる以上、クロスクロスの二人にも持たせるからさ、ちょっとはその分担、こっちによこしてよ、って気分だったよ。