第167話【壁も失敗も後悔も成長してる証だよ】
僕らは、4丁目ゲートから出て、大通公園をゆっくりとした足取りで、途中で、僕以外は装備の点検を行いつつ、7丁目ゲートに向かって歩いていた。
中階層まで前に使ったエレベーターを使おうって話になったんだ。
そんな僕の後ろをトボトボ歩く相馬さんと鴨月くんなんだけどさ……。
本当に落ち込みっぷりが半端なくて、ああ、もうどう声を掛けたらいいかって、さすがの僕も迷うんだよね。
そんなに気にすることでもないんだけどなあ、って僕は思うんだよ。
結局、挫折って、到達点の一種で、成長って、それに対する障害ってのは人によるけど、割とそれこそが成長の証明になってる場合があるわけで、だから、相馬さんもそれほど落ち込むべきではないのになって思うんだよ。
つまり、伸びてる自分が、その問題にぶち当たった事について、抵抗を感じる前に、この問題が、障害が目の前にある事に付いて、人は喜ぶべきなんだよ。
僕なんて、今じゃ、自分がいつ伸びたのかわからない時に、母さんがボキって折ってくれるんで、その瞬間に『ああ、伸びてた僕』ってそれで気がつく事がほとんどで、むしろ折ってくれる事が前提で成長してしている様なもので、折られないと、還って『え? 僕って成長してない?』って不安になるくらいで、しかも折った後、しつこいくらい踏み潰してくれるから、すっかり平たくなって、何処が主幹で何処か幹なのかわからないくらいの多層構造になっていて、あまつさえハニカム構造みたいに頑強になってしまっているから、もう『折れる』とか言う問題じゃあないけどね、寧ろ畳まれるに近くなっている気がする。経過を考えるとあまりいい事じゃないけど、散々悲惨な目にあった僕だけど結果を考えると良かったとは思っているよ。
それでも、それなりに優秀な人間が挫折するってのは大変な事で、真壁家の長女事、喜耒薫子さんが、何が原因で落ち込んでいたかは知らないけど、立ち直るまで相当時間がかかったって言ってた。
曰く現実を現実の物と認識するのと視認するのと、受け入れるのって、それなりの覚悟が違うらしい。
だから、相馬さんのこの落ち込みっプリってのは彼女がいかに優秀だったかってコトで、それなりの高さから落ちないとこうはならないって証拠でもあるんだよなあ。
だからって、僕みたいなノービスで主だった戦闘スキルも無い僕がさ、複合的にスキルを持って覚醒している、スカウト組の中でもエリートクラスの、更に、スポーツ有名少女として、かつて全国区だった程の身体能力の持ち主に対して一体何を言えばいいのかって話だよ。
そんな相馬さんは、泣きべそかきながら僕をじっと見つめてる、なんかもういたたまれないんだけど、
「何も言ってくれないんですね」
って言われる。
うーん、ひとまず。
「気にしないで」
一体、何が起こっているか全くわからない僕としても、とっても無責任な台詞なんだけどさ、多分、これしか言いようが無い。
「気にしますよ、だって、私の所為なんですから」
「そうなんだろうけどさ、でも仕方なかったんだよ」
何がどう仕方なかったか今ひとつわからないけど。もうこう言う形になってしまっているんだから、過去を振り返っても仕方ないじゃん、ってなるよね。