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第158話【クロスクロス再び】

 その声をかけた人物は、僕が行きがけに倒してしまった仲間、そんなに強く叩いたわけでもないのに、未だ気絶しているんだよ、その人を覗き見て、自分の仲間を瞬時に倒した、つまりは僕の方に軽やかに歩いて来た。


 「やあ、会いたかったよ、定山渓くん」


 僕の目の前まで来て、避けようとする僕の顔を覗き込んで、彼女はそんな風に言ってきた。


 「その節はどうもです」


 なんとか視線を合わせたくないなあ、って、なんとか避けようとするんだけど、ガシッと肩を掴まれて、


 「いやあ、人が悪いなあ、『真壁 秋』くん。いや狂王、それとも浅階層の悪鬼と呼んだ方がいいかな?」


 声がデカイですよ、鉾咲八瀨さん。周りの人たちが驚いている。


 本当に、会いたくなかったあ、この人がいるとろくでもないことが起こるもの。


 「僕も驚いたよ、すっかり騙されたよ、だってそうだろ、まさか『浅階層の悪鬼』がこんなに可愛い男の子だなんて、普通は気がつかないよね、演技している風でもないしさ、一体どうなってるの?」


 逃げる方向へ逃げる方向へ顔を近づけてそんな事を言う鉾先さんだ。特に怒っているわけもない、気持ち悪いくらいにフランクに僕にそう話しかけて来る。


 「鉾咲さん、顔近いです」


 って思わず言うと、


 「水くさいなあ、僕としてはもっと抱きしめてハグして親睦を深めたい所さ」


 とか不穏な事を言って来る。


 すると、僕の後ろから、


 「アッキー、気をつけるべ、そいつ耳朶かじって来るから油断禁物だべさ」


 って真希さんに忠告を受ける。


 え?マジ?


 思わず距離を取る。


 すると、


 「ギルド長さん、1つ提案があるんですけど」


 「ん? なんだべさ?」 


 「いやあ、今さっきですね、うちの5番隊の隊長が暴漢に襲われて使い物にならなくなっちゃって、その代わりと言ってはなんですが、この暴漢を連れて行きたいのですけど、いいですよね?」


 「却下だべ」


 「えー、いいじゃないですか、この子、うちの子にしたいんですよ」


 「だから、無理だべ、ずる賢い狐は、小狡いタヌキを仲間にできてもライオンを従える事はできないべ」


 「いやいや、ギルド長、私たちは狐ですか?」


 「狐が嫌なら、ハゲタカでも、イタチでもいいけどな、どっちにしたって分相応って言う鉄の掟があるべさ」


 なんかこの会話、火花散ってる感じがする。


 まあ、そうだよなあ、多分、真希さん、鉾咲さんみたいなタイプ、絶対に嫌いなんだろうなあって思った。鉾咲さんも真希さんも見つめ合って互いにニコニコしてはいるんだけどね。


 「真希さん、そろそろ始めます」


 と雪華さんが真希さんを呼びに来る。だけど真希さん、


 「雪華、説明した通りだよ、お前がやってくれ、私はここで見ているよ」


 って一言言うと、雪華さんは拡声器を持って話し始めた。


 やっぱりすごいよね雪華さん、真希さんの言ったことに身じろぎ1つしないで、対応してるんだよ。


 「みなさん、今回はギルドの緊急招集に応じて頂きありうがとうございます、緊急性を鑑みて、余計な挨拶等は割愛させて頂きます、では説明させて頂きます」


 話の内容はこうだ。


 ギルドの構成員で、おおよそその主幹をになる人物が行方不明になってしまった。


 人物の名前は、佐藤和子、この名を聞いたときはドキッとしたんだ。ギルドの中には佐藤和子さんは3人いて、そのうち2人は僕も良く知る人物で、1人はあの浅階層でラミアさん騒動の時にお世話になった、通称『シリカ』さん、そして、もう1人は怪我なんかした時にいつもお世話になっている通称『カズ』さん、でもその2人とも今、雪華さんの後ろに他のギルドの人と一緒に並んでいる。


 居なくなってしまったのは、3人目の佐藤和子さん、通称が『シンメトリー』さん。


 僕、このシンメトリーさんにはまだあったことがないんだよね、以前からどんな人なんだろう? 興味は尽きないけど、今はそんな事を言っている場合じゃないしな。


 ともかく、そのシンメトリーさんをみんなで探すって事らしい。いいよ、協力するよ。


 それに通常の行方不明者の捜索に比べたら大規模で、おそらく腕に覚えのあるダンジョンウォーカーや、組織として登録した人たちはみんな読んだって感じだ。


 それほど、そのシンメトリーさんが、このギルドに摂って大事な人なんだな、ってのが分かる。


 こう言うダンジョン内での行方不明者探索と言うのは以前にも何度か見ているけど参加するのは初めてで、お役に立てるといいなあ、とわりと真剣に思ったりしている。


 そして、そのままそれぞれに探索範囲を割り当てられて、僕らは中階層なんだろうなあ、って思っていると、真希さんが駆け寄ってきて、


 「悪いけど、あんたたちはバラすよ、茜ッチと角田はこっち来て」


 と連れてかれてしまった。文句言っている角田さんなんてまるで無視してギルド中心のほかのパーティーに組み込んでしまう。


 そっか、春夏さんと二人きりか……。


 いや、期待なんかじゃないから、緊張とかもしてないから!

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