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第120話【ああ、もう、格闘家ってめんどくさい!!】

 僕はあの時、確かに多月さんを斬り刻んだ。全く無自覚に無意識に、無為に反応してしまった。彼女の隠していた殺意では無く、確実に僕に届くその刃に反応してしまったんだ。これじゃあダメなんだよ。強いなんてとても言えない。   


 そんな僕は一体彼らの間でどのような人物だと思われているのだろう。


 「にわかに信じられませんな、しかし私は秋殿が嘘をついているとは考えられない、やはりここは1つ手を合わさねば何もわからないと言う事ですね」


 だから、どうしてそうなるの?


 「別に、僕と北藤さんが戦わないといけないって理由がわからないんだけど?」


 札雷館といい、この北藤さんといい、格闘技をする人たちの気持ちって今ひとつわからない。意味不明だよ。戦いなんて無い方が良いに決まってるのに、何を好き好んで戦いたがるの気持ちがさっぱりわからないよ。


 「理由ですか」


 と僕の問いに対して、少し思いを巡らせる北藤さんは、


 「そうですな、強いて言えば、強いからですかな」


 「僕、未だに中階層の浅い階のダンジョンウォーカーなんだけど」


 「階層は関係ありません、秋殿の耳には届いていないででしょうが、今このダンジョンは勢力図が大きく書き直されているところなのですよ」


 丸太みたいな腕を組んで、威風堂々とした姿で、僕の方をまっすぐと見つめて北藤さんは僕に教えてくれる。


 「少し前の話です、『浅階層で1番長い日』と称される前代未聞の事件が起こりました、そこにいた、ダンジョンに入って日も浅い1人のダンジョンウォーカーは、こともあろうに、浅階層で、あの全てを蝕み流れる風さえ石化させると言われる混沌の女帝『フアナ』と対峙しておきながらあり得ぬはずの和解に至り、通常のダンジョンウォーカーならばあのラミアの前に立つことすら敵わぬと言うのに、事もあろうにその敵を守り、たった3人でギルドを敵に回して、敵も味方も入り混じり入れ替わる混戦の中、愚王を退け賢王を打ち破り最終的には1人の犠牲者も出すこと無く、浅階層で起こった最悪の事件を力ずくで沈静化させ…、」


 そこまでで僕は口を挟んでしまう。


 「ちょっと待った、違う、違うよ、真実はそうじゃ無いよ」


 僕は言うも、北藤さんは、


 「まあ、最後まで聞いてください、それに、黒の猟団の壊滅は直接、多月氏から聞いた事なので、さすがにかの御仁は嘘は申しませんので、秋殿はその辺の事実も否定するのですか?」


 それは…、う〜ん、それを言われると弱いなあ、確かに僕だ、と言うか僕らだ。


 「あの時こそ、仕方なかったんだよ、こっちもやられる訳にも行かない」


 「相手はモンスター、しかも強大にして凶悪なエルダーの中でも深階層の筆頭クラスの混沌の女帝、それを助けると言う選択肢は普通のダンジョンウォーカーには無いでしょう、こう言わざるを得ませんな、正気の沙汰では無いと」


 「なんでだよ、北藤さんだって、あのゴブリンの集団の中でクロスクロスの人たち助けたじゃ無いか、それと一緒だよ」


 「いいえ、あれは人、で秋殿があの時助けたのはモンスターの中のモンスターですぞ」


 「違う、一緒だよ」


 「では聞きますが、どうしてあの女帝ラミアを助けようと思い立ったのですか?」


 「それは!」


 あったり前じゃん、って、そう僕は言おうと思ったけど、そこで同時にアレ?っておもったんだ。


 「秋殿はダンジョンウォーカーです、そのダンジョンウォーカーが万に1つもモンスター側に立つなど、道理が通りませんぞ、そうは思いませんか?」


 あれ? 本当だ。


 そうだよね、ダンジョンウォーカーは普通はモンスターを倒す。これは揺るぎないはずなんだけど、なんでかあの時、僕はあのラミアさんの立場というか窮地を瞬時に理解してしまったんだ。普通に考えれば目の前に瀕死のモンスターが現れたら倒すよ、多分。


 あの時僕は最初からラミアさんを受け入れていた気がする。


 ってか、今、気がついた僕だったよ。

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