第170話【ギルドの構成員としての矜持】
此花さんが変な笑い声を混ぜながら、彼女の知る情報を開示、説明してくれた。
「フヒヒヒ、所謂、三柱神にもっとも近いとされている、おそらくはこのダンジョンに珍しく、一体のみ存在するモンスターです、フヒ、そう言えば以前、このダンジョンの浅階層に現れた、今はハイエイシャント・ラミアに分類された、混沌混濁の女帝『フアナ』も今はそう認識されてますね、フヒ、狂王は所縁がある様で、トラブルに愛されているんですねえ、フヒヒヒ、美味しいです」
いつの間にか、僕と土岐の間に入ってきて、僕らを見上げながら、そんな発言をする。大きなフードで顔までは見れないけど、若干覗いた輪郭は、どうしてか、形の上でだけなら完璧美少女、真希さんを思い出すくらいの均整なラインが見えた。もしかして彼女も美少女?
などと余計なことを考える僕に此花さんは説明を続ける。
「悪魔の花嫁とは、最高位のデーモンロードとの双璧を成すと言われている女性の姿をした階級上位2の存在と言われていいます、固有名詞がある筈ですフヒヒヒ」
この後、僕にはよくわからないけど、使ってくる魔法の種類とか特殊な攻撃方法とかも詳しく語ってくれる。
凄いよ、此花さんの知識。なんか小ちゃい版の角田さんを見てる見たい。
それに角田さんの場合、『あ、これは言わない方がいいですね』とか『知らない方がいいですよ』とかいちいち、ほんと一々持ったいつけるあの嫌味な言い方…、じゃなかった小出しにする配慮とかないから、全部開示してくれる清々しさがあるのも好感がもてる。いや、角田さんのナチュラルに人を子供扱いしてくる様な態度に時折、イラっとしているって事ではないよ、もちろん角田さんは凄いでしょ、なんたってヤンキー種最上位の魔法番長だからね。
へーって感心してから、此花さんに対して思ってしまうのはその情報ではなくて、この人今ひとつ掴み所がわからなくて、多分と言うか絶対にこの即席混成な騎士団を混乱させる為にいるんだって思ってたから。
所謂、戦力と言うよりペナルティ、桃太郎電鉄で言う所のキングボンビーまではいかないせいぜいプチデビルカードくらいの足かせくらいだと思っていたけど、いい意味で裏切られている気分だよ。
この博識の上に魔法スキルとかあるって言うなら、此花さん本当にクロスクロスの人なのだろうか?、ってちょっといい意味で疑ってしまう。
多分、至って常識人の土岐とこの此花さんって、ある意味クロスクロスには合わなくて僕の方に押し付けられたって感じがするね。なんか価値観の違いで思わず得したね、って感じかな。
「じゃあ、この『悪魔の花嫁』と遭遇して、死ぬどころか怪我もせずに帰ってくれるなんて、君達も凄いよ」
と掛け値なくそう言った。
そして土岐も此花さんもそれには同意してくれた。
「でも…」
となかなか短く歯切れが悪い。そんな相馬さんは鴨月くんを見てため息を吐く。
その鴨月くんも、仕方ないね、って顔で、
「でも、真壁さん、僕らがついていながらシンメトリーさんを攫われたって事実は変わらないんです」
やっぱり2人とも責任を感じているんだな、こんな時になんだけどこの2人っていうか雪華さんとか薫子さんとかもそうだけど、本当にギルドの人たちって、自分の仕事に責任を持ってやってるよなあ、って思うんだ。