第148話【ダンジョン内の新勢力】
一応、元黒の猟団、今、秋の木葉のコトについてはギルドの方から、と言うか真希さんから直々で僕のお任せになってしまった。
つまり、彼らが何かやらかしたら僕の所為って事らしい。
何やら責任重大な感じだけど、でも、基本的に蒼さんは信用してるし、おばあさんと直接お話ししているから、多月さんの家の事、分家も含めてだけどなんとなくわかったし、多分、この団体は今後大丈夫だと思うんだ。
それにさ、『責任を取る』って言ってもさ、最終的に何かあったら『ごめんね』って話であって、多分僕には責任なんて取ることはできない。その上で僕に責任があると言うなら、それを僕に背負わせた真希さんも、僕に責任を取らせるって意味での責任が発生する訳で、なんだ結局うまく責任問題は分配されてるじゃないかと。
第一さ、実際に責任を取るって言っても社会的にとかって言って、その立場を降りるだけでさ、その後に多様な役職にこっそりちゃっかり付いてさ、あれが責任を取るという事だったら、この社会の中に本当の意味で責任を取っている人間なんて1人もいないよね、って子供の僕の目にはそう見えてしまう。
いいでしょう、僕も責任とって辞めますね、って事で良い訳だ。
突き詰めて考えてみるとそんな風に思えてあまりマトモに取り合わなくてもいいやって気にはなってきているから、わかりました、責任は取りますよ、と軽い気持ちで言える僕でもあった。
それにさ、色々と変わったと思うんだよ。
今までの黒の猟団って多分、単一で集団そのものが兵器か武器みたいなもので、ただひたすらに戦闘力しか無いいわゆる、どんな方向にでも転がってしまう銃口みたいな危ない団体だったんだよ、つまり、元々、荒事以外、戦ったりとか以外になんの目的もなく、ダンジョンで受ける仕事によっては悪にも善にも向いてしまうって感じの、何より中心だった蒼さんって真面目で、真面目すぎてそう言う風にしか動けなかったって所があったんだ。それが僕と言う方向性を持つ事で、一定の方向性を得たと言う事で組織としてひどく安定化したと言う話らしい(真希さん談)。
「まあ、アッキーは基本、人畜無害だからいいべさ」
と言うのが大体の判断らしい。それになんのかんの言っても中途半端とは言え、1番関わりを持ってしまった、何よりいざとなれば王様のスキル持っているのでそれなりに歯止めが掛けられると言うのも大きな理由らしい。
そんな訳で責任重大な僕なのだけれども、それでも僕のやって行くことは変わらないと思う。なんのかんの言っても普通のダンジョンウォーカーだからね、僕は。
まあ、お陰で、今現在、僕はギルド、D &D、そして数だけいるクロスクロスに次ぐダンジョン内での第3の勢力として目下注目の的だそうだよ、未だ中階層のダンジョンウォーカーなのにね。
「すごいよ、真壁くん、いやあ、もう真壁様かな」
って言うのは委員長の葉山静流さんで、あれだけの公共の場で派手に結成式みたいな事してるから、完全にさらし者で、もう隠すことなんてできなくて、概ね僕を知る人なら誰もが知ってる事実になってしまっている。
ひとまず、今日は昨日の今日で、授業も終わって、教室の中でちょっと人を待っている所。
今日はダンジョンにはいかないで、ちょっと所用でとある『機関』に呼び出されて、その迎えを待っているところに葉山に話しかけられた格好になる。
「やめて、葉山さんまで」
と言うものの、
「だってさ、あの多月蒼率いる武闘派集団を力づくで平定して、自分の勢力に取り込むなんて、どこの戦国武将なのよって話よ、『信長ってる』って言えなくも無い」
何その新しい言葉、なんか信長を出された辺り『力づく』感が半端ない。これが人情とかだったら『秀吉る』になるのだろうかと無駄な事を考えてしまう。いや寧ろ家『康ってる』になるのだろうか。
「すごいね、真壁くんどんどん力を付けて行くね、もう、このまま深階層に行ってしまえばいいのに」
「いや、まだ中階層を楽しみ尽くしてないから、もう少しここにいるよ」
実力的にはうぬぼれではなくて、多分、深階層に行けるとは思うよ、でも、それではダメだ、ダンジョンをもっと味わい尽くさないと。