第156話【ブレイドメーカー③】
どうしたんだろ?
随分とま割が騒がしくなってきてる。
雪華さんのタブレットから、直接、扉の向こうからざわめきが聞こえる。
そんな音が一瞬止んで、雪華さんのお母さんの声だと思うけど、
「ごめんなさい、今回は一回調査を中止します、ちょっとこっちでも色々と調べないといけないことができたみたいなの」
と言ってから、今度は雪華さんが、
「じゃあ、最後の質問です。いいですか?」
「はい、どうぞ」
「東雲春夏、喜耒薫子、工藤真希、椎名芽楼、多月蒼、河岸雪華、桃井茜、この中で1番身近に感じる人は誰?」
なんかちょいちょい変な質問入るなあ、それに今上げた人のグループにあからさまに仲間はずれな子いたよね、今日は僕の影の中にはいないだろうけど。
それに、この質問がどういう意図でどういう風に答えればいいのか正解もわからない。
う〜んって悩んでいると、
「秋先輩、大事な事です、早く答えましょう、もっとも近くにいる人って誰ですか? 素直に正直に率直に答えましょう」
って言って来る。ってか迫って来る。なんだろう、最近雪華さん見た目も変わったけど、キャラも変わったかなあ、中身はそうでもないんだろうけど、押しっぷりが真希さん的な気がする。
そして、その時、なぜか思いついたんだよ。ああ、これはクイズだなあ、って、てっきり心情の事を聞いた感じを装って、状況の把握とかの能力とか機転を試されているんだなあって、そう思ったんだ。
だから僕は自信たっぷりに言ったんだよ、
「1番近くにいるのは(物理的に)雪華さんです」
あ、雪華さん、飛び跳ねて喜んでいる、やっぱり正解はこれだったんだね。よかったよかった。
これで全課程を終了して、直ぐに剣を返してもらって、僕達は返っていいことになった。ちなみに塩谷さんはまだ用事があるらしくて残るんだって、よって冴子さんも一緒にいるそうだ。
帰りに、僕と雪華さんが車に乗るときに、忙しそうにしている雪華さんのお母さんが見送りに来てくれた。
「いやあ、ゴメンね、いい意味で思いもしないデーターが取れたから、これから多分、何日か徹夜で検証しないといけないから、きちんと見送りできなくて」
と言っていた。
「また落ち着いたら連絡するから、雪華は真壁くんの日程を調整して連れて来てね」
なんか雪華さんは僕のマネージャーみたいになっている。
そして、いよいよ帰る段階になると、雪華さんのお母さん、急に思い出したかのようにいうんだよ。
「あ、そうだ真壁くん、学校でもダンジョンでもいいから、『葉山』って人知り合いにいない?」
その名字を訪ねて雪華さんのお母さん、今までとちょっと雰囲気が違ったんだ。なんているかな、とても冷たい、いや厳しいかな、その中間みたいな表情をして聞いて来たんだ。そしてこの答えとして、僕はもちろん知っている答えるつもりだったんだけど、先に雪華さんが、
「葉山ってさっき教室で話していた委員長さんですよね? とても可愛い人で校内でも男子に人気がある美人さん」
って答えてくれた。
「ああ、そうか、私の訪ねたのは『葉山 茉薙』男の子よ、真壁くんと同じ歳なはずなんだけど、もし何処かで見かけたら教えて欲しいの、きっとダンジョンにいるはずなの、もしどこかで行きあえたら絶対に隠さないで教えてね、それと何があっても彼との戦いは避けるように、これも絶対よ」
と念を押して言って来た。本当に僕を心配してくれている顔をしている。「わかりました」
とだけ僕は答えておいた。
僕はこのとき、何かの予感がしてならなかった。
1つの波乱。
それが今は遠いダンジョンから吹き上げて来るようで、不安に一気に支配されていた。
そして何故だろう、僕はそのとき、クロスクロスにいた、あのローブの少年を思い出していたんだ。