第103話【正しく作用する嘘】
それにこれは噂なんだけど、この不適合者ってのは年々増えて行っているみたいなんだって、正確なことはわからないけど。
そう言う人がいるって中にあって、適齢に達しない人でも入れる人がいると言う事実。そしてその生きる証拠がアモンさんとクソ野郎さんだったって事なんだな。あと妹と。
まあ、この2人ならってのはあるなあ、なんか普通の人って雰囲気じゃないもんね。
そうか、そんな秘密かねえ…。
でもまあ、ギルドが秘密にしているのもわかる気がするよ。
だって、何歳でも入れるってわかれば誰もが入っちゃうでしょ、特に小さい子供なんて好奇心の塊なんだし、こう言う街中じゃなくて、住宅街に近いダンジョンの入り口もあるしさ。特に小学校男子なんて家の近くや学区内にダンジョンなんてあったら興味津々だよね、隙あらば入りまくりでしょう。多分、僕がその事実を小学生時代に知ったとしたら入っちゃうよ。
絶対に行ってると思う。子供は絶対に入れないよって言われてその理由がダンジョンがそれを拒んでいるからって言われれば、じゃあし仕方なないかってなる。しかも年齢制限とかリアルだし、じゃあ仕方ないから他の事で遊ぼうって絶対になる。
ほら、テーマパークとかでもジェットコースターとか年齢制限あるじゃない、北海道の子供って素直だから、じゃあ仕方ないかってなるよ。
そうしたら、一部の捻くれた子供だけに対応すれば…。ああそうか、だからクソ野郎さんは…。
思わないところから1つの真実にたどり着いてしまった。
ま、それは兎も角やっぱり馬鹿正直に公表して対応するより、入れないって通達して入れないって思わせた方が効率的だよ。
全部は見てないけど、確かに浅階層や今まで行った事のある中階層に小学生はいなかったから、その辺の規制はきちんとできているし、他の深階層組は知っているって鉾咲さ言っていたけど、それが、僕みたいな中階層までの割と平均的なダンジョンウォーカーに情報として伝わって来なかった事を見ると、低年齢者は入れない方がいいって事の現れだよね。
ギルドは小さい子をこのダンジョンに入れないようにしたって事だから、それは、絶対に子供達を守る目的以外の何物でもないよ。だって危ないよダンジョン。
確かに浅階層には弱いモンスターとかしか居ないけど、それでも年端のいかない子供にとっては、あのペラペラの『紙ゴーレム』だって脅威になりうるよね。
、ギルドが出入り口を死守するのって、なんか違和感あったんだよね。
観光客の皆さんはともかく、迷い込んでしまうのって概ね修学旅行の学生だし彼等には概ねガイドとか付くからさ、まして酔っ払いのおじさんもこっちはガチで入れない訳で同様に小さい子なんて絶対に入れないんだからそんなに入り口の警備とかに躍起にならなくても大丈夫だろ、って単純に府には落ちてはいなかった。
秘密の1つを知っただけで、やるなあ、ギルドって思ってしまった。
鉾咲さんには悪いけど、ギルドの嘘って言うより最善手だよ。
この件についてギルドに対して不審に思うことは何も無いな。
なんか、色々とおかしい方向へ考えすぎじゃないかな鉾咲さん。まあ考え方とか人それぞれだけどね。
ん? そこまで思って、ちょっと鉾咲さんの言葉を思い出して気がついて口に出た。
「どうして、妹がスキル持ってるってわかるんですか?」
確か、彼女はこの妹を見て『強力なスキル』って言葉も使っていた。なんでそんなことがわかるんだろう。
「理由は2つあってね、1つはスキルを覚醒させたものは、結局はダンジョンに向かうんだよ、それが強力なら強力な程、ダンジョンに惹かれるらしいんだ、総合的に侍スキルを持つ東雲ちゃんならわかるでしょ?、違うかな?」
春夏さんは首を横に振っていた。
「そうなんだ、個人差もあるんだろうね」
と言って、鉾咲さんは、ちょっと考え込んで、そして、倒れているクロスクロスの2人を見てから、
「2つ目は、スキルの覚醒条件かな、身につけるっていう意味で、スキルがまるでダンジョンから『贈り物』みたいに与えられるかのように覚醒する場合があるんだよ」
ああ、それは知ってる。確かギルドでも河岸雪華さんとかそうだね、この前のラミアさん騒動でスキルが突然に覚醒したって話だから。あの時のスキルで僕は助かったようなものだったらしい。