第34話 【ギザ10円玉って何? え? 高価買取なの?
ギザ10?????
特定モンスターかな? 聞いたことない。
そんな僕に角田さんはいたって普通に、
「10円玉ですよ」
って言った。
ちょっと意味がわからない。
10円玉ならさっきからある。結構な数飛んでいる。だから、
「10円ならさっきからあったよ」
って言ったら、
「ごく稀って言うか、超弩級レアで縁がギザギザになっている10円玉があるんです」
なにそれ? 初めて聞いた。
「接近して来る時の音が違いますからすぐにわかると思います」
って言う忠告をしてくれる角田さんは、続けて、
「なんでも、コレクターの間では高値で取引されていて、10円ですが、2000円くらいの価値があるらしいです」
10円が2000円に?
今の僕はお金には敏感になっているから、思わず反応してしまう。
どこ? ギザ10、どこにいるんだ?
血眼になりつつある僕は目では無く、集中し神経を研ぎ済ませても一般人となんら代わりな耳の方に変化が訪れる。
『ブーン』って音が聞こえて来る。
なんだ?
って思うより早く、それは襲いかかって来た。
1円玉の群れから飛び出したそれは、僕が構える盾を交わして、肩を掠める様に飛んでゆく。すごい、さすがに2000円くらいの価値のある10円玉だ、その攻撃方法と速度は他のものとは群を抜いている。
ギザギザの縁を高回転させながら飛んでいるので、あんな音がなるんだな、他のチャリチャリとした硬貨の音に混じって確実に異なる異音を放っていた。
当たったダメージが確実に僕の肩から伝わる。と言っても大したことはないけどね。それよりも、やばい、学校指定のジャージがちょっと切れた。
母さんに怒られる。
やっぱり、専用の装備がいるなあ、浅階層ならジャージでもいけると思ったけど、早速限界を感じてしまった。
「秋くん、大丈夫?!」
って、いきなり春夏さんが叫ぶんでびっくりした。
「い、いや、大丈夫だよ、掠っただけだし」
って彼女の形相を見て思わず言葉が詰まる。もうね、鬼の形相っての? 前に飛ぶ硬貨とかも無視して、うずまる一円玉をかき分け僕の方に来る。
「ほんと? 怪我とかしてない?」
人の顔を両手で押さえて、多分、瞳孔とか開いていないかジッと見たり、首の座りを確認したり、身体中触って、軽く打診して、確認してながら、
「横になっていた方がいいわ」
とか、もう、人を重傷者扱いだよ。
そして、ようやく肩のところのが切れているよと言うかほつれていると言うか、その場所に気がついて、
「切れてる!」
え? ああ、うん、ジャージがね。
「いや、服がね、かすっただけだから、平気平気」
「平気じゃない、もし、これが首とか顔とかに当たったら…」
痛いで済んでいたと思うよ。
「許さない…」
心配そうに僕を見つめる表情が一変する。
鬼の眼光って奴。まさに鬼気迫る表情で、舞い飛ぶコイン群を睨みつける。
あ、視線というか眼光に偶然だろうか、何枚かの1円玉がチャリンと落ちた。
「え? ちょっと春夏さん?」
と、思わず掛けた声なんて、まるで聞こえないように、
「絶対に許さない!」
と、ギザ10が飛んで行ったであろう、コインの舞い飛ぶ群れの方に馳けて行った。
春夏さんて、ちょっと過保護気味だけど、基本仲間思いのいい人なんだろうなあ、って思った。でもやっぱりどこか変わっているよね。
まあ、この硬貨達なら、春夏さんなら単独行動でも問題はないだろうって思いつつ、ちょっとだけ他の方、周りに目を向けて見た。
ちょっとは余裕のできてきた僕だったよ。
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