第169話【ハイエイシェント級モンスター『悪魔の花嫁』】
この2人とも今も中階層だけど、すでに深階層に近いところまで潜って行ける実力があるダンジョンウォーカーなんだ。近く深階層に行けるとはそれぞれが自覚していたから、その所為の油断はあったかもしれないって言ってる。
鴨月くんの方はよく分からないけど、確かに相馬さんなら、今の落ち込んでいる状態はどうか分からないけど、薫子さんとも勝るとも劣らないくらいの実力はあるから、それは自惚れとかじゃなくて、冷静に自分の実力を判断できていると思う。確かに相馬さんは強いよ。
中階層の実力以上のものはあると思う。エルダークラスとかに手をださなければいけるとは思う。
しかし、その時にそこにいた3人、つまりシンメトリーさんはじめに相馬さん、鴨月くんが思いもしなかった事件というか事故が起きてしまう。
相馬さんも、鴨月くんも2人が口を揃えて言ったんだけど、その場所に現れたのが。
『悪魔の花嫁』って言われる、たぶん、種族で言うところの『悪魔』でも屈指の実力のあるモンスターが現れたんだって。
つまりは、エルダーでも現れたら、っていう所のエルダー級が現れてしまったって事らしい。
その『悪魔の花嫁』って言われるくらいだから、女性型の高等悪魔は、いきなり現れて、シンメトリーさんの耳元で呪文(?)を囁くと、そのまま彼女を連れて言ってしまったんだって。
もちろん、相馬さんたちだって、黙って見ていたわけじゃないよ。すぐさまシンメトリーさんを取り返す為に反撃を開始するんだけど、ここで、『全ての攻撃』と『行動』を封じられて、そのまま黙ってシンメトリーさんが連れて行かれるのを見ているしかなかったって話らしい。
「それは無理だ、相手が悪すぎる」
と土岐もそんな風に同情気味に言った。
「僕らの情報では、『悪魔の花嫁』はエルダーよりも上位の『ハイエイシェント』クラスに分類されている、そんな奴らと、中階層レベルのダンジョンウォーカーが対峙して、生きているのが奇跡だよ」
『エイシェント』とか『ハイエイシェント』って、僕も最近耳にするようになった。
ギルドは、深階層に常駐する戦闘力の高い数種類のモンスターの総称として、『エルダー』って呼んでいるけど、その中でも特に能力がずば抜けているのを『エイシェント』
とか『ハイエイシェント』とかって呼び方して区切っている人たちがいる。
今まではあくまで同じ種のエルダー級の中での強い弱いって言う話だったんだけど、最近の研究ではそうではなくて、モンスターの中でもある一定数のエルダーの中にさらに希少数、ほんの一体か二体、明らかに能力的にずば抜けているモンスターがいるのがわかってきたらしい。
情報の出元はわからないけど、深階層ではそんな呼び方が一般的なんだって。
ほら、この前のラミアさん、浅階層で一緒に戦ったラミアさん。
実は彼女も『ハイエイシェント』クラスで、このダンジョンに中に唯一無二の存在らしいよ。確かギルドの誰かが言っていた。麻生さんだったかな。
僕もこう言う情報が入ってくる様になったのは、中階層のダンジョンウォーカーとはいえ、確実に深階層に向かっているからなんだろうな、ってある意味、感慨深いものはあるんだよね。
こんな時だけど、でも、まあ、深階層は確実に僕に近づいているなあ、って実感するんだよね。