表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
361/1335

第114話【その摂理は生命順路の真逆を辿る】

 目の前には、文字通りもう目と鼻の先にいるゴブリンの大群。 


 一体何が起こったのかまるで理解出来ないみたい。僕もね。


 少なくとも、今、魔法は完全に封じられているから、桃井くんは魔法を使ったわけではないとだけはわかる。でもそれ以外はわからない。


 「桃井くん、これ、何したの?」


 と思わず聞いてしまう僕に、桃井くんはいつもの僕に向ける笑顔で言ったんだ。


 「はい、命を奪いました」


 命を奪った?


 一体どういう事?


 炎や氷なんかで肉体に影響を及ぼした訳もなく、まして切ったり叩いたりってわけでもなかった、ただ杖を振っただけだよ。


 その時、僕は理解できないって顔をしていたんだろうね、追加で桃井くんが教えてくれる


 「えっとですね、つまり生命活動を停止させたって事です」


 って言った。


 「これって魔法じゃないの?」


 「どちらかと言うと、摂理ですね、ダンジョンの」


 「桃井くんのスキルって事?」


 「はい、僕のスキルの一部ですよ、この前も見せましたよね」


 何も使わずに、敵を即死させるって凄すぎる。もう感心するしかないよ。


 「でも、効果は使用回数に反比例するんです、連発は無理です」


 なんて僕と振り向いて会話しているんだけど、僕は当然前を見ているから、今

仲間達の突然死を目の当たりにしたゴブリンさん達は、気をとりなおしていつ襲いかかって来るともわからない。


 僕は、この瞬間に少しでも数を減らそうと前に出ようとすると、桃井くんがそれを拒否った。


 「秋様、ここは僕にお任せくださいって言ったじゃないですか」


 って、ヤレヤレって顔をされてしまう。


 「いや、だって、まだ大部分は残ってるじゃないか」


 「いえ、これで終わりです、あとは彼らがやってくれます」


 とまた訳のわからない事を言い出す桃井くんだ。


 「あ、ほら、秋様見てください、始まりますよ」


 桃井くんに言われて前を見ると、なんと即死させたゴブリンが一斉に立ち上がり始める。 


 「うわ、桃井くん、生き返っちゃったよ!」


 「はい、蘇りましたね」


 あれ? 僕の言った言葉と桃井くんの言った言葉は意味は同じに取れるけど、微妙に意図が違う気がする。


 普通に立ち上がったゴブリン達、ちゃんと数えたら23匹いた。


 ゴヴリン達はまるで寝起きの様に、ボーッと立ち尽くしている。まるで心というか意識を抜き取られた人形のように、ただ、棒切れのように立っている。


 なんだなんだ、と思っていると、後ろにいた元気なゴブリン達の中の1匹が、まるで急かす様に立ちすくだけの死んだ筈のゴブリンに手をかけて、前に行けと急かす様な仕草をとった、その瞬間だった。


 蘇った、って桃井くんが説明してくれたゴブリンは急かすその手を掴んで引き寄せて

、その首元に噛み付く。冗談とかオフザケなどではない、ましてじゃれているわけもない。


 噛み付かれたゴブリンの首からは鮮血が飛ぶ。そして、噛み付いたゴブリンの方は、そのまま咀嚼を開始したんだ。喰ってる、喰ってる。


 「ほら、始まりましたよ、秋様」


 って振り向いて満面の笑顔で桃井くんは言う。


 桃井くんが言う様に、他の蘇り組みのゴブリン達は、一切に仲間に襲いかかっていた。

多分、ゴブリン達も何が起こっているのかわからないんだ。


 だから、抵抗とかしなくて、次々に襲い掛かれれている。


 気が付いた時はパニックになって、一応の隊列を組んでいたゴブリンの大群は散り散りになって、共食いって言うんだろうか、喰らい付かれている方は、現状を理解できずに気がついたらすでに手遅れで次々と息絶えてゆく、そして、一度くわれて死んだゴブリンはまたわずかな時間で次々蘇って生き残ったゴブリンに襲いかかって行く。


 床に撒き散らされたおびただしいゴブリンの血液は池のように広がって、同族にして襲う、逃げる、追いかける、噛み付く、咀嚼する、倒れる、倒される、各々の生み出すおびただしくも雑多な彼ら自身の足音はビチャビチャと音を立てて、なまじゴブリン自身ってこう言危機に対しても声を出さない物だからそんな音だけが響いて、時折それに混ざって骨とかを噛み砕いてるような音が混ざってくるって言う、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図だった。


 「うええ…」


 思わず声が出てしまう。あ、春夏さんは目を背けてるね、妹は普通に見てる。角田さんは腕を組んでじっくり観察していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ