第162話【偽りと嘘と真実】
離れてゆく春夏さん。なんか心も元ないけど、いや僕の心境としてだけどさ、春夏さんたちはクロスクロスの中にいるけどサムライの春夏さんに対して、最近の薫子さんって、『王』が板についてきているから安定感が半端ないグループになってる。
角田さんはギルドと、なんか魔法使いっぽい集団で深階層に向かって行った。そうだよね、角田さんっていつも僕らと一緒にいてくれるけど、本来は深階層に行ける人なんだよね。そして桃井くんはと言うと、
「秋様、僕も出発しますね、僕の方は子守見たいなものですから気軽に行かせてもらいます、秋様の方は本命なのでご武運を」
って、浅階層のジョージの時に一緒だった水島くんだったけな、あと西木田くんだったけ、その他ギルドの人たち、あ、僕のファンクラブに入っている田丸さんも一緒だ、なんかすれ違いざまにスマホで連写された。
確かにこのメンツなら、ギルドの重要人物の探索っていうよりは、どっかの遊園地の迷子係って感じがしないでもない、とはいうものの、結局一番年下なのは桃井くんなんだけどね。彼らは浅階層を当たるらしい。
他にもかなりの数の大小のパーティーだギルドの本部の前から出発して行く。
それを見送りながら、僕はらここ4丁目ゲートを出て、7丁目ゲートに向かうルートを取ろうかって相談していると、何やら軽快な足音が聞こえて来た。何かやな予感しかしない。
「ああ、秋ッチ、聞いておくれよ」
鉾咲さんだ。
「僕はさ、君が良いって言うのに、この意地悪で可愛いギルド長がそれを許してくれないんだよ」
一緒に真希さんも来ていた。
「だから、まだアッキーは深階層には行けないってそう説明したべさ」
「じゃあ、僕も中階層でいいよ、この前、運命の出会いをして、今回二度目の運命の出会いに僕はもうドキドキなんだよ、好きな男の子と一緒にいさせておくれよ、この胸の高鳴りはもう誰にも止める事は出来ないんだよ」
なんかこう、芝居かかった事を言い出してるなあ、って思ったら、
「じゃあ、心の臓の鼓動と共にその高鳴りって奴を沈めてやってもいいんだよ」
とかとても物騒な事を言い出す真希さんだ。とても冗談には聞こえない。流石の鉾咲さんも真希さんから距離を取る。そして吐き捨てるように本音を漏らす。
「チェ、つまらないなあ」
「工藤さんに失礼だろ八瀬、すいません、ほら、八瀬も工藤さんに謝って」
相変わらすのイケメンぶりを発揮して、鉾咲さんにそう言うのはクロスクロスの団長で、たぶん唯一、鉾咲さんに唯一の強制力を持つ森方 協十だった。相変わらず人の良さそうな笑顔に声だよ、イケメンは声までイケメンらしい。
「あんたは、私と共に深階層に行くんだよ、団長さんと一緒にな」
真希さんは鉾咲さんと一緒に行くらしい。
「いや、それは申し訳ない、せっかくの心遣いは感謝に耐えない、でもいいです、僕、協十と一緒に2人だけで行きますよ」
「遠慮すんなよ、私がお前から目を離す訳ないべさ、ずっと一緒にいてもらうべさ」
真希さんと鉾咲さんは、向かい合い、お互いのお腹が付いてしまいそうな距離でお互いの顔を見つめ、いや睨みながら言い合っている。
身長差がかなりある2人だから、見下げる鉾咲さん、そして見上げる真希さん。そして真希さんから出ているプレッシャーがハンパない。もう既に目線をそらし始める鉾咲さんだ。
「嫌だな、何か疑ってます?」
「ううん、確信しているべさ」
「僕、何も知りませんよ」
「ほんと、お前の言葉は嘘ばかりだ、1つも本当の事を言わないから尚わかりやすいべ」
「酷なあ、ねえ協十」
「すいません、工藤さん、僕の方からも無茶はしないように言っておきます」
と森方さんんがいうんだけどさ、そんな言葉に耳も貸さずに、真希さん、全く無視して、僕に向かって言うんだよ。