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第123話【零下の衝撃、平たく広く飛ぶ拳撃】

 同時に僕だって動いている。一閃、斬撃を横に置いて下がる。でも、簡単に払われてしまう。この人、剣を持つ人と戦い慣れてるな、ってこの最初の接触で理解する。回るか下がるか出るかの3択だったんだけど、なんだろう、本能的にどれもまずい気がして、無意識に上に剣を薙ぎ払った。


 そしたらさ、ゴオォォォって風と一緒にでかい拳が僕の上の死角から迫ってたみたい。そのまま僕を攻撃しようとしていた拳は剣の横を弾く。その弾かれた剣に僕は体ごと持ってかれそうになる。なんて力で攻撃しようとしていたんだよ、殺す気か?ってちょっと頭に血が上って、一瞬で冷静になる僕なんだけど、その時思い出したんだけど、そう言えば勝利条件とか聞いてなかったなあ、って思って、殺してしまううのもアリなんだろうか?


 ガチで格闘家とかやっている人の気持ちが僕にはわからないから、この辺ははっきりさせようと思って、


 「勝利条件ってなんですか?」


 って取り急ぎ聞いたら、


 「勝った方と負けた方がわかる事ですね」


 って言われる。そりゃそうだ。


 「どうやってそれがわかるのさ?」


 って言いながら、北藤さんのエゲツない下段、つまり腹部を狙う一撃を避ける。ゴオって言ったよ。唸ったよ、拳。


 「それは闘っている本人たちが1番わかるでしょう」


 そういうもんなんだね。どうやら、良いのが入ったら、とか一本とか、そうい決着じゃ無いみたいだね。これは本気を出さないと死んでしまうな。


 僕は一端大きく後退して距離を取る。


 「ほう」


 と呟く北藤さんは追ってこない。


 「リーチは自分と、そう考えますか、秋殿」


 とすっかり僕の考えを見透かしたように言われてしまう。


 「うん、まあね」


 多分、体格差では僕には部はない。クマみたいな巨漢に大きな拳に足、でも剣を含めると、若干だけど僕の方が長さはある。多分、皮1枚くらいの僅かな差だけどね。それでも、僕の攻撃は当たるけど、北藤さんの攻撃は当たらないというこの距離は大いに利用させてもらうよ。ちょっと卑怯な気はするけど、剣を持った僕に戦いを挑んできているんだから、その辺は納得してもらうよ。


 プランとしては最大戦速ですれ違い様に一撃って形で行こうと思っている。この距離なら、その機会を伺うも相手である北藤さんが手出しできないからこちらのやりたい放題だからね。もちろん相手だった良いタイミングでカウンターとか放ってきそうだかど、総合的にみても運動量と速度は多分僕の方が上、短いリーチの外側から一撃を入れる。これは北藤さんも納得の一撃になるだろう。なんて考えていると、


 「では、私からも攻撃を放ちますぞ」


 と言って北藤さんは不気味な構えを取る。僕からみて、右からの構え、つまり横向きで右肩が僕の方を向いている。その状態で、ずっしりと腰を落として、両手は拳を突き合わせて、丹田の位置に、まるで何かをその拳に載せるように力が入っているのが遠く目にみてもわかる。一体何をする気だろう?


 「ハァァァァー!!!」


 ってここからも届きそうな大きな排気音。


 身体の中の空気を全部吐き出しているみたいな感じで、大きく息を吐きながら、間違いなくその合わせた拳に力を溜めている。それをゆっくりと僕に対して後ろに引いてから、一 気に前に突き出し、


 「ハァッ!」


 気合いとともに、拳を開いて僕の方に明らかに何かを放つ動作をする。


 え? 今の何?


 わずかな時間差で僕の前にいた北藤さんがグニャリと歪んだ、違う、北藤さんが歪んだ

じゃない、僕と北藤さんの間の空間が歪んだんだ。そう気がついた時、僕は大きな衝撃とともに後方に吹き飛ばされていた。


 「ぐ! うべああ!」


 かっこ悪い、なんか変な声が出てしまった。


 なんかもう、意識とかをまとめて引っこ抜かれるような大きな衝撃。


 なんとか繋ぎ止めたけど、普通なら絶対に気を失っていたよ。


 なんとも説明できない、体を北藤さんの向いている方向から、足の先から頭の天辺まで満遍なく引っ叩かれた感


じ。伝わらないかなあ、なんて言って良いのか、デカいハエ叩きで思いっきり叩かれたって感じで、衝撃が体に振動してくる感じだね、まだその衝撃は残っている、なんだろこれ、結構痛い。


 なんとか踏ん張って、倒れないようにするのがやっと。体の一部を撃ち抜かれたっていう衝撃はない。もう一回思い出してみて、自分の体を総点検する、大丈夫、今の攻撃での損出とか無い。動きに問題もない、まるで体全体を満遍なく衝撃波が襲ってきた感じ。強いていうなら、突くとか斬るとかいう点や線の攻撃じゃなくて、正面を向いている僕を面として捉えて襲いかかかって来る感じ。

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