第154話【ブレイドメーカー①】
それに冴木さんも、この人僕の為なら都合の悪い真実を全部握り潰す気だよ。なんか怖いよ。自分がそうしているみたいで悪の組織を率いているみたいで肩にのしかかって来る重荷感は半端ないよ。
そ、それでも僕の為に動いてくれたんだから、その辺は感謝しないととは思うものの、そんな気持ちより自分の知らない所でどんどん事が進んで行く事に戦慄を覚えてしまう。
なんか寒気がして来た頃、僕は呼ばれて、その部屋を後にして雪華さんの言う、隣の部屋に移動した。
小さな室内だった、広さにして畳4畳くらいの部屋かな、そこの真ん中に椅子が1つ用意はされていて、その傍らに雪華さんがいた。
勧められるままに椅子に座ると、雪華さんが、「失礼します」と言って、僕の胸や手首に何やらセンサーみたいなものを貼り付けて、「痛くないですか?」なんて聞いて来て、なにが始まるんだろうか? と思う僕に、
「これから大柴製試験マテリアルソード、基礎形態、シリアルナンバー、GーSNEーP0112、使用者 真壁秋に対する設問と、同マテリアルブレード、使用者との吻合状態の確認を確認します」
と言ってから、「カウントダウン、5、4、3、2、1 今。使用者とマテリアルソードの同期確認、開始してください」
雪華さんは手に持ったタブレットを除いてそう言う。なんか本格的だ。顔も真剣そのものだし、やっぱり僕がなんのき無しに使っている剣はすごい剣なんだな。
そして今度はスピーカーから、多分、雪華さんのお母さんの声が聞こえて来る。
「真壁くん、聞こえていますか?」
「はい、聞こえてます」
「これから、システム『sword world』の調査実験を開始します、これから聞かれる事、答え、得た知識は全て社内法で基づく所の秘匿事項となります、他言は控えてください、そして、映像と音声で記録を残しますので、真壁くんの許可をお願いします」
「はい、いいです」
「許可確認、では録音と録画を開始します」
すると、僕の横にいる雪華さんがタブレットを見たまま、
「使用者の血圧及び心拍数の上昇を確認」
あ、録画とか録音とかされるって聞いて緊張してしまった。平常心平常心。
「マテリアルソード、硬度上昇」
「使用者、血圧、心拍数低下、平常値に戻ります」
「マテリアルソード、高度降下、数値平常化」
そんなやり取りが交わされて、また雪華さんのお母さんの声が、
「素晴らしい」
と言った。そしてそのまま、
「では質問を開始します」
と言われる。
「名前を教えて下さい」
「真壁秋です」
「今、あなたがダンジョン内で使用している主な武器を教えて下さい」
「はい、冴木さんにもらった剣です」
「その剣に名称はありませんか? 普段はどのように呼んでいますか?」
普段って言われてもなあ、確かに名前を付けようとは考えていたけど、まだだし、普通に剣としか、一時は『ダマスカス鋼の剣』とか呼んでいたけど、どうも違うらしいし、ちょっと困って、
「ありません」
と答えると、
「では、社の通称で呼んで見て下さい」
ええ、あの長いの? そんな覚えてないよ、って思ったら、雪華さんが自分のタブレットを僕に見せてくれて、「読んで下さい」って言ってくれたから。
「大柴製試験マテリアルソード、基礎形態、シリアルナンバー、GーSNEーP0112です」
とたどたどしく言って見た。
「使用者に変化はありませんか?」
スピーカーから響いて来る、雪華さんのお母さんの声、なんか上ずってる。興奮しているみたい。