第157話【真希の悲鳴、だから僕は……】
その日は、例の『秋の木葉』の事とか落ち着いて、ようやく普通に札幌ダンジョンに行けるなあ、って思いながら授業を受けていた。
そんな時、突然、僕の胸ポケットがブルブルってなるんだよ。まあスマホのバイブなんだけどね。
あれ? おかしいなあ、確か電源っ切っておいたはずなんだけどなあ、ってスマホを見るとかけてきた相手は真希さん。お? って思って、一応はギルドの事かも、だからさ、先生に言って、電話に出たんだよ。
すると、
「助けて、アッキー」
って真希さんの声、そして電話は一方的に切れてしまう。
その声がさ、いつもの真希さんぽく無くて、とても切迫して、何かとっても大変な事に巻き込まれているって、いつもの天真爛漫な感じな無くて、細くて切れそうなそんな声だったんだ。
気が付いた時には僕はタクシーに乗って4丁目ゲートに向かっていた。
「大丈夫、秋くん、落ち着いて、深呼吸しよう」
「一体、何があったんでしょうね?」
何も言ってないし、もちろん声もかけていないけど、タクシーには当たり前の様に僕と一緒に春夏さんと桃井くんが乗り込んでいる。
あれ? なんで彼らが来てるんだろう? って普通はなるんだけど、今はそれどころじゃ無くて、むしろ彼がいた方が助かるって思えて心強かったけど、こう言ってはなんだけど、なんでいるんだろう?
タクシーはあっという間に大通り4丁目にたどり着いて、僕らはゲートの中になだれ込む様に入って行った。
そして、どう言うわけか、いつの間にか僕の横には角田さんがいて、
「けっこうな人数を集めているみたいですよ、急ぎましょう秋さん」
言っている内容も、そもそもどうして当たり前の様にここにいるのか意味不明なんだけど、今はそれどころじゃあない。もちろん角田さんはいてくれるのは今後、何が起こったにしても都合はいい。
そして、ギルドの本部のある通称『スライムの森』に駆けつけると、そこには今の現状を示すのかの様な大勢の人で溢れ帰っていた。
これって一体?
僕はその人混みを抜けてその中心、ギルドの本部あたりに行くと、なんか、たぶんクロスクロスの人らしい白地に金の鎧の人がさ、
「貴様! 狂王!」
なんて言って切りかかってくるからさ、今はそれどころじゃないんだって、
「うるさい!」
って持っていた剣背で引っ叩いて、構わず人混みの中心に急いだ。
そして中心で見たのは、
「お、アッキー、来たな」
と、いつもの真希さんがいる。
……なんだろうなあ、もう全然普通。
いつも通りの真希さん。
どこから見ても眺めても普通至って正常な真希さんがいるんだ。
どう言う事??
ポカンと立ち尽くす僕を見て、真希さんは、
「な、こうすればアッキーすぐ来るって言ったべ、当たりだべ」
と雪華さんに話してケラケラ笑っている。
「もう、真希さん、幾ら何でもひどいです、秋先輩怒ってますよ」
と雪華さんが言う。その通りだよ。なんかもう腹が立った。本当に怒ったからね、僕のさ本気で心配する心を弄んで、酷い人だよ、悪い女と書いて真希さんだよ。
本当に今日という今日は言ってやろうと思って、もう怒鳴ってやろうと思って口を開いた瞬間に、真希さん、
「怒っちゃダメ」
って僕の懐に絶妙なタイミングで入り込んでハグして来やがった、しかも上目遣いで潤んだ瞳だと。
「べ、別に怒ってませんけど」
クッソ、ちょろいな僕。
「いや、急いでいたのは本当だったんだべさ、悪かったよアッキー」
って改めて謝ってるからさ、まあいいけど。
まあ、本当に無事でよかったよ。でもね、これってオオカミ少年と同じだと思うんだ。もう1回同じことされたら…、また来ちゃうね僕。絶対に引っかかると思う。ああもう情けない。
そんな僕を見てニコニコしながら僕の背中をバンバンと叩いて、真希さんは再び人の群の中心に戻って行く。その行きがけに、
「困ってるのは本当だべ、あてにしてるよアッキー」
とか、勝手な事を言ってる。
まあ、いいや真希さんなんとも無かったし、無事だし、それはいい、でもこれってなんお集まりなんだろう? ギルドが集めたとしたら、この前のラミアさんの時の事件みたいに結構深刻な自体なのではと思ってしまった。
そして、冷静になって、改めて周りを見渡すと、その人の群れの中には明らかにクロスクロスの人たちも大勢混ざっていた。
うん、本当に嫌な予感しかしない。
って思っている側から、
「やあ、やあ、やあ!」
って声がかかる。