第105話【スキル発現の確率】
薫子さん、だからギルドの指針としては強力なモンスターに出会った場合、まず対策を考えるんだっそうなのだ。
それ以前に、常識的な対応として、そう言うダンジョンウォーカーは、ちゃんと熟練したダンジョンウォーカーと一緒に行くんだって、もちろん、ダンジョンの情報として、どこにどんなモンスターが出るか、ザックリと判っている訳で、例えばそこが初めての場所としてもギルドに問い合わせれば、概ねの対応策とか、そのダンジョンウォーカーの技能によって対応の不可を教えてくれるから、情報の上の一応の安全は担保されてるわけで、こんな形で中階層に深階層のモンスターって、対策とかの問題以前に、本当に無茶もいいところだよ。
初見でガンガン行くって、どこかのいかれたパーティーくらいだよ、どんタイプとかわからないで、初戦を楽しんでしまう突撃して行くのって、ああ、僕たちくらいだ。
違う違う、そんな話じゃなくてさ、つまり、普通、出会い頭の事故見たいに、初見モンスターの対応なんてしようもないから、そんな状態で戦闘に突入できるのって、ダンジョン内モンスターの対応するように全ての方向に対応できて、さらに戦闘特化で、もういいやって突撃しちゃう様なパーティーでもないと難しいよね…。
ああ、やっぱり僕たちのことだった。上手いこと言うよね。なるほどね、言い得て妙だね。おっと今考えることじゃ無い。
「俗説ですよ」
とアモンさんが告げる。
「ええー?、嘘じゃないよ、ちゃんと実証確率も出てる。確か、0、001%くらいだったかな、いや0,00001%だったっけ?、確かそのくらい、でも小さい子供はその10倍くらいに跳ね上がるよ」
「その確率なら、自然派生するスキルと同じくらいですよ、2番目に言った数字なら、多分、このダンジョン内にはスキルを持った人間は数の上では0ですよ」
とアモンさんは言った。
すると、鉾咲さんはすばらく考え込んで、「あれ? ほんとだ」と言う。
「徒労もいいところですね、こんな噂に振り回されるなんて、典型的なスキル史上主義ですね」
「おかしいなあ、間違い無いはずなんだけどなあ」
ブツブツ言ってる鉾咲さんに、さらに追い討ちをかけてアモンさんが、
「確かにスキルは無いよりあった方がダンジョンにおいては有利になるでしょう、しかし、このダンジョンができて以降、最強者はスキル無しのダンジョンウォーカーでしたよ、ご存知ありませんか?」
すると、鉾咲さんは大笑いして、
「笑える、それこそ、噂の類いでしょ、都市伝説じゃあないですか、『殲滅の凶歌』でしたっけ? あのアースジャイアント(エルダー級)を深階層の一部もろとも斬ったとか、1500の師団クラスのゴブリン軍団を一撃で全滅させたとか、黒龍(ハイエイシェント級)を三枚に下ろしたとか、って言い伝えられているアレでしょ? まだ桃太郎とか、浦島太郎の方がリアリティありますよ、それ、笑える、お姉さんは意外にロマンチックなんですね。いやあ、僕とは話は合わないや」
と声高く笑い続ける鉾咲さんだよ。
そして、その言葉に繋げて、アモンさんは言う。
「それは残念です、現在『殲滅の凶歌』ご子息がダンジョン内にて活躍されているそうですよ、もし、出会いになりましたら、よろしくお伝えください」
って追加で説明を加えたら、鉾咲さん、さらに笑い声が大きくなって、相当ウケたらしく、過呼吸気味になって、ヒーヒー言ってた。
そしてそう言ったアモンさんも、どう言う訳か、僕の方を見て微笑んでいた。
ああ、そうね、僕の方も気をつけろって意味ね。確かにそんな人の子供とかいたら怖いよねえ、年齢的には僕と同じくらいだろうか? 怖い怖い、気をつけないとね。
そんな会話で、ひとしきり笑っていた鉾咲さんも、ようやく普通のテンションに戻って、
「あー、もう最高、笑える、面白かった、で、さて、この子はどんなスキルを持っているのかなあ、っと」
なんて言って、僕の頭の上から、顔を覗かせて、妹をジッと見つめた。
「ほら、おいでおいで、る〜るるる、る〜るるる」
って指先を使って変な動きをさせて呼んでいる。
「カロリーメイトとか食べるかな? 非常用に持ってるんだ」
うちの妹はキタキツネではない。また、エゾリスでもないし、偶然出会った可愛い小動物でもない。確かに札幌の市内に、エゾリス、キタキツネ、たまにエゾシカとかも出るけど、断じて違う。