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第111話【クロスクロスの後始末】


 急いで、僕も追いかける格好になる。化生切包丁を差した腰を抑えて駆けてゆく姿の春香さんて、ほんと絵になるなあ。急場に駆けつける侍みたい。って侍だけど。


 そしてふと後ろを見ると、ドタドタと足音を立てて、北藤さんがついて来ている。 ん?あれ? 北藤さん足音立ててないなあ、違う、この足音、どっからだ?


 僕のそんな疑問をよそに、北藤さんは、


 「相手がグレートデーモンだとして、これだけの人数で挑むおつもりか?」


 他にどうしろと?


 もうクソ野郎さんとかアモンさんとか、あまり役には立たなそうだけどクロスクロスの人たちいないから、このメンツで何とかするしかないんだけど、いくら相手が強敵でもここで角田さんを見捨てるって言う選択肢は無いでしょ。


 「石山さん、ついてこないでいいですよ、2人で何とかしますから」


 あ、北藤さんだった。


 「いいえ、ここは共闘といきましょう、私はあなたに借りを作っておきたいので、その辺はよろしくお願いします」


 なんか、正直な人だなあ。僕に借りなんて作ってどうするつもりだろう。この人、確か

怒羅欣の1番偉い人なんだよね。


 そんな人が共闘してくれるのはありがたい申し出なんだけど、なんかなあ、いまひとつ何を考えているかわからない不気味さがあるんだよなあ。


 「春夏さん、どうする?」


 「秋くんが良いなら私は良いよ」


 だって、そうだよね、春夏さんとか角田さんていつもそうだよね。


 ちょっと考えて、時間短縮の関係もあるので、


 「じゃあ、お願いしようかな」


 って言う。自分で言ってて何だけど、怒羅欣のトップの方に未だ中階層をうろうろしている僕みたいな人間が言うようなセリフじゃ無いけど、何だろう、この人そう言う気安さみたいなものがあるんだよね。


 「おお、ありがたい、発憤興起、勤めささていただきますぞ」


 ほら、喜んでるし。


 僕らは、急いで脇本さんに教えてもらって場所にたどり着く。


 その突き当たりの部屋の扉は既に開かれていて、中からは何かが焦げた匂いと、多分、これ血の匂いだ。錆びた鉄のような匂いがツンと僕の鼻をついた。


 そして部屋の前で、中を凝視して固まってしまう春夏さん。


 慌てて、僕も室内を覗き込むと、今まで僕らがいたボブリンを倒した部屋よりも大きく高く広い室内にの光景を見て、僕は息を飲んだ。


 そこには、血まみれの角田さんが…。


 「遅かったですね、秋さん」


 と極めて普通に言った。


 ああ、そうか、この血まみれの姿って、そこに横たわっているグレートデーモンの巨大な遺体、多分、今日倒したモンスターの中で一番大きい。ミノさんの2倍はあるよ、その遺体の返り血なんだね。ああ、良かった。角田さんはすこぶる無事だ。


 「良かった、無事だったんですね」


 ってホッとして僕が言うと、角田さんは、返り血で真っ赤な顔で、ニタリ笑って、


 「お、秋さん心配してくれたんですか?」


 ほんと怪我とかなさそう。安心する僕に角田さんは言う、愚痴でも零すみたいにとても不満そうに、


 「この野郎、多分『堕天』したセラフィム種だと思うんですが、魔法ではなくて、奇跡とか使いやがって、多分、このフロア全体が魔法を禁じられているはずですよ」


 と言った。そこまで聞いて、素朴な疑問を、もう角田さんの現在の姿を見て簡単に想像はできるんだけど、一応は訪ねて見た。


 「角田さんは魔法スキルの使えない状態でどうやってこのグレートデーモンを倒したんですか?」


 すると角田さんは期待どうりに、予想した答えを僕に告げてくれた。


 「普通にボコって倒しました」


 と僕に自身の装備する金属の杖(金属バッドとも言う)を見せてくれた。もう、魔法が使えないって状況が生まれた瞬間に、この杖を大きく振りかぶって殴りかかってゆく姿が容易に想像できた。


 ひとまず、血まみれだけど角田さん自身に怪我とかはないみたい、ちょっとした疲労は見られるけど平気そう。化生切包丁を振るうオフェンスに全振りした春夏さんも凄いけど、普通はギルドでも討伐隊を組織するエルダー級のモンスターをスポーツ用具で叩き殺すことができてしまう角田さんもまともじゃないよね。ほんと、僕のパーティーってこんな人ばっかだな。まともなのって僕くらいか。


 麻生さんとか、角田さんの事を『大賢者』とか言ってたけど、違うよね。多分、この人、賢者と喧嘩上等番長(ヤンキー最上級職)の複合究極業だと思う。絶対に『キレる』とか言う基本能力とかあって、「誰に断って魔法封じてんじゃ〜、コラ!」とか言ってそう。


 そんな想像を巡らせていると、角田さんは。


 「お、秋さん、今、失礼な事考えてますね」


 って見透かされて言われるけど、一応は首を横に振って否定して見る。違う違う考えてないよ。


 そんなやりとりをしている僕らだけど、北藤さんは、倒されてるグレートデーモンを見つめて、


 「ふむ、確かに魔法職の者の戦いだな、打撃に『華』が無い」


 小姑みたいな事を言ってた。何だろう、活躍する場を奪われたことが面白くないんだろうなあ、みたいな言い方だ。


 角田さんは、このグレートデーモンをå堕天って言っていたけど、つまりは元は神様の使いで『天使』ってことだけど、なんか天使の要素の欠片もないなあ、青黒くて、どっちかっていうと人型の爬虫類に翼が生えてる感じ、プテラノドンとかの翼、だと思う、思うってのは多分そうだったって事で、今死体となっている元天使は、多分背中肩腰にかけて生えていたであろう羽は残り無く全部むしりとられているから想像でそう思った。

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