第132話【内部に向かって崩壊する黒の猟団】
ああ、もう、多勢に無勢だよね。
ダンジョンの中階層21階、その階層の4分の1くらいを締める大部屋で、僕は100を超える黒い渦、つまりは黒の猟団のの構成員の、極めて魔法で防御とか回避能力をあげてしまっている、視覚的には、直径50センチ程の中空に浮かぶ黒い渦にしか見えない人たちの同士討ちの間に入っって、17〜8人くらいはベキベキと装備している皆さんお揃いの黒いダガーみたいな刃物折って回っているんだけど、どんどん追い詰められていく僕がいた。
やっぱ無理があるなあ、もう、今の僕は正常な判断とかできないみたい。流石にこの数を全部敵に回すってのは無謀すぎた。て言うか、どうしてそれが出来るって思えたんだろう。自分がやり始めた事なのに、なんか無様で笑えた。
積極的に攻撃する形から、当然、防御一筋になって、好きあらば襲いかかる黒いダガーを折っている僕なんだけど、この人数の前の押されている。ちょっと卑怯じゃないかな、一対一でかかってこいよ、って思うけど、この黒の猟団ってこう言う戦い方をする組織だった。そうだリアルに確実に敵対者を仕留めるスタイルだ。
ちょっと困った、どうしよう。って思っていると、遠くの方から、
「秋さん、こいつらみんな一度は秋さんに負けていますから、秋さんのスキルて無力化は可能ですよ」
って手は出さないけど口は出してくれる角田さんだ。助かる。
「ちょっと、みんなやめて!」
と声を出してみる。
何も変わらない。
やっぱり僕、意識してこの王様スキルって使えない。いつも無意識に使っていつ気がする。そして意識してしまっている以上、無意識にって言うのが難しくてできない。
「どうやったっけ?」
思わず角田さんに尋ねてしまう僕がいる。
「命じて見てはいかがでしょう? 怒ってみるのも割と有効かもしれませんよ」
角田さんにしては珍しく、具体性に欠ける提案が来る。
よーし、わかったやってみるよ。
僕は一呼吸、大きく息を吸い込んで、それを一気に吐き出して叫んだ。
「いい加減にしろ!」
その声は室内に反響して、残響の余韻を残して消えて行った。
そして、今まで聞こえていた戦いの音は全て止んでいて、そして、黒い渦たちは人の形になって、ある者はそのまま立ち尽くし、ある者はヘタるようにその場に座り込んでいた。
なんとか止まったね。
ホッとして剣を収める僕の所に椎名さんがやって来て、
「主人様、我らが失態、静めてめ下さってありがとうございます」
と深々と頭を下げた。
この人、椎名さんって、僕よりもずっと年上の高校生のお姉さんだよ。でも、ここ最近は僕に会う毎にこんなに仰々しくお辞儀され、敬語を使って敬われる。
彼女がそうしないのならいいんだけど、角田さんも相変わらずの敬語だし、王様って言ってもスキルなんだからって説明したんだけど、なんか恭しく接せられてしまう。
「いいですよ、椎名さん、これってきっと僕のせいなんでしょ?」
すると椎名さんはちょっと悲しそうな顔をして、
「はい、主人様のせいです」
とキッパリと言った。さっきまでの悲しみ暮れていた椎名さんだけど、みんな助けてしまったから元気が出たみたい。よかったよ。何よりだね。
そして、僕は一応は同士討が収まったこの室内の様子をざっと見渡して、これって絶対に僕が原因の一部に関わってしまっていると、そうだと思った。さっき、このダンジョンに潜る前には多月さんとかいたし、五頭さんもいたしね。
「どうしたのか、何が起こってるのか教えてもらえる? 力にはなろうかなっとは思ってるから」
と言ってから、
「内容にもよるけど」
と付け加えた。
もちろん、そりゃあそうだよ。なんでもって訳にはいかないよ。流石に道義やまして法的にどうかと思う事には加担はできない。
ほら、例のラミアさんの時の事件とかあるからさ、結構、この人達悪い事っていうか、そう言う堺みたいな物を簡単に超えていそうなイメージがある。と言うか、そもそもこのダンジョンンの中では僕の思う所の善悪とか結構曖昧な気がする。
そして、それは浅階層よりもここ中階層の方が程度が酷い気がする。中階層でこの調子なら、深階層ってどんな世界なんだろう、って一抹の不安がよぎってしまうけど、今はそんな事考えなくていいや。