第134話【多月さんのお家の事情】
この人達って、多月さんの家を本家として、そのほとんどが分家に連なる人達で、その目的は多月さんの護衛だったり、ダンジョン内での多月さんを支える為に一緒について来た人達なんだって。
でも、多月さんを失った他のメンバーは様々に意見とか別れて、組織を立て直そうとする人、組織を解体しようとする人、多月さんについて帰りたい人、また極端だけど多月さんに裏切られたって感じている人、様々に別れて、求心力を失った団体は、ポッカリと穴が空いてるしまった中心に吸い込まれてしまうよに混乱して、混雑なまま、中に中に破壊をもたらした、みたいな感じらしいんだ。
特に戦い合う目的も、互いを憎しみあう理由もはっきりとした物は何一つなく、ただ、嫌な感情が膨れ上がってしまって、気がついたらこんな形になっていたって。
だからかもだけど、僕のスキルで戦いは止めたものの、なんかホッとしてる人たちが多い気がするのは気のせいではなかったみたい。
多月さんは、なんでも近畿地方らしい、あの辺も忍者の里あるんだなあ、ってちょっと感心した。ちなみに、五頭さんとか、他の黒の猟団の人の大多数も同じなんだって、でも椎名さんは違うって言ってた。あくまで椎名さんはダンジョンからこの黒の猟団に入ったらしい。ちなみに彼女の実家は道東の方らしい。釧路とかかな?
そんなことはともかく、多月さんの家って、遡ること飛鳥時代から代々続く由緒正しい忍者の一家なんだって、そして彼女はその本家のお嬢さんで、一応、本来、きちんとその忍術(?)の練習をするために家にいるべきところだったんだけど、北海道にダンジョンがあるって聞いてから、このダンジョンで自分の培って来た技術がどこまで通用するか、どうしても試して見たくて、親の反対を押し切って心配だからと、分家の人を何人かのも何十人も引き連れて札幌にきたらしい。
多月さんが北海道にきてから分家の方からどんどん分家の人とかも来続けていて、気がついたら、ダンジョン内で仲間になった人も含めて200人近くに膨れ上がって傷んだって、ちなみに五頭さんも分家の人なんだってさ。
で、その分家の中でも本家に近い人の苗字で、必ず数字と体のどこかしらの部位が入る人は、みんな分家でも本家に近い人らしい。
ああ、そういえば、前にそんな人がいた様ないない様な……。今はいいや。
後、多月さんには弟がいるんだって、この弟さんが多月家の跡取りになるんだってさ。だから、その家長であるお父さんが、ならばやってみろ、って事で、その代わり色々と条件を出されたんだって。
で、今回のことが、この条件に抵触したらしい。その条件が、一回でも負けたら実家に帰るって約束だったんだって、それちょっと厳しすない? いくら何でもあんまりだよね。でもまあ、あの戦闘能力なら、そうそう負ける事ないよなあ、とは思う。もっと用心深くやっていれば、きっとダンジョン適齢期内で負ける事もなかっただろう。
一応の救済措置はあって、一度負けた相手にリベンジして勝てばいいって話。
でも、これも結構無茶な話だよね。
負けた相手に勝つって結構難しいよ。
それがお手軽にできるなら、僕、とっくの昔にお母さんに勝ってるもの。
負けるって、多分、ゲームじゃなくて、競技じゃなくて、真剣にやりあっった場合、地力がないから負ける訳で、そこに、運とかあまり入り込む隙間はない。
特にダンジョンウォーカー同士の戦いなら、一度負けた相手をひっくり返すってのは難しいなあ、相手に負けたい地理的理由でもない限り無理だよ。
でも、それは一つの光明だよね。
以外に簡単だよね。
僕と多月さんが再戦して、僕が負ければいいだね。
なんか簡単そう。疲れてヘトヘトだから、十分理由になるし、結果、多月さんが勝てば良い訳で、そうだ、サクッと負けて来よう。
そして、椎名さんは言うんだよ。
「主人様、もう一つ、ダンジョンに残れる方法があるのですが」
と言うものの、この事については椎名さんは詳しくは知らないそうだ。それはそうだよね。椎名さんは黒の猟団の大部分の人達と違って、現地で仲間になった人だから、その辺の事情は知らないって話なのはわかる。ただ、以前、多月さんと五頭さんにチラッと聞いたのは、多月さんが家をつぐことはないって事に関連があるらしい。
さっぱりわからないよ。
今の時点ては不確かな情報だね。ちょっと利用できない。
だから今回は確実に履行できる方を選択する。
僕が多月さんに負ければいいんだよ。
と言うか、負けた事にすればいいんだよ。どうせ、多月さんの家の人なんてここにはいないしさ、もうそれで行こう。これが1番早い。
そうすれば、多月さんは札幌ダンジョンに残って、黒の猟団も以前よりは小さくなってしまったけど、再構成できて、みんなも仲間内で同士討とかしなくて良くて、もう、これで行くしかないよね。うん、それで決まり、じゃあ、あとは多月さんと相談して…。