第129話【決着】
ドーム型に放たれて、僕を覆う様に全方向から攻撃してくる気弾は切り刻まれて、ようやく視界が開けだところで、僕の伸ばし切った腕の先、剣は完全に北藤さんの首を捉えていた。
北藤さんは、この攻撃と同時に距離を詰めてきていた、この気弾もろとも僕に攻撃するつもりだったみたい。
そして、この包み込むような攻撃をしてくる気弾に為す術も無く翻弄される僕にトドメの攻撃をと思った瞬間に、自身は放ったカマクラ型になる気弾を斬り裂いて、僕の剣がぬうッと出てきたって形、そしてその場所だたまた北藤さんの首だったってことだね。
しかも、僕の剣はと凍気を斬り裂く上で、その冷気を吸い続けて周りの空気中にある水蒸気を貼り付け凍て付いて、まるで氷柱になってしまっていて、まるで角田さんの持っている金属バッドのように太くなってしまって、北藤さんの首には当たるものの斬るにはいたらず、ちょんと当たるに止まってしまっていた。
でも、ああ、終わったなあ、ってのが分かる。
だって、その僅かに当たった凍りついた僕の剣から伝わる北藤さんの首の筋肉、さっきまでは鎧の様に硬かったけど、今はまるで豆腐の様に柔らかい。
それは、もう終わらせ様としているのか、それとも終わってしまっているのかわからないけど、つまりは終了、これ以上の攻防はないって言う事の表れでもあるのがわかる。どうしてかって言われても困る、わかるのはわかるんだから。
僕は剣を引っ込める、ああ、凍って重くなっちゃったなあ、これじゃ持ち歩くの大変だなあ、魔法の使える階で角田さんの魔法で軽く炙ってもらって氷を落として行かないとなあ、なんて考えていると軽くふらついてしまう。
「おっと」
って踏ん張る前にいつの間にかきていた春夏さんに背を支えられている僕がいる。
「あー、ありがとう」
振り向いてみるまでもなく、この香りと言うか優しく支えてくれるのは春夏さんだよ、間違いない。
「頑張ったね、秋くん」
そのまま支えてもらって、僕は北藤さんの方を見ると、北藤さんは僕の剣が当たったあたりを手で抑えて、何やら考え込んでいる。
この勝負の勝敗について模索検討している様だ。
だから、僕は、
「今回は引き分けですね」
と言った。大きく出てみた。まあ僕としてはあの怒羅欣の1番強い人と引き分けだから、もうこれでいいやって思ってはいるんだけど、北藤さんはそうではないみたい。
「いや、首の有効打ですな、これは私の負けです」
とか言い出す。何んでだよ。
「北藤さんの技によって凍った剣です、有効ではないでしょ、僕はもう手を出し尽くしましたよ、これ以上、北藤さんに奥の手とかあるなら、僕はここで負けでいいです」
と言った。
すると北藤さんは笑った。
「今の私ではここまでしか力を引き出せませんか、まあ『無拍子』が出していただいたことだけでも十分と思わないといけませんな」
と言った。この人、これ以上僕に何を期待しているんだろう。それに無拍子って何だ?
生憎僕は格闘技界隈の特に北海道についての歴史は知っているけど、そのものについては全くのど素人だ。北藤さんの言うことについては全く意味不明だよ。
とどのつまり、僕が今苦し紛れに出した攻撃方法が北藤さんの知るところの何らかの技に当たるのだろう。と言うことぐらいしか推察できない。
あ、引き分けだとジャンケンになるんだっけ?
すると北藤さんは僕のそんな心配をよそに、
「秋殿の技はこれで全てですか?」
なんてな事を聞いて来るよ。いや、僕、必殺技なんて無いし、まして超必殺技とかないし、適当に剣を降って対応しているだけだよ、いつもの通りさ、小さい頃から家でやっている事をしてるだけで、まあ、何と言うか『三つ子の魂墓まで』的な奴だよ。恥ずかしいかもだけど、僕は元ダンジョンウォーカーの母にしか剣の手習いなんて受けてない。