第168話【もう、まるっと任せてよ】
僕はさ、普段しない腕なんか組んで、もう、今回の事件はともかく、相馬さんと鴨月君の事なら何でも知ってるから、絶大に信頼してるから、ってくらいの気持ちで言う。
「相馬さんは、きっとできる事全部やっていると思うよ、だから、ここから先は僕も参加して、みんなで助けるからさ、シンメトリーさんを探そうよ、絶対に大丈夫だから、絶対に彼女は無事だから、それは僕が保証するから、早く探しに行こうよ」
もちろん何の根拠もない。絶対に無事って言い切れない。
でも、だからと言って絶対に無事じゃないって事だって言い切れない。ここで大切なのは気持ちだから、だから自信満々に僕は言った。
すると、相馬さん、
「そうかなあ」
よし、乗って来た。
でも、半信半疑。それでもいいよ、少しても相馬さんの重くなった心を軽くできるなら、僕は嘘つきでもいいんだ。ほらほら、もっとおいで、明るい可能性のある方に行こうよ。
「だから僕がいるんだよ、大丈夫、きっとうまくいくから」
って言ったら、その表情から強張りが抜けて、上がって硬くなっていた相馬さんと鴨月くんの肩がスッと下がるんだ。そうそう、力抜いてね。もうこっちに全部預けちゃってよ、って気分で聞いてみた。
「じゃあ、さ、詳しく話を聞かせてよ」
僕は、相馬さんと鴨月くんにそう言って話を始めてもらう。
「器用なもんだな、それも『王』と言うなのスキルの効果か?」
側で見ていた土岐がそんな事を言い出す。いいから、いまは余計な事を言わないで、と睨み付けると、察した様に引っ込んでくれた。いい感じで空気を読む人だな、って感心していると、相馬さんは、最初こそ辿々しく、その経緯を話してくれた。
さっきも言ったけど、6時間前くらいの話。
この話は実際、僕も絡んでいた事だった。僕と言うか、もともと僕がギルドに持って行った話。事件の報告から始まっていた。
例の『金色宝箱』つまり、召喚箱の話だった。
前々からこの、深階層のモンスターを何処にでも呼び出す事ができる召喚箱はギルドで問題視されていて、色々な下調べが済んで、実況見分として事件のあった場所での調査が始まろうとしていた矢先の出来事だった。
この事件と事象について、先行してシンメトリーさんが調べたいと言い出したらしい。
ギルド側としてはその申し出を渋ったものの、当初、真希さんか麻生さんが着いて行くって事で話はまとまったそうだ。
しかし、その計画を全く無視して、シンメトリーさんは行ってしまう。
その近くにいたギルド構成員をに2名連れてシンメトリーさんはダンジョンの問題の場所、つまり、僕があのクロスクロスと騒ぎを沈静化した中階層のあの場所に行ってしまう。
それはどのような理由があって、何を考えていたかは分からない。でも、その場にいた2名、相馬さんと鴨月くんを連れ立って、シンメトリーさんは出発してしまったんだ。
相馬さんの話によると、その時のシンメトリーさんは相当に慌てていたって話なんだ。一応、その時に鴨月くんは止めて、もちろん相馬さんも一緒に、行動を起こす前にも何とか思いとどまって貰おうと頑張ってはいたんだが、結局彼らの願いは叶えられずに、一緒に中階層に出発するという選択肢を選んでしまったんだ。
その時、相馬さんにしても、鴨月くんにしても、まあ、中階層だしって、言う油断もあったんだって、それは鴨月くんも言っている。