第165話【法の執行者シンメトリー】
さて、今回の緊急招集の目的に付いてだけど、そのお話は、つい半日前ほどに遡る。
今回の問題、つまりシンメトリーさんが行方不明になったのは、今からたった数時間前という事なんだ。
その時、ギルドの構成委員である、相馬さんと、鴨月くんはこの時、ギルドの用事で学校を公休として業務に当たっていた。
ギルドの構成委員って、こう言った場合には公的な理由として学校よりもダンジョンを優先する事が認められているんだ。
かつてこの札幌市を中心として起こった大災害、『ブローアウト』、ダンジョンが外の世界に漏れ出す現象なんだけど、そのダンジョンがある北海道ならではの大災害が二度と起こらない為に、またその兆候をより早く察知できるように、あらゆる事柄からダンジョンが優勢されると言った形が、ギルドと国や、道、市の行政の間でできている。
つまりは、北海道民の安全が優先されているって事なんだ。
大きな目で見ると、それは全人類の安全って事になるから、そりゃあ優先されるよね、って事になるよね。
もちろん、学生の本分は勉強なわけだから、その辺は考慮されて、ダンジョン関連で学校を休むと、学校から『課題』と言う、授業に出て勉強した相当の内容を家で学習できる質と量の素敵なプレゼントを頂ける。
時として、休みを取ってしまった生徒が1人で学習するには負担が大きすぎると判断された場合は教師を派遣してもらえるらしい。
こんな形でダンジョンウォーカーはバックアップされている訳なんだけど、まあ結局勉強の事だから、その生徒によってやっぱり得て不得手はあってさ、その為に、こんな日常の業務の為には学校を休まざるを得ない場合は、それなりの成績優秀者が選定されるみたいなんだ。
つまり、学校の成績が悪いとギルドは学校を休ませないって事だね。
そんな対応になっているので、自然とギルドの構成員は『成績優秀者』が多い、というより、勉強の出来る人しかいないと言っても過言ではない。
僕の知っている限りでは、今僕の家に住んでる喜耒薫子さんとか、常にトップな成績だしね、一体、いつ勉強してるんだよって、くらい毎日、ギルドと家に帰ってからは母さんの手伝いとかね、偶に、教科書とかをパラパラ捲っているなあ、ってくらいでトップだよ、トップ。
一回、ちょっとそのことを話した事があるけど、思わず、「ちょっと卑怯じゃない?」って言っちゃったら、薫子さんは真剣に「お前に言われたくない」って普通にキレられた。そりゃあ今まで見た事ない勢いで言われたんだよ。
酷くない? それともなんのかんの言っても以前の、あの初対面の時に相当に手を抜いて相手したことを今もまだ恨んでいるんだろうか?
話は逸れたけど成績の良いダンジョンウォーカーしか、公休取れないって事らしい。
だから、こう言った公休を取る人って、ある程度決まった人になるんだって。
そう言う意味で、鴨月君と奏さんって、成績は上位の人で、特に鴨月君は僕も知ってるけど、概ね学校の成績はトップな人だ。同じ学校だから、知っていると言うか春夏さんがそう言っていた。
そして、スポーツ少女で勉強はイマイチって本人が言っているらしいけど、奏さんも成績いいんだって、一緒に住んでる雪華さんのバックアップもあるかららしいけど、今も成績はぐんぐん伸びているらしい。
だから、ギルドの新人枠でいうと、この2人って概ねペアを組まされて、日中帯の業務に当たる事が多いって話だった。
そして、今日もそんな彼らが、シンメトリーさんの業務に付き合って、ダンジョン中階層に潜っていた訳なんだけど、そこで事件は起きてしまった。
シンメトリーさんって、シリカさんとかカズちゃんとか同じで、ギルドでは重要なポジションにいて、彼女が行う業務は安全管理上、なくてはならない人らしい。
彼女には彼女しかできない仕事がある。
つまりは、シリカさんの様に、このダンジョン事態の卑怯なくらいのマップ把握能力とか、カズちゃんみたいに、例えばどんな状態でも死んだ人間、失ってしまった人間を蘇られる能力とかね、それに相応する能力を持っている人らしいんだ。