第164話【混成騎士団、出発】
僕のマイルドな辛辣な言葉に、どこか照れくさそうに土岐さんは言う。
「すまない、八瀬が迷惑をかけているようだな」
迷惑なんてもんじゃないよ、この前は後始末も押し付けられたよ、って思うところをこらえて、
「なんか、鉾咲さんてやりにくいよね」
と更にライトでマイルドに言ってみると、
「八瀬は八瀬で、仲間のこととかこのダンジョンのことを考えて動いているんだ、悪く思わないで欲しいって言うのは俺の勝手だけど、今回の事件、俺は君に協力するよ」
そして、
「僕はこれでも複合スキル、クラスでいうところの『騎士』の名を持っているんだぜ、僕がリーダーになると、僅かだがパーティー全体にいい影響を及ぼすことができるんんだけど、ここは『王』のスキルを持つ君がリーダーシップを取った方がいい気がするんだ、それに修羅場とかをかいくぐっているって聞くしね」
一体、どこでそんな話を。
スキルはともかく、
「いえ、僕なんてどこにでもいる普通のダンジョンウォーカーですよ」
って言ってみると、そこは真希さんが突っ込んでくれる。
「まあ、普通のダンジョンウォーカーに『闇の軍団』はついてないけどな」
と言われて思い出す。
そうだ、蒼さんに連絡入れないと、でも僕まだ蒼さんに電話番号とか聞いてないしなあ、「困ったなあ、蒼さんになんとか連絡取らないと」
って思わず声に出した瞬間に何かが僕の目の前に落ちて来た、と言うか蒼さんだ、蒼さんがどこからともなく降ってきた。
「お屋形様、蒼はここにございます」
うわ! びっくりした。
「ああ、よかった、ちょうど連絡を取ろうかと思っていたんだ」
「電話など、蒼とお呼び下されば、どこにもいようとも馳せ参じます故に」
まず、何はともあれ、あの程度の声で答えて駆けつけられる所に気配を微塵も見せないで潜伏しているのが怖いよ。桃井君の影の中からヌーっと出てこられるのも怖いけど、今の登場の仕方も相当に心臓に悪かった。でもあと数回やられたら僕、きっと慣れてしまうんだろうとは思う。
ひとまず、すぐに突っ走ろうとする蒼さんに色々とお願いして、僕らは僕らで出発しようと思う。
蒼さん達が先行して出発してから、土岐さんが、
「では我ら『混成騎士団』も出発しよう」
いつの間に名前が決まったんだろう。
「騎士と若き王がいるんだ、これ以上の騎士団はないだろう?」
まあ確かに、
「それにだ、僕らはダンジョンウォーカーとしてはの目的はバラバラだろう、故に混成となる、俺はこの時、この事件の限り、王として君に忠誠を誓おう」
と僕の胸のあたりを拳でトンと突いて来た。
「気にしないでくれ、俺は誰かに忠誠を誓うと、能力が軒並み上がるんだ、それに君は王様だからちょうどいいじゃないか」
って言う。
「じゃあ土岐さん、お言葉に甘えて行きましょうか」
すると土岐さんは、
「さん付けはやめてくれ、俺の方が年上だから気を使っているんだろうが、どうせ1歳か2歳しか変わらないだろ、土岐でいいよ、その代わり僕も君を呼び捨てにしたい、いいだろう?」
もちろんだよ、ひとまずうなづいて、僕らは4丁目ゲートを出る。
なんかとても驚いている。
だって、クロスクロスにこんなマトモな人がいるなんて本当にびっくりだよ。
それだけに土岐、組織の中で浮いていないだろうか心配になる。
ではひとまず混成騎士団、出発って事で。