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第149話【後輩女子からの業務的お誘い】

 まだダンジョン内、中階層でも行っていなかった所はたくさんあるんだ。それに、僕はあの時、クロスクロスの鉾先さんが言っていた『秘密』の場所が気になっている訳じゃあないんだからね。なんか『ウッフーン』な感じがする場所を気にしている訳じゃあないんだからね。


 「今日も葉山さんはダンジョンに行くの?」


 「うーん、今日はどうしようかなあ、ちょっと微妙、真壁くんも行かないでしょ?」


 「うん、今日は用事があってね」


 と言ってから、ちょっと気になって尋ねてみる。


 「葉山さんていつも決まった人たちと一緒にダンジョンに行っているの?」


 本当に、不意に、なんの気無しに尋ねてしまった。ただの好奇心だったんだよ。みんな女の子なのかなあ、とか、結構強い人もいるのかなあ、とか、僕の疑問なんてその程度だったんだ。


 でも葉山さんは、ちょっと複雑そうな顔をして、僕に言ったんだ。


 「いつも同じ人よ、前はたくさんいたけど、いまは2人が多いかな」


 そうか、少人数の方が動きやすいってこともあるもんなあ、って感心してると、


 「何、真壁君、気になるの?」


 なんて僕をからかうように言うんだよ。あ、そうか僕今そう言うことを勘ぐったみたいに見えたんだ、いやいやいや、


 「ごめん、そう言うつもりじゃ無いよ、葉山さんと一緒に2人きりでダンジョンに潜れるなんて、きっと強い人なんだろうなあ、ってちょっと考えた」


 「さあ、どうだろう? いつも一緒だからわからないわね、その人が強いのか強くないのか、もうとっくにどうでもいい事になってしまっているから」


 と葉山さんは告げた。


 僕はこの時、彼女の言っている意味がわからなかったんだ。でもその事について深く尋ねようとは思えなかった。何か、こう、1つの完結してしまった思いみたいな物が彼女の周りを包んでいて、それがいい事なのか、それとも寂しいって思っているのか、悲しいのか、それとも嬉しいのか、葉山さんの横顔からは全く悟ることのできない僕だった。


 ただ、何か含みがある、少しだけ僕に伝えたかった、ってのは分かる。と言うか感じる。 


 多分、葉山さんには葉山さんの事情があるんだ。


 それ以上何も言わないのは聞かれたくないってことなんだとうなあ、と僕はそう判断したよ。


 僕と葉山さんしかいない教室の中で、それ以上言わない葉山さんと、それ以上は聞かない僕とて、静かで、パキンとした氷みたいな空気が流れて行った。


 そんな空気が綺麗に割れる。


 1人の後輩少女の言葉。この教室に駆けつけて来て、扉をガラリと開ける。


 「真壁先輩、お迎えにあがりました」


 「ありがとう 河岸さん」


 僕を迎えに来てくれたのは河岸雪華さん。


 僕の2つ下のこの学校の一年生の後輩、そしてギルドの現在は幹部候補生。


 彼女とは色々と縁というか因縁というか、素直に命の恩人な繋がりがある。


 あの浅階層での1番長く感じられた1日を友に戦った間柄だ。


 家はお金持ちでお嬢様で、しかも『メディック』と言う、この北海道ダンジョンの中でも他に類を見ない特殊な治癒スキルを持つとても優秀な河岸さんが僕を迎えにきてくれた。


 「何? これから可愛い後輩さんとデートかな?」


 って意地悪い笑顔でそんなことを言ってくる葉山さんだ。


 そんな訳ないじゃん。


 「違うよ、これ」


 と僕は片手に持っていた剣を彼女に見せた言った。


 「ああ、河岸さんって、もしかしたらあの河岸製作所のお嬢さん?」


 と葉山さんですら驚く。そうでしょう、そうでしょう。でも今日はその河岸製作所ではないんだよなあ。


 「そうだけど、違うよ、僕の用のあるのは彼女のお母さんがCEOだったっけ? それを務める『大柴マテリアル』の方、この剣はそこで作られた物なんだって」


 と、そこまで言って、あ、こう言う情報をダダ漏れさせてよかったんだけ? コンプライアンス的にこう言う事って秘密厳守じゃなかたっけ?


 慌てて河岸さんを観ると、ニコニコしているから、ああそうか、いいのかって考えすぎだったかって一安心する僕だ。


 まあ、この剣に付いては僕も最初は驚いたけどね。河岸さんの事は、河岸製作所として、あの名剣『カシナート』を造った会社としてだけど、まさかこの剣まで関わっていたんだって知った時は正直驚いた、ってそれは僕にとって昨日の話ね。


 それにしても、人ってどこでどう繋がっているかわからに物だよね。


 ともかく、河岸とはそんな事を思っていた僕なんだよ。


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